第52話 病気。
「どうしたの?気分が悪い感じ?」
ベラのいる所に着いた僕は優しく話かける。
「いえ、そういうわけではないですわ、ただ、私、体育はみんなと一緒にはできませんの」
「そっか、やっぱり例の病気が関係しているのかな」
「…やはり知りたいですか?」
「そうだね、無理にとは言わないけれど」
「…正直、あなたには知ってほしくなかったのですけれど、私の病気について知っている人から聞くよりは、私の口からお話した方がいいかもしれません」
ベラは、僕から目をそらして、ゆっくりと話し始めた。
「私は他の方々のようには強くありませんの」
「いやそんなことないと思うけど」
少なくとも僕よりは強いね、ベラに襲われた時に両手を抑えられたが、抵抗してもビクともしないくらいには強かった記憶がある。
「流石に男子よりは強いですわ」
「ああ、そう」
男子、弱い。
「と言うのも、私は吸血ができませんの」
「と言うと?」
「今の時代でこそ吸血鬼は血を啜らなくても、他の種族の方が食べるような野菜や穀物からも栄養を摂ることができるようになりましたけれど、やはり吸血鬼は吸血してこそ。吸血しなければ、吸血鬼としての力は弱まってしまいますわ」
「幼い頃のとある出来事のトラウマから血を啜ることができなくて、8年ほど、吸血行為をしていませんの」
「病気っていうのは?」
「それは世間体を気にしたステレルーチェ家、お母様が流した嘘ですわね。その病気のせいで、私は虚弱体質である、ということになっていますわ」
「なるほどね、力が弱いことを吸血できないからではなく、病気のせいにしたわけだ」
トラウマに関しては…聞かない方がいいだろう。
トラウマのせいで、吸血ができずに、力が弱まり、学校ではみんなと体育の授業に参加することができない。
この十代の青春。なにも異性とイチャイチャすることだけが青春なわけではない。
友達と仲良く、バカして、遊ぶことだって青春であるのだ。
大人になって、あの時楽しかったな、あいつらどうしているかな、といった具合に思い出せる記憶だって、青春なのだ。
元おじさんだからわかる。あの時の思い出というのは一生ものだ。
それを悲しい気持ちで終わらせてしまうのは非常にもったいない。そう、僕は思う。
可哀想な話じゃないか。お前が何を知っているんだ、とか、余計なお世話だ、とか思われるかもしれないが、僕は友達である。
友達なのである。
これだって青春だ。
僕にとっても、僕にとっては、第二の、青春だ。
僕は友達を助けたい。
「…ベラさ」
「はい?」
「余計なお世話かもしれないけれど、そのトラウマさ、克服してみない?」
「…な、何をいっているのですか?」
「こんな風にいつまでも見学しているの?」
「それは、私だって…」
「じゃあ、克服しようよ、僕手伝うからさ」
「―――――――――――――――あなたに何がわかるのですか」
「ん?」
「あなたに何がわかるのですか!」
「克服しようとしたことなんて、いままでたくさんやってきましたわ!」
「8年!8年ですわ!こんな長い期間で私が何もしていないわけないではありませんか!」
「…そうだね、余計なことを言ったかもしれない、でも、もしかしたら…」
「あなたになにができますの!?高名なお医者様にだって、あの聖女様だって匙を投げたのです!たかだかこっちに来て数日のあなたに…
―――――――――ごめんなさい、あつくなりすぎましたわ」
「いや、こちらこそ、いきなりごめん」
「いえ…少々、席を外させてもらいますわ」
ベラは立ち上がって、体育館の外へと言ってしまった。
「あ、ちょっと、まって」
追いかけなければ、きっと後悔することになるだろう。
僕はベラを追いかけて、体育館を後にした。
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