第23話 ブレーンバスターだ!

うーんやっぱり攻撃が見えない。

もうすでに決闘は明後日であるが一向に見えるようになる気配がない。いやそれは違うか、一応、見えはする、残像として、黒いのがさっと目の端で動くような感じだ。こういわれるとGを想像する方もいるだろう。もし食事中の方がいたら申し訳ない。


しかし、そうとしか形容できない。


目自体は追いついていないが、反応はできるようになった。今までの訓練の中での経験と慣れのおかげかもしれない。


「よし、いくぞ弟」


何度目かの攻撃、顔面に来るパンチを左手で体の内側へと受け流し、右手でみぞおちめがけてパンチが放たれる。かってに体が動く感じだ。僕の反射神経だけではここまでの動きはできない。オールカウンターのおかげである。しかし僕のクソ雑魚パンチではお姉ちゃんはくすぐったそうにしているだけだった。


むしろ受け流したとは言えど、お姉ちゃんのパンチの威力は恐ろしいほどに強く、

受け流した腕が悲鳴を上げている。めちゃくちゃ痛い。


「オールカウンター自体はできるようになってきたな」


「でも相手にもよりますね、もし相手がお姉ちゃんよりも早かったら厳しいかもしれません」


「そうだよなー」


「そうですわね、でも多少の予想はできますわ」


「ほんと?例えば?」


「あの彼の後ろに控えていた猫獣人が代理人でしょう」


「なにか確証があるの?」


「ないですわ、でも彼と彼女は前からずっと一緒でしたし、彼自身はお金をもっていませんから」


「え?そうなの?」


「ええ、でなければ、お金の無心には来ないでしょう」


「なるほど」


そう考えると、その猫獣人の可能性が高いだろう。猫か、僕は犬派だ。


「ネコといえば、あれがつかえるな」


「あれ?」


「ああ、まあでもそれより先に、弟の力が弱すぎるというとこが問題かもしれない」


「うっ」


「とりあえずもっかい殴ってみろよ」


お姉ちゃんは、手のひらをこちらにむける。手のひらに向かって殴れということらしい。


「ふん!!」


ぽこっというなんとも情けない音が聞こえたような気がする。


「うーん、弱い!これでは相手を倒すなんて夢のまた夢だぞ」


「しかしもう明後日ですよ」


流石に明後日までに力をつけようと筋トレをしたところで壊れた筋繊維は修復しないまま、修復してより強固にならないまま、つまり筋肉痛のまま決闘をする羽目になる。それは流石に厳しいところである。


そこにイザベラさんが意見を出す。


「殴らなければいいのではなくて?」


「と、いうと」


「投げればよいのですわ」


するとお姉ちゃんは合点が言ったようで、

「なるほど場外を狙うわけだな」


「そうですわ、おそらくそれしか勝つ方法はないでしょう」


「でも僕投げ方なんてしらないよ」


「今から学べば良いのです。同じ技を何回も何回も繰り返すことによって体に覚えさすのです!」


「でもそれじゃあオールカウンターはどうなるんだい?はずせってのかい?」


僕が使ってみたところ、このオールカウンターによる反撃は殴るか蹴るかしかない。そもそも投げるなんて複雑そうな動きができるのだろうか。


「いいえ?オールカウンターは本人の技量によって、化ける魔道具ですわ。使える技が増えれば、オールカウンターも本人の意思を汲み取ってその動きをしてくれるよになりますわよ。今はそういった投げる技の知識がないから動きが単純なパンチやキックが出るわけですわね」


「そうなのか、でも流石に明日明後日では厳しいんじゃないかな?」


「いいえ!もうすでに遅いなんてことはありませんわ!」


「その言葉好きなの?」


「私の座右の銘ですの!」


「素敵だね」


「私がですか?」


「いやそうじゃなくて…でも否定するのもなんか違うような」


「うふふ、ありがとうございます。照れますわ!」


頬に手を当ててくねくねしている。かわいい。

そしてイザベラさんは照れを隠すように話を戻す。


「どちらにしろ、それしか方法はありませんわ。もうやるか、やらないか、やらなければやられるだけですわ」


「…そうだよね、お姉ちゃんお願いできる?」


「ああ、任せろ。お前を一流の投げ人なげんちゅにしてやる」


「どういうこと?」


「大丈夫、安心しろ、明日は土曜日で1日休みだから一日中やれば、いやでも覚えるだろ」


「…お願いします」


そうだ、どちらにしろやるしかないのだ。イザベラさんの言った通り、やるかやらないかやるかやられるかである。


ベストを尽くそう。





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