第22話 夕方、誰もいない教室、男女二人きり…青春だね!
「っていうかお前あれだろ、魔道具使えよ。その魔道具使えないのか?」
「いや使おうとしたんですが…」
魔道具というのは、基本、着用したら常時発動するものが多く、このイザベラさんのお母さんから借りた指輪型の魔道具もそれの類であると教わったが…
そこに模擬決闘を見ていたイザベラさんが魔道具の補足をしてくれる。
「その魔道具はオールカウンター、全ての攻撃を切り返して反撃してくれる優れものですわ」
「すげえじゃねえか!それ使えよ」
「でも一つ欠点がございまして、自分の目で攻撃を認識しないとその魔道具は発動しませんの」
意味ないじゃないか、そもそもルーポお姉ちゃんの攻撃が早すぎて攻撃が見えないのだからそれでは発動させることができない。
「でも、逆に言えば、攻撃が見えるようになれば反撃できるってことだな。であれば鍛える方向性は決まったな」
「目を鍛えるわけですわね」
「その通りだ!」
こうして今日から決闘の日までの一週間、放課後の訓練の方向性が決まった。
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「道っていう漢字の語源は、首を持って歩くということからできたらしいわよ」
「へえそうなんだ、怖い語源だね、いきなりどうしたの?」
「いえ、別に、ただの会話のネタを提供しただけよ」
次の日の放課後、黄昏時、僕はお姉ちゃんとの訓練に行く前に知り合いの女子とばったり出会ってしまっていた。
ここで僕は、ある違和感を感じたが、また彼女が話し始めたのでその違和感も一度忘れることにした。
「で、どうしたの~そんな元気なさそうな顔して、お姉さんに話してみない?」
「お姉さんて、同い年でしょ。いや、まあ、ちょっと大変なことになってしまってさ。かくかくしかじかダイ〇ツエコカーで」
「あらまあ、大変ねぇ」
この子はイプノティゼ・クレルヴボワヤンス、悪魔の女の子だ。高めの身長に、大きなたれ目がちの目、紫色の瞳と目元までかかっている長めの髪の毛。ここまで聞くと普通の人間のようだが、側頭部から大きな角が生えている。
「イプノって呼んでね♪あ、でもお姉ちゃんでもいいよ!」
お姉ちゃんはすでにいるからもういらないです。はい。なんだ?この世界の女子は弟という存在に憧れでもあるのだろうか。
でも、どうやって知り合ったんだっけ?
「そんなことどうでもいいじゃない~」
それもそうか、今はそれどころではない。このままでは決闘に負けてしまうだろう。お姉ちゃんとの訓練だって限界はある。
「ちょっと詰まっているようね~そうね、お姉さんが手っ取り早く強くなる方法を教えてあげましょうか」
手っ取り早く強くなる方法だって?それは実に興味深い話である。
「でもただで教えてあげるのもね~」
む。それもそうか、この子には僕を助けるメリットはないだろう。知り合ったばかりだし。じゃあ何をすれば教えてくれるのだろうか。
「もちろん、お姉さんは悪魔よ?だからお姉さんと契約してくれたら教えてあげるわ」
悪魔と契約だって?絶対に碌なことにはならない。しかし他に方法がないのも事実。ここは契約しておくのが吉だろうか。
「じゃあ、契約を…」
「おーい弟!!」
視界の端にお姉ちゃんが小走りでこっちに向かってきているのが見える。おそらく放課後になっても一向に現れない僕を探しにきたのだろう。
「あ、お姉ちゃん」
「弟、こんなところでなにしてんだよ、そんな場合じゃないだろ」
「すみませんお姉ちゃん。あ、そうだ契約なんだけど…って、あれ?」
「どうした弟」
「いや、今友達と話しをしていて…お姉ちゃん見てない?」
「あん?オレが来た時は誰もいなかったぞ」
「うーん?」
人見知りなのだろうか。しかし他の人が着た瞬間に消えるなんて、この世界の女性の身体能力には驚かされるばかりである。音もなく、まるで本当に消えたかのようにいなくなってしまった感じだ。一体どんな足をしているのだろうか。
「さ、いくぞ弟」
「うん…」
どこか釈然としない思いを抱えながらも、僕らは訓練に向かった。
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