第3話 う、うさ耳、うさ耳ハスハス!!う、うさみみ!!・・・ふぅ、世界とは実に素晴らしいものであるな。

・・・・・しらない天井だ。


どうやらまた気を失っていたようだ。体を起こして回りを見渡してみるとどうやら会議室のようなところで寝かされていたらしい。


また死んでしまったのだろうか。いやまあ前の世界では厳密にいえば別に死んだわけではなかったのだが。


「おや、気が付きましたか?気分はいかかです?」


声の方を向くと、そこには小柄な妙齢の女性がいた。とてもかわいらしい方だ。特にその頭についているがそのかわいらしさを引き上げているように見える。


「ここは、天国かなんかですか?」


そう聞くと、女性はきょとんとした顔をした後、くつくつと笑った。


え、かわいい。


「いえ、ここは天国ではありませんよ、まぁしいて言うならば、会社ですかね」


天国ではないらしい、どうやら助かったようだ。しかしあの高さから落ちてよく生きていたものだ。痛いところもないし、あたりどころがよかったのだろうか、いやしかし、あたりどころがよかったで済む話でもないだろう。あの高さだぞ、雲の上から落ちたのだが。どんな奇跡だ。


確か、気を失う前に誰かがいたように見えた。その人に対して色々むちゃくちゃな事を言った気がするが、混乱していて何を発言したか全く覚えていない。もしかしてその人がキャッチしてくれたのかと思ったが、しかし、僕みたいな標準的健康優良体型であっても、大人の男、体重はそれなりにある。キャッチしようものなら体はバラバラになってしまう。お互いに。もしキャッチできるとしたらそれはゴリラくらいなものである。


流石に誰かにキャッチしてもらうのは現実的ではないだろう。


蟻は上空一万メートルから落ちてもしなないというが、あいにく僕は蟻ではない。


こうして考えていると、うさ耳をつけた女性がこちらの様子を心配そうにうかがっていることに気がついた。考えるよりも普通に聞いた方が早いよな、なぜそのことに気がつかなかったのか。どうやらまだ混乱しているらしい。


「僕は空から落ちてきたのですが」


「はい、そう聞いています」


「どうして僕は無傷で生きてるんでしょうか」


「それは、うちの社員があなたをキャッチしてくれたんですよ」


「マ?」


「はい、マジです」


どうやらこの会社はゴリラを雇っているらしい。


ということはあの時の人がキャッチしてくれたのだろう。命の恩人をゴリラ扱いとは、非常に失礼だ、全く。とても感謝しても感謝しきれない。お礼を言う必要があるな。いやお礼だけで済ましていいことでもないだろう。命の恩人なのだ。しかし今の僕は、こっちにきてまだ少し、資産もなければ、コネもない。友達もいない。(それはデフォルトだろうって?ほっとけ)


つまりある意味で言えば、今の自分は赤ちゃんと一緒、生まれたてホヤホヤである。


どちらにしろ、お礼は言っておくべきだろう。


「すみません、そのキャッチしてくれた人にお礼を言いたいのですが」


「そうしたいだろうと思いますが、実はあなたをキャッチした際に腕にヒビがはいったようで、今しがた、病院に行きました。お礼は私が伝えて起きます。」


「あっ、そうですか、いや申し訳ない、ありがとうございます」


流石に無傷ではなかったようだ。僕のせいで病院に行くことになったとは、罪悪感がある。



「しかし、会社ですか。コンセプトカフェ的なあれですか?」


「?、いいえ」


「え?ではそのうさ耳は?」


「自前ですが」


「自前?じゃあ動かせるんですか?」


「ええ、ほら」


そうして女性はピコピコとうさ耳を動かしてくれる。


その時、僕の体に衝撃が走る。

その動きはまさに本物の耳であるということを示していた。



「す、すばらしい」


「そんな驚くことですかね?普通のことですよ」


「普通?普通だと?」


「ええ、私、獣人ですし」


「・・・・じゅうじん、・・・あー獣人ね!!」


つまりなるほど僕はあいきゅー150あるので、この発言ですべてがわかってしまったゾ


貞操逆転なんて言うから、元の世界似た、よくある男と女の貞操観念、情操観があべこべになっただけの世界を想像していたが、しっかりファンタジーな異世界じゃないか。


なるほど、あのくそ玉め、説明が足りなじゃないか。異世界への移動方法もひどいものだった、あれでは異世界ではなく、死後の世界への片道切符である。いや死んだらまた、あの空間に行くのであれば、往復切符であろうか。


なーにが、璧でありたい、だ。貴様なんか泥団子だ泥団子。


「ところであなたは空から降ってきたそうですが、男性というだけでも珍しいのに、いったい何があったんですか?」


「あーイヤその、まあ、いろいろありまして」


ここでごまかすのもあれなので、今まであったこと、自身が異世界から来たことを伝えた。



「あーなるほど異世界人だったんですね」


「あんまり驚いてないっすね」


「昔はよく来てたらしいですからね」


「昔ってどのくらいですかね」


「300年くらい前かな」


「スケールがでけぇ」


「でも異世界人なら話は早いですよ」


「そうなんすか」


「まぁ私ではどうにもできないので、警察を呼びましょう」


そうして警察を呼んでもらった。もうなにも考えてなかったが、ふつうにこの世界にも携帯はあるらしい。


ちなみにちゃんと携帯はうさ耳に当てていた。

ちょっとおもしろい。


「ところで、非常に失礼なことを頼んでいることを承知で聞いていただきたいのですが」


「はい?」


「耳、触ってもよろしいでしょうか」


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