第24話 決闘当日
決闘、当日。
決闘当日は休日であるにも関わらず、多くの人が観客席に押し寄せていた。
「ど、どうしてこんなに人が…」
「あん?知らなかったのか?決闘のことは学校の廊下とかに貼りだされてるぜ」
「マ?」
「ああ、そもそも学校の施設だし、ここでよくイベント事があるから、その月の予定表が掲示板に貼ってあるの見たことないか?」
「見たことなかった…」
学校の掲示板や、廊下に貼ってある新聞に目を通すことなんてほとんどないだろう。目を通すにしても本当に目を引く広告くらいなものだ。
観客席を見るとなるほど、学生だけではなく、子供連れや大人も混じっているようだ。
「決闘飯ー決闘飯いかがですか~」
「さあさ!どっちに賭ける!?非常に珍しい男子対女子の決闘!休日の思い出に!」
「…随分と自由ですね」
「久しぶりの決闘だからな」
自由な校風も考え物である。
「そろそろ決闘が始まりますわよ。準備はよろしくて?」
「うん、やれることはやった。後は運に任せるしかない」
「よし、じゃあ、弟。最後に喧嘩をする上で一番大事なことを教えてやるよ」
「一番大事なこと?」
「そうだ、喧嘩で一番大事なことはなんだと思う?」
「うーん、技?」
「技も大事だが、違う」
「力?」
「それも大事だが、それよりも大事なことだ。吸血鬼ちゃん、分かるか?」
「もちろん!やる気!ですわ!」
「そうだ!気合だ!気合が一番大事だ!負けない気持ち、気持ちで負けていたら、力や技で優っていたとしても負けちまう!気持ちで負けるな、下がるな!殺す気で行け!」
「ウス!」
「と、言うわけで、これをやろう」
お姉ちゃんから指輪の魔道具をもらった。
「ありがとうございます!何の効果があるんですか?」
「割と大胆になる効果がある」
「またそれか」
この世界はシャイな人が多いのだろうか。しかもなんだ「割と」って、もっといい表現なかったのか。
「大丈夫、今までの訓練は嘘をつきませんわ」
「ありがとうイザベラさん」
「…本当にごめんなさい、ここまで大事になってしまうなんて思いもしませんでしたわ」
イザベラさんが顔を伏せる。イザベラさんはきっと今日まで、気に病んでいたことだろう。自分のせいで友達を決闘に参加させてしまうことになってしまって。もちろんイザベラさんのせいというよりは、本をただせば僕が自分で蒔いた種というか、かってに首を突っ込んだだけだが。
「大丈夫だって!気にすることないさ!僕がかってに首を突っ込んだんだから。君はどしんと構えて、よくやったしもべ、とでも言う準備をしていればいいのさ!」
「…ふふっ、ありがとうございます。私を庇っていただいた時はとてもうれしかったですわ。もちろん今も、申し訳ない気持ちと共に、嬉しさで胸が張り裂けそうですの」
イザベラさんは頬を赤く染めながら、胸に手を当てる。
絶対、絶対にそんな雰囲気ではないのだけれど、その大きな胸が抑えられて大きく形が変わる様はもう!形容できない素晴らしさがあった。
眼福、これだけで頑張れる!
「…そっか」
なんだ?、そっかって、もっといい言葉なかったのか。
「ええ、でも釈然としない気持ちもありますわ。普通男女の立場が逆ですもの」
「うん?ああ、そっか」
確かに、この状況を元の世界に当てはめると、貴族の男子のために女子が戦いに行くようなものか、違和感がすごいな。
「さて、時間だ。行ってこい!」
ルーポお姉ちゃんが僕の背中をバシンと叩く。
めっちゃ痛い。絶対背中に手形がついてる。
「いっつ!うん、ありがとうございます!」
「気合ですわよ!」
「気合ね!」
そうして僕は決闘場の中心、対戦相手と審判がいるところへと向かう。
「お兄ちゃん!ジブン、お兄ちゃんに賭けたっすよ!」
シエーネがこちらに手を振っている。お前、僕に賭けてくれたのか。正直、オッズとかは聞いてないが、普通に考えて僕が負ける可能性が高いのだから、僕の倍率は悲惨なことになっているのではないか。それなのにお前…
妹力がたけぇじゃねえか!
「シエーネ!稼がせてやるよ!」
「楽しみにしてるっす!勝ってくるっすよ!」
「任せろ!」
そうして僕は決闘場の中心へと着いた。
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