30話 久しぶりの地上
私たちはこれから地上に出ることになったけど、地上に戻る前に気づいてしまったことがあった。
「そういえばアリーシス。地上にはどうやって出るの?」
そう、どうやって外に出るかってことだ。私たちは階段を降りたり、気がついたら下の階層に転移してたり、空中から飛び降りたりして最下層にきたから、どうやって戻ればいいかわからない。
しかも最下層に向かっている時に帰り道のことを考えてなかった。これはやっちゃったなって思ってる。
本当にどうすればいいだろう。すごく困ったからアリーシスに聞いてみたけどアリーシスはわかるのかな。この迷宮の最下層にいたからきっと外に出る方法も知ってるはず。
さて、アリーシスの返事は___
「えっ!……………あ〜、う〜ん。大丈夫だよ!そう大丈夫だいじょぶダイジョブ……。」
あ、アリーシス?視線がどんどんズレてってるけど大丈夫?
目がどんどんぐるぐるしてきてるけど大丈夫?
喋るのがどんどん早くなってカタコトになってるけど本当に大丈夫?
「ねぇ、アリーシス。私たちって、外に出られるんだよね。」
私がそう聞き直すと、アリーシスは体を拗らせたりくねらせたり、逸らしたり、全身を使ってぐるぐる回ったりした。
これは〜……大丈夫かな?アリーシス。早めに教えてくれると嬉しいんだけど。
「うん、外には出られるよ。出られるんだけど〜…デラレルンダケド。」
もういい。アリーシスは絶対に何かを隠してる。それを教えてもらわないと絶対に大変になっちゃう気がする。
私は、アリーシスの目をガン見して、圧をかけた。目を逸らしてもそっちについていってずっと目を見続ける。
「何か隠してることがあるなら早めに言って。」
「…はい。え〜っと、外に出るにはね、元来た道を全部戻らないといけないの。だから、風属性か元々飛べるかのどちらかが必要なんだ…。」
「「「・・・・・・・・・」」」
「マジで…。俺火属性しか使えねぇぞ。」
誠司以外はみんな黙り込んで、誠司は自分が火属性しか使えないとつぶやいた。
「アリーシス…それは早めに言って欲しかったな。私たちのパーティー、風属性が使えるのは穂乃果だけなんだよ。」
「本当にごめん。私は飛べるから、2人運ぶよ。」
アリーシスが2人運んでくれると言ったので、私は穂乃果と、誠司と聖也はアリーシスに運んでもらうことになった。
アリーシスは空も飛べる上に、魔法まで得意なんだって。しかも得意属性とかはほとんどないけど、苦手属性とかもほとんどないんだって。それは羨ましいなって思った。だって、どの属性も使えちゃうから応用がすごくやりやすいでしょ。今回だって、空中を移動するからって風属性を使ってるし。
「運ばれるってこんな感じなんだな。風で空に飛ばされる経験がないから楽しい。」
誠司は空中にとどまったりするのが初めてだから、感動しているみたい。だけど…あれ?
誠司と聖也はスカイアイランドの時1番下まで落ちたって言ってたけど…、その時の着地って風属性を使わないと衝撃を吸収しきれなかったような気がするんだけど……。
「そういえば誠司…。スカイアイランドの時、着地はどうやったの?」
「ん、着地?ああ、衝撃に備えて体制を整えてそのまま着地したが何かあったのか?」
「いや何にもないけど、体が頑丈になった人って本当に頑丈なんだなって思っただけだよ?」
◆◆◆◆
「よし!どんどん上に向かってくよ〜!」
アリーシスの声と共に私たちは飛び降りてきたスカイアイランドを登っていく。
頑張って降りてきたところをまた辿って戻っていくのはなんだか不思議な感じがする。
だけど、これで地上に帰れるんだな。そんな感じがする気がする。
だって、ずっと地下にいたっていう感じがしないから。スカイアイランドとかは完全に快晴の青空だから太陽の光っぽいのもあるし、地下といっても常に明るかったからね。
「そういえば、戻る時にそれぞれの部屋のボスは復活してないんだね。」
「ボス?ああ、門番のことね。うん、うっかり死んで復活した時以外は出てこないよ。だから帰りは戻るだけ。」
スカイアイランドを上りきって、私たちは歩いてきた道を戻っていく。
扉を鑑定しようと思うまでは、扉の名前は見た目の色だけで呼んでたから、今改めて鑑定してみると、正式名称が結構違うことがわかる。
緑色の扉は緑夢の扉だし、黄色の扉は黄金の扉だし、橙の扉はそのまま橙の扉だったけど、赤色の扉は始まりの扉って名前だった。
「扉ってちゃんとした名前があったんだね。もっと見ておけばよかった。」
「扉?扉だけじゃないよ。階層にも全部名前がついてる。」
「えっそうなの?」
「うん。たとえばこことか。
パズルのピースをひたすらくっつけて元の絵に戻す回想があったでしょ。そこで記憶を見たはずだけど、そこの階層の名前は白の階層。そのまんまだけどわかりやすいよね。」
この迷宮、階層ごとにも名前があるって初めて知った。せっかくだし、大量のネズミに困ったこの最初の階層の名前も見てみようかな。
鼠の階層。
………。あれ?やっぱりそのまんますぎるよね。もしかしなくてもこの迷宮を作ったのはきっとルイくんだから、この階層とかの名前をつけたのもルイくんだよね。もしかしてルイくんってネーミングセンスがそこまで良くないのかも。
◆◆◆◆
「やっと最初の入り口まで戻ってきたよ〜!」
「はぁ゛〜疲れたぁ。」
「私も疲れたよぉ〜。」
「お疲れ様〜。」
私たちはやっと入り口のところまで戻ってくることができた。
戻ってくる時に思った。1階層さ、めっちゃ迷路みたいで複雑。
私たち、よく2階層までたどり着くことができたなって思った。
「やっと外に出られるね。」
「私、何年ぶりの外かな〜。どれくらい時間が経ってるんだろう。きっと外の景色とかすごく変わってるよね!」
アリーシスが、これから出る予定の外にワクワクしている。
私も楽しみだよ。もうすぐ外に出てゆっくり休むことができるし、ルイくんにも会うことができるから。
「恵美〜!早くしないと先に俺が扉を開けるぞ〜!」
「わ〜!待って待って!私もあけたいから待って!」
早く外に出たい。
ゆっくり休みたい。
ルイくんに会いたい。
そんなことを思いながら、私は入り口の扉を開けた。
「負傷者はこっちに集めろ〜!」
「戦える奴は外に出て街を守れ!」
「こっちには勇者がいるからな!」
街から煙が昇っていた。
ガラガラと建物が壊れるような音がして、人の叫び声が響いていた。
私は、何があったのかを聞くために、近くにいる知り合いを探した。
同じクラスの紫音 めぐるを見つけた。
「めぐる!何があったの!?」
「あれ!恵美、穂乃果まで帰ってきてたんだ。
よかった。人手が足りなかったんだ。
魔王が復活しそうなんだって。それで魔族が活性化してこっちの大陸を襲ってるんだって。」
魔王が復活しそう?魔族がここを襲ってる!?
外に出たら休めると思ったけど、休めるようになるのはまだまだ先になりそう。
あとがき
ここで2章は終わりです。次から3章になります。
時系列を一気に戻してからのルイ視点です。
よかったらブックマークと評価をしてもらえると嬉しいです。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
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