第48話 後日の話。
「あら、おはよう」
「シリアスな雰囲気はどこへ?」
次の日、アムエルは普通に学校に来た。まるで何事もなかったかのように。
「まぁ何にせよ、無事で良かったよ」
僕が言えたことじゃないけれど。
「ええ、まぁ無事よ、損はしたけれど。その程度で済んで良かったと思うべきかしらね」
「?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
放課後、僕は生徒会室を訪れていた、もちろん理由は聖女にお礼を申し上げるためだ。
今回もどら焼き持参で。
「聖女様、今回の件、ありがとうございました」
「いえ、お気になさらず。無事でなりよりです」
僕がルグレット先輩の花から見つけた魔道具の効果は、ただの発信機である。魔力で動く発信機。
故にあの晩、アムエルに足枷を解いてもらった後、僕から目を離しているうちに手に持っていた指輪型の魔道具を足の指にはめた。
そうして聖女は魔道具を発動させた僕の居場所を掴むことができたらしい。
ちなみにあの家には人払の結界が張られていて、魔道具による発信がなければ、たどり着くことは困難だったそうだ。
「…約束通り、アムエルに手荒なことはしていませんよね」
「ふふ、あなたが被害者なのに、随分とアムエルさんのことを心配するんですね 彼女はあなたを監禁したのですよ?」
「…」
「大丈夫です、何の問題もなく、経歴に傷もなく、学校に復帰しますよ」
「であればいいんですがね」
生徒会室の机の上に、アムエルの家で見たような魔道具が置いてある。もしかしたらアムエルの家にあった魔道具とは別の魔道具、または魔道具に似たただの円柱かもしれないが。
「一つ質問なんんですが、その魔道具はアムエルの家で見た結界の魔道具ですか?なぜそれがここに?」
「さて、なぜでしょうか?」
聖女はふわりと微笑を浮かべる。
あくまで、はぐらかすつもりか。
おそらくその魔道具をアムエルが提供することによって、アムエルがしたことをなかったことにするような、罪を帳消しにするような、そんな取引があったのではないかと予想する。
今朝、無事か無事でないかを聞いたのに、損したと答えが帰ってきたこともこの予想に至った要因である。
聖女は魔道具を撫で回しながら、
なかなか手に入れるのが難しい魔道具なんですよこれー
とかいってるし、絶対そうだろ。
「…すべて手のひらの上ということですかね」
「はい?」
「最初からその魔道具が欲しくて、僕と彼女をひきあわせ、僕を餌にして彼女を加害者に仕立て上げて、その罪の帳消しと引き換えにその魔道具を貰うって算段ですか?」
それになにより、男子からのヘルプという点が重要だったのではないか、そうすることで武装集団を動かすことができ、そうしてアムエルさんを被疑者として確保することにより、後の交渉が有利に進むわけだ。
「まさか、それは結果論ではありませんか?それに、私に怒るのはお角違いというものですよ」
聖女は大仰に腕を広げて続ける。
「愛が抑えきれずに監禁したのはアムエルさん、そこから私が提供した手段で脱出したのはあなた。ご自身たちで選んだ結果です」
そういって聖女はコテンと小首を傾げる。
「…確かにそうですね、僕の予想でしかありませんよ。この予想は聞かなかったことにしてください」
「いいでしょう、人間だれでも間違えることはあります」
「話を変えましょうか、聖女様は神の声が聞こえるのでしょう、僕がピンチであること、ピンチになることが事前に分かったんじゃないですか」
「だから注意したじゃないですか、周りに気を付けてって」
わかるか、そんなんで。もっと具体的に言ってもらわないと困る。
「監禁場所に関してはわかりませんでしたね、神もなんでもかんでも教えてくれるというわけではありませんですし、なにより、結界の魔道具がありましたから」
なるほどそれを見越して、ルグレット先輩の花の中にメモと魔道具を入れておいたわけだ。
恐ろしい人だ。もはや畏怖すら覚える。
「あなたは…何者なんですか?」
「言いませんでしたか?私は聞こえるのですよ、神の声が。神が全て教えてくれます」
「…」
さいですか。
「ところで、あの武装集団は何者なんですか?」
「私の信奉者です」
警察じゃないんかい!
聖女様も割と犯罪スレスレなことしてないか?
はてさて、
聖女との会話を終えて、生徒会室の外に出る。
実はアムエルを外に待たせているのだ。
「お疲れ様、どうだった?」
「なんか、どっと疲れたよ」
「で、私をこんなに待たせているんだから、重要な話なんでしょうね」
「もちろん、お互いにいい話を持ってきたんだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――
「と言うことで、これから一緒に住むことになりました。アムエルさんです。挨拶しろ猫」
「私の扱い雑じゃないですか?」
「アムエル、これうちの猫、変態。有能な変態」
「私の扱い雑じゃ…」
「あら、かわいい猫だこと」
「~!は、反対!反対です!私はこの人と一緒に住むなんて!反対ですよ!」
「君に拒否権はないのだよノーシャ」
「なぜ!」
家が更に、にぎやかになりそうだ。
貞操逆転世界でモン娘たちにセクハラしたい @mikumo05
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。貞操逆転世界でモン娘たちにセクハラしたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます