22話 着地



 今、私は地面が見えないくらいの高さから落下してる。うまくバランスをとらないと、落ちるスピードがさらに早くなっちゃうし、風魔法も持ってないから飛ぶこともできない。だけど、高いところ怖い!じゃなくて、高いところ楽しい!と思う。


 かなり長い間落ち続けている。

 そういえばこれってどこまで落ちるんだろう。さっき穂乃果の声も聞こえたけど、風の音で今はもう聞こえないな。誠司と聖也もどこかにはいると思うけど、仰向けになることも難しいし探すのもきっと難しい。

 まあ1番下まで降りちゃえばどっかで会えるよね。

 とりあえず、1番下まで降りちゃうことにした。地面に叩きつけられないようにしっかり地面を見ていないと。でも、1番下が見えないんだよね。どこまで降りていくのかが本当にわからない。だけどこういうのってすっごくワクワクする。何があるんだろうって心が躍って楽しくなる。



 今どのくらい時間が経ったのかなんて全然わからないけど、かなりの時間がたったと思う。

 人間ってどれだけ体験したことのないことでもずっと続けていれば慣れるもんなんだね。最初は焦ったけど、今はこうやって何かを考えることもできてる。


 私がいるところのかなり下に何かがあるのが見えたんだ。まだ豆粒みたいなあれがなんなのかはわからないけど、きっと島だと思う。そうだと思いたい。ずっと落ちていたら、地面が恋しくなってきたから。


 さっき豆粒のように見えていたものは、今は水色の氷のように見えていた。もうすぐそこに着地をする。地面は絶対に硬いと思うから、怪我をしないように気をつけないとね。まあ怪我をしても治せるからいいけど、痛いのは誰だって嫌でしょ。


 着地するために姿勢を変えて、衝撃に備える。

 かなりのスピードで落ちてるけど、体は丈夫になってるからかなりの衝撃に耐えられると思う。


 落下する時のスピードをそのままに、氷の地面に勢いよく着地した。


「いったぁ〜。」


 痛い。きっと痛いだろうなって予想はしてたけど予想の何倍も痛い。私の予想が甘かったよ。足がじんわり痺れて、その痺れが上半身の方向に広がってく。その感覚のせいでスムーズに動けない。


 着地の衝撃が治ってきたころ私は周りの景色を見た。


 あたり一面氷の世界。木も、地面も道も、全て氷でできている。そして、少しだけ雪が積もっている。雲がないため直接光があたり、さまざまな方向にキラキラと光を反射している。様々な色に光ってとても幻想的な景色だ。


「きれい…。」

 私は思わず声を漏らす。目に映っているその景色は、どこでもみたことがないものでずっとみていたいと思う。


「恵美ぃ〜!上に気をつけてー!」


 突然そんな声が聞こえた後、すぐそばでズドンという何かが落ちてきた音がした。

 きっと穂乃果だ。そう確信した。


「穂乃果!大丈夫?」

 私は落ちてきた場所に駆け寄る。落ちてきた時の風で積もった雪が舞い上がっている。その雪のせいで周りがよく見えない。こんな時に風属性魔法が使えれば、この雪を吹き飛ばせるのにと思う。でも、無い物ねだりは後にする。まずは、穂乃果が無事なのかを確認しないといけない。

 

 雪が舞い上がっているところを探していると、一箇所クレーターのように外が盛り上がって内側が凹んでいるところを見つけた。

 地面に何かが埋まっているみたい。穂乃果だったら無事かどうかが心配。急いで確認しないと。

 

 凹みの中心に着いた私は、粉のようになっている雪をかき分け掘り始める。手袋なんてつけてないから、手が冷えて痛くなってくる。それも、あとで直せば問題ない。今は、穂乃果を探すことに集中しようと思う。


 雪を掘り進めているけど思ったより進まない。掘っても掘っても上から舞い上がった雪が地面に戻ってきているから。それでもずっと掘り続けて、その手が何かにぶつかった。それはまだ温かくて、少しだけ動いている。


「穂乃果、今から出すからね。」


 私は穂乃果の腕をみつけた。あと少しで出すことが出来る。大丈夫だよ。ちゃんと引っ張り出すから。もし怪我をしててもしっかり回復するから。


「ぷはっ。恵美、ありがとう。」

「無事で良かったよ。怪我は…してないみたい。安心した。」


 本当によかったぁ。怪我は治せるけどやっぱり痛いからあまり他の人に体験して欲しくない。だから、怪我をすることなく着地していて安心した。


「誠司と聖也は…またどっかに行ってるんだ。」

「うん。落ちてる途中一回合流したけど、強い風でどっかに吹き飛ばされてた。多分探せばどこかに落ちてるはず。」

「そっか。なら進みながら探そう。私たちだけでも行かないといけないし、進む先にきっといるよ。2人とも私たちより身体能力が高いから、怪我もしてないと思うし、焦らずに行こう。」

「そうだね。焦ってこっちが怪我をすると困るもんね。」


 この部屋は縦にすごく広いみたい。上から下に落ちてきたから下に向かっていけばいいのかな。まあ、下へ行く道しかないから下に行くしかないけど。


 空に浮かぶ氷の島か。あ…、看板が立ってる。やっぱり正式な名前が書いてある。

 『スカイアイランド』

 かっこいい。なんか、こう、上手く説明できないけどキラキラしてて、アトラクションとかにありそうな楽しそうなやつみたいな名前。

 もし、スカイアイランドをアトラクション風にするならどんな名前にするかな。やっぱ冒険するのがいいよね。

 『スカイアイランドアドベンチャー』かな。

 そのまんまだね。でも、シンプルだからわかりやすいと思うんだ。

 

 今から私と穂乃果は、スカイアイランドを冒険してくるよ!


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