第21話 男子、悲しい生き物よ…
「さて、単刀直入に聞くが、弟、決闘するんだってな」
「え!?そうですけど、なんで知っているんですか?」
決闘を受けたのは、昨日の今日である。僕はあの後すぐに家に帰ったし、イザベラさんだってこういうことを誰かに話すようなタイプではないだろう。壁に耳あり障子に目ありとでも言うのだろうか、もしかしたら誰かが僕の独り言を聞いていた可能性もあるが、学年の違うルーポお姉ちゃんの耳に入るのは少々早すぎるのではないか。
「ああ、『聖女』のやつが言ってたんだ」
「聖女…ですか?」
知らない人だ。
「聖女ですの!?」
知っている人のようだ。
「イザベラさん、その人と知り合いなの?」
「いえ、会ったことはありませんが、とても有名な方ですわ!」
有名な人か、それでもなぜ僕の決闘話をしっていたのか疑問が残る。
「で、その聖女様はどうして決闘のことをしっていたんですか?」
「ああ、あいつはそういうやつなんだ。なんでも神の声が聞こえる
「神の声…ですか」
「ああ、自称、だがな。昔は神の声が聞こえることを疑問視するやつもいたんだが、今はもういねえ、まぁ今の弟のことみたいに、なんでも当ててしまうんだ。まるで未来が見えるように」
「未来が見えるんですか」
「
「神様ですか」
正直胡散臭い、しかし、聖女というからには、もしかするとこの世界の宗教の重要人物であるかもしれない。であれば迂闊なことは口に出さないほうがいい。
僕も知ってるよ一人、というより一玉。もしその聖女さんの聞こえる声の主がその玉なのであれば、世間は思ったより狭いね。
「それで、弟が決闘するらしいから、助けてあげてと言われたので、来た!」
「なるほど、ありがとうございます!!」
どちらにしろ、今の今までいいアイデアが思いつかなかったので、助けてくれるのであれば、非常に助かる。
「で、どういう風に助けてくれるんですか?」
「ああ、その細腕だと、どうせ喧嘩とかもしたことないんだろ。だからオレが喧嘩のやり方ってーのを教えてやろうと思ってな!」
確かに喧嘩をしたことはないが、知りたいのは喧嘩のやり方ではないのだが、まあ喧嘩も闘うといった面では一緒のかもしれない。
「是非お願いします!」
「ああ!一週間、みっちり鍛えてやるからな!」
「お、お手柔らかに…」
「じゃあメシ食おうぜ!」
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さて、放課後である。実際に決闘を行う場所でルーポお姉ちゃんと模擬決闘を行うことになった。
決闘の結果は、もちろんボッコボコである。
今僕はルーポお姉ちゃんに神速の足払いで地面に寝かされたところである。
技よりも前に、まず基礎的な身体能力からして大きな差がある。全く攻撃が見えなかった。瞬きしたらもうすでにそこにお姉ちゃんはいなかったんだ。気づいたらもう足を払われていた。
久しぶりに地面に寝っ転がって空を見た気がする。空ってこんなきれいだったんだな。
「弟、お前、よっわいなぁ」
「すんません」
「いや、謝る必要はないぜ、ただ、聞きたいんだが、戦闘力いくつなんだ?」
「人に戦闘力を聞くのはマナーが…」
「今そんな場合じゃねぇだろ」
「…21」
「21!?よっわ!男子は弱いとは聞いていたがここまでとは…」
「…ぐすん」
僕は泣いた。黄昏時で赤くなった空と、寝っ転がっている故に香る土の匂いが余計に悲壮感を表しているような気がした。
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