第40話 犬と鳥
さて、あの昼休みから放課後である。
今日も今日とて特に用事もないため、そのまま家に帰るとする。
こちらに来てから、生活も慣れてきて、落ち着いてきたので、こっちの名作ゲームでも探してみるかなと思い立ったのが昨日。
ので、今日の放課後はゲーム探しに勤しむことにする。
と思い、席を立った瞬間、シエーネが話かけてきた。
「お兄ちゃん!いま帰りっすか?」
「そうだね、何か僕に用かい?」
「私の部活を見に来ませんか?」
「部活?」
「そうっす!お兄ちゃん、部活してないっすよね!じゃあちょっと見学がてらどうかなって思いまして」
「なるほどね」
ちょっと気になる。この世界の女性は力がとても強いので、運動部であれば元いた世界のそれよりもダイナミックだろう。
ゲーム探しは部活を見た後でもできるし、今日は見学させてもらおうかな。
「ちなみになんの部活入ってるの?」
「バレー部っす!」
「バレーか、いいねぇ!」
ルールは大まかにしかわからないが、楽しめることは間違いないだろう。
「体育館でやってるの?」
「いえ!球技館でやってるっす!案内しまっす!」
球技館か、この学校、施設が多すぎるな。球技館とか使ったことないわ。
「お願いね」
そうして、球技館まで行こうというところで、凛とした声が響く。
「あら、まだ教室にいたのね、校門で待ってた私がばかみたいじゃない」
「うん?アムエル?どうしてここに?なにか用?」
するとアムエルは心底呆れたといった表情で、
「何言ってるの放課後は私とデートの約束してたじゃない」
「いいや?してないと思うけど?申し訳ないけど今日は先約があって…」
「先約?私とのデートよりも大事なの?」
「え?うーん…」
答えに困った。ここでそうだ、と言うことは簡単だろうが、そうなると確実にアムエルの機嫌が悪くなることは間違いない。
罵られて、貶されるだろう。
「お兄ちゃん?来ないっすか?」
答えに悩んでいると、僕を案内しようと先行していたシエーネが戻ってきた。
タイミングが悪い、これは昼休みのどんよりした雰囲気の再来か?
「あ、アムエルちゃんじゃないっすか!久しぶりっすね!」
「久しぶり、シエーネ。元気だったかしら」
「…二人は知り合いなのか」
「幼馴染なの」
なるほど、幼馴染か。
「でも、久しぶりってのはどういうことなの?」
「私が中学校の頃に引っ越しをしたっす、それまでは家が隣同士でよく遊んでたっす!」
家が隣同士だったけど、引っ越しをしてしばらく疎遠だったわけだ。
なるほど道理で久しぶり、という言葉が出てきたのか。
「あれ、もしかして放課後、先約があったっすか?」
「そうね、今日、連れていくことにしたの」
それを聞くとシエーネは合点した様子で、
「あーそういうことっすか、先を越されましたっすね」
「ごめんなさいね、先に楽しむことにするわ」
「いや、いいっすよ!おこぼれ期待してるっす!」
「わかってるわ、よろしくね」
「?」
一体二人はなんの会話をしているのだろうか。
まぁ二人にしかわからない話題があるのだろうが。
「じゃあ、お兄ちゃん。また、そのうち!」
「おう、じゃあね」
シエーネは元気に小走りで球技館へと向かった。
こうして僕とアムエルはその場に残された。
デートと言うが、どこに向かうのだろうか。
「いくわよ」
「どこに?」
「私の家よ」
「は?」
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