第37話 高い食材、安い食材

うっわ、たっか。

これ一人だったら絶対に買わないかもってレベルの値段だ。


ハーブティーは、一種類しかなかった。

もちろん、砂糖やミルク等のトッピングはあるが、そこはやはりキッチンカーだからだろうか。


ハーブティー自体は紫色でとてもきれいな色をしていた。


「花を使っているらしいわよ。だからこんないい色になって、SNS映えするのよ」


「なるほどね」


ハーブティーを一口飲んでみる。なるほど味そのものは普通のハーブティーだが鼻から花の薫りが香る。上品な味わいな気がする。実際にそういった専門店だとか、お高い紅茶を飲んだことがないので実際どれくらい上品な味わいなのかはわからないが。


実際の所、僕が高い紅茶を飲んだところで違いなどわかるはずもないだろうが。


そういう違いがわかるってのは、昔からいいものを食べてきた人ができる芸当だと思う。もちろん後天的に会得することもできるのだろうが、今の僕は絶対にできない。


「ところで、あなた、昼ご飯は普段どうしているの?」


「昼ご飯?いつもは菓子パンとかコンビニのおにぎりとか食べてるかなぁ。食欲がない日はちょろっとお菓子で済ませてるけど」


前の世界では健康に気を遣って自炊をしていたが、こっちの世界に来てからは、学校に行く前にコンビニによって目についたおいしそうなパンやおにぎりを買って食べている。若い体だからこそできる芸当である。そういったカロリーを気にせずに食べることができるのは非常に素晴らしいと思う。


「ふーん、その年にもなって子供みたいね」


「ワァ…ァ…」


「でも、いつでも童心に戻ることができるのは素敵よ」


「…ありがとう!」


「でも、健康が気になるわ。これからは私がお弁当を作ってきてあげるから、もう買わないでね」


「お、お弁当?作ってきてくれるの?」


「そういってるでしょ、なに?頭だけじゃなくて、耳もバカになったの?救いようがないわね。私が救ってあげるから心配しなくていいわよ」


「最初に僕を貶すターン必要?最後の言葉だけでよくない?」


「なにを言っているのよ、このコントラストが美しいんじゃない」


「そーかなー?」


「そうよ、お花だって、花と茎の部分があってこその美しさじゃない」


「そーかなー?」


「そうよ、夏があってこその冬、冬があっての夏よ」


「うーん、それはなんとなくわかるような…」


「どちらにしろ、ころころ表情が変わってかわいいと思うわ、バカみたい」


「悪口じゃないか!」


「褒めてるわよ、心外ね」


「確かに君の心は常識の外にあるかもね!」


「うまいこと言ったようだけれど、別にそんなうまくないわよ。結局何が言いたいのかわからなくなっているわ。…なによその顔、褒めてほしいの?わーすごいわねー。これでいい?満足した?」


「…泣いていい?」


「いいわよ、私の胸の中で泣きなさい」


「うわーん!」


「あらあら、かわいい、間違えた。可哀そうに、誰に泣かされてしまったの」


「お前だ!あとナチュラルに間違えるな!」


「何言ってるの?このコントラストが美しいんじゃない」


「いやデジャブ!」



こうして、しばらく会話を続けた後に、僕らは解散をした。

帰って、宿題をしなくちゃ。



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