第41話 電車の恐怖!

「家って言ったって、家?」


「そう、家よ。私の家」


「いや、いろいろと過程をすっ飛ばしているのでは?」


「私の手料理が食べたいんでしょ!」


「あのお昼は手料理じゃないって認めてるようなものじゃない?」


「私が手で詰めているんんだから手料理よ」


「屁理屈だ!」


「で、御託はいいから、来るの来ないの?」


「…行きます」


「素直でよろしい」


女子の家、興味がないわけがない。 



「こっちよ、私いつも電車使って通学してるから」


電車!こっちの世界で電車に乗るのは初めてだな!なかなか楽しみである。

やっぱり元の世界の電車と違いがあるのだろうか?



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―――――――――



キツいい!


電車は普通の電車だった。確かに全く一緒なのかと言われたら違いはあるが、電車は電車だった。


そして放課後、夕方である。この時間帯は混むようで、結構な満員電車だった。腕を動かすのもきつい。


目の前にはアムエル。アムエルと向かい合っている。むしろ向かい合っているというよりはほぼ抱き合っていると言っても過言ではないくらいに密着している。僕の手の位置はアムエルのお尻に添えられている。いや、違う、不可抗力なんだ。後ろから押されるように入ったから!しょうがないね!満員電車だからね!


…いいお尻。


しかし、きれいな黒髪だな。さらっさらじゃないか。なんかいい匂いもするし、黙っていれば美少女なんだけどな。

貶してさえ来なければ…




…なんか尻がかゆくなってきたな。

でもここで動いたら痴漢扱いされてしまうかもしれない。


刹那、僕の尻に誰かの手が触れた。

そこからその手が僕の尻をまさぐる。


ん、あ、そうそう、そこそこ、そこをかいてもらって…



って、痴漢されとるー!


いやびっくり!

実際にやられてみると結構気持ち悪いなこれ、自分で触るのとはわけが違うぞ。


「次の駅で降りるわよ」


「わ、わかった」


その会話をしている間にも痴漢は僕の尻をしっかりもみほぐし、ズボンの中に手を入れようとしてくる。


ぐっ、ちょ、そこは!


せめてもの抵抗で体をよじるも、痴漢は止まることはなかった。

痴漢との攻防が顔に出ていたのだろう、アムエルが心配して小声で声をかけてきた。


「どうしたの?大丈夫?顔赤いわよ。体調が悪いのかしら、あと少しよ我慢できる?」


罵倒が飛んでくるかと思ったが、優しい一面もあるようだ。


「まさか!痴漢されているの?」


しかも察しがいい!なんて頼りになる子なんだ!僕は首が取れそうになるくらいに頷く。今の僕はメタルのバンドのライブ会場にいても違和感がなかっただろう。



アムエルは状況を確認して、僕の尻を弄っている手をぐわしと掴み、後ろにいるであろう犯人に向かってこう言った。



「殺す」


「ひっ!」


その眼光は鬼神がごとく、眼光だけで人が殺せてしまいそうだ。


ちょうどその時、駅に着いてしまった。どうやらこの駅では人が多く降りる駅のようで、電車を降りる人の流れに紛れて痴漢は手を振り解き人の波に流れていった。


「待ちなさい!殺す!」


「お、落ち着け!僕は大丈夫だから!」


「私が大丈夫じゃないわ!殺す!」


僕はアムエルを羽交い絞めにする。僕の貧弱な男の力ではアムエルは振り解けはするのだろうが、気を使って僕に抑えられてくれている。


アムエルが本気で僕を振りほどいたら、僕、どっかに飛んで行ってしまうかもしれないからね。文字通りの意味で。


「私の夫に手ェ出すなんて!わかってんねんやろなぁおんどりゃあ!」


「ファ!?」


「おめえ、人間じゃないだろ!ホントに人間かどうか、その腑引きずり出して確認したるわ!」


誰ぇ?口調だいぶ変わってるよ!


「ね、ほら、もう行こ!僕アムエルの家、楽しみだなあ!」


「…ッチ!命拾いしたなカスめが!」


こうして、僕はアムエルをなだめながら、彼女の家に向かった。



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