第18話 恐怖!大胆リングの効果の程は!
「おい!聞いているのか!?」
「はいはいはいはい聞いておりますよ、オタン殿、今月の金がなんですって?」
「足りないと言っているのだ!10万ほど減らしただろ!」
「減らしてなどいませんよ、数え間違いではないですかね。まぁもし足りないのであれば、その分、持っていくといいでしょう」
「ふん、分かればよいのだ」
「これがイザベラさんの許嫁か…」
良くも悪くも、見た目は非常に普通の人間だ。獣人特有の耳が付いているわけでもなければ、エルフのような長い耳が付いているわけでもない。もちろんしっぽもない。
スタイルだって、太っているわけでもなければ、痩せてもいない。
普通の、至って普通の人間であった。
つまりあんまりぱっとしない、印象に残らない感じ、といったら伝わるだろうか。
彼の言動に引き気味になっているとイザベラさんがこそっと耳打ちしてくる。
「彼の名前は、オタン・プレトンシューズ。最近成り上がった商家の一人息子ですわ」
「なるほど成り上がりか、道理であの言動ね。貴族ではないわけだ。彼はよく来るの?」
「ええ、お金の無心に来ますわね」
「お金の無心かい?君に会いにとかではなく?」
「お金の無心だけですわ、会話もそれだけです。彼の好きなものや嫌いなものすら知りません」
「なんてことだ」
よくある貴族の愛のない結婚てやつだろうか、こうして実際見てみるとなんと残酷なことか、お金の心配がない代わりに、そのあたりの自由がないといったことか。人間というのは以外とバランスが取れているのかもしれない。
そんなことを考えていると、スーツを着た猫耳が付いた女性が入ってきた。どうやら遅れてきたらしい。この男のお付きのようだ。
「坊ちゃま、そのあたりに、どうやらお取込みのご様子です」
「うるさいぞ!ノーシャ!そんなことはわかってる!ん…?おやおや、いたのか、吸血鬼もどきが」
「吸血鬼もどき?」
吸血鬼もどきって言った?この男の視線の先にいるイザベラさんを見ると、下唇を噛んで悲しそうにしている。
「セヴェルもかわいそうだなぁ、娘がこんな出来損ないで、誰も婿に来ないだろうなぁ、でも僕は優しいからさぁ、もらってあげるんだよなぁ、9番目の妻としてさ」
「そのことに常に感謝してほしいんだよねぇ、ほら、言ってみなよ『私みたいな出来損ない貰っていただきありがとうございます』ってさぁ。もちろん土下座でね」
こ、こいつ!クズだ!びっくりした!すっごい!もうすっごいクズ!どんだけ歪んでるんだこいつ、もはやちょっと哀れに見えてくる。
と横目にイザベラさんが立ち上がって、床に土下座をしようとしていた。
「まって、こんなやつの言うこと聞く必要はないよ」
「あ?誰だお前?」
今まで無視されてきたが、ようやく視線がこちらに向いた。ここは漢の見せ所であろう。いやなに、かわいい女の子をクズ男から庇う役割、ちょっとやってみたかったんだよね。
うん?僕こんなキャラじゃなかったような気がするけど、まあいいか。
僕は腰を落として、手のひらを上に向ける。
「あいや、お控えなすって。
「転移者…だと?」
「そして、イザベラさんが友達。友のそんな姿ぁ見たくないんでさぁ、止めさせていただきやした」
「はぁ?」
「あっしから一つ、言わせていただきたいことがございやす。随分と
「な、何様だお前!この僕の前だぞ!無礼だぞ!この平民が!平民は全員僕の前では平伏しろ!」
「へいふくぅ?いやだね、つーかさぁ君さあ、何様なわけ?別に貴族でもないんでしょ?君が偉いの?偉いのは君の親じゃなくて?」
「ぐぬぬ…貴様ぁ」
「え、貴様ぁ、じゃなくってさ、答えてみせてよ。偉いのは君?それとも親?あ、答えられないか、そっかそっか、自分でわかってるんだ。そうなんだよね、僕は偉くなくてぇ、親が偉いんだぁってさ。そうじゃなかったら即答できてるもんね。僕が偉いんだぞって。むしろわかっている方がタチ悪い気がするけどね。そうやってさぁいつまでも親の威光にすがってればいいんじゃない?知らんけど」
「え、あ、ちょ、ちょっと…」
イザベラさんがわたわたしている。かわいいね。
「っていうかさ、人を見下して楽しいの?ほかにやることないの?ないのかそっか、あったらこんなことしないもんね、悲しいね、寂しいね、君の人生」
「…貴様ああああああ!!!!」
さっきから下を向いてプルプルしていたが、どうやらついに爆発したらしい。四肢をぶんぶんさせて暴れている。
「決闘だ!!逃げることは許さんぞ!!!」
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