27話 最下層にあったもの




「ルイからのメッセージは無事伝わったかな。…その表情の感じだとしっかり伝わったみたいだね。良かった良かった。これで私の役目も終わりだね。」

「アリーシスは、この後どうするの?役目は終わったんでしょ。」


 私は、アリーシスにこれから何をするのかを聞く。役目が終わったなら、ここから出ることもできるようになったりしてるのかなって思ったから。もしかしたら、ルイくんに会いに行きたいかもしれないから。


「まあそうだね。勇者たちに武器を渡してからは自由になるね。このあとはゆっくり成仏するのを待とうかな。なんでずっとここに止まっていられたか分からないから、原因を探すよ。」

「やっぱり幽霊だから?あっでも、メッセージではルイくんにまた会いたいとか言ってたから成仏できない原因それじゃないかなって思うんだけど。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」


 アリーシスは急に何も言わなくなった。やっぱり言わないほうがいいことだったのかな。


「それだよ!なんで今まで気がつかなかったんだろう。ルイに会いにいけばいいだけじゃない!」

「アリーシスは気が付いてなかったの!」

「うん。離れていないといけないってずっと思い込んでたけど…、そうか。もう離れていないといけないわけじゃないもんね。」


 なんと、アリーシスは気づいていなかったみたい。確かにずっと一緒にいたりするといなかったことを想定しなくなるし、ずっと離れてたら離れているのが当たり前って考えになってたりするもんね。

 アリーシスはずっとここで1人で過ごしてた。きっとすぐにでも会いに行きたいはず。私たちを放っておきたいほどに。それならー


「それなら一緒に外に出ようよ!ルイくんが外で私たちの帰りを待ってるから。また会いに行こうよ!」


 私はそう提案する。3人にはそんなこと相談してないから、すごく驚いてる。アリーシスはずっとここにいないほうがいいと思う。ずっと過ごしてきた場所だけど、たまには外にも出たほうがいいと思うんだ。きっとルイくんも、アリーシスト会えたら喜ぶよ。


 私の言葉を聞いたアリーシスがポツリと呟いた。

「一緒に外に行ってもいいの?」


「平気だよ。」

 私はそう返す。


「そっか。嬉しいな。本当にいいんだね。移動の時、私の体ごと持っていくのも。」

「「「えっ?」ちょっと待って!」」


 私は今なんか、ちょっとすごいことを聞いた気がして、思わず聞き返す。

 聖也を除く2人も思わず口を挟む。


「か…体ごとってどういうこと?」


 多分こんな意味だろうなーとは予想してるけど、一応聞き返しておこうと思う。


「そんなのそのまんまの意味だよ。私って、本体の状態を保つことでこの世界に残り続けてるんだけど、本体から離れすぎると当然消えちゃうんだ。移動に制限がかかってるから、移動するには体ごとやらないといけないんだよ。」


「やっぱりそっか。まあ、誠司に頼むから大丈夫。」

「俺かよぉ!」

「体力も力もどっちもあるでしょ!」

「まあやるよ!やってやるよ。」


「ふふふ、無理しなくていいよ。気持ちだけでも嬉しいから。だけど、本当に持ってってくれるならもっと嬉しい。


 ありがとう。」


 アリーシスはにっこりと笑って言った。



 ◆◆◆◆



「よし!それじゃあ武器を取りに行こうか。勇者用の剣と誠司と恵美用の武器以外にも、大量にあるから持っていけるだけ持っていこう。案内するよ!」


 今、私たちはアリーシスに宝物庫に案内されている。外に出る前に武器を手に入れるためだ。最初からそれが目的でここまで潜ってきたから、忘れないうちに案内を頼んだ。

 ずっと、地下の通路を進んでるけど、その通路の広さに驚いている。地下でこんなに広がってて、絶対迷いそうだなと思う。

 地下はしっかり整備されていて、歩く場所に石ひとつないからものすごく歩きやすい。ちょっとした段差で躓いたりもしないから、すごく助かる。突然引っかかったりすると、結構ビクってなるものだから。


 しばらく歩いていくと、黒い金の飾りがついた扉が見えてきた。身長の2倍以上あるんじゃないかな。すごく大きい。


「ここが宝物庫だよ。」

「そういえば、なんで宝物庫って名前なんだ?剣とかの武器を保管してるんだろ。」


 誠司がそうやって聞いてたけど、確かに気になる。宝物庫って、宝物を入れる金庫みたいな感じの部屋のことだよね。


「ああ、それはルイが、この武器絶対ずっと後には国宝級になってるよって言ってたから、宝物を保管する部屋として宝物庫になってる。武器庫でも良かったんだけど、宝物としてもかなりのものだからっていうのもあるかな。」

「なるほど〜。国宝級って…ヤバイね。」

「ヤバイな。」


 ルイくんは私たちに何を渡そうとしてるんだろう。そんなに貴重で高そうなものじゃなくていいのに。まあ、強い武器を持たせてくれるってことは信用してくれてるってことだろうし、なんだかんだ心配してくれてるからだと思うんだ。だからありがとう。


「じゃあ、開けるから、開けたらすぐに中に入ってね。念には念を入れといたほうがいいと思うから。」


 アリーシスは、黒い扉を開ける。ズズズと重そうな音を立てながら、扉は外側に開いた。


「すごい。」


 部屋の中には、たくさんの武器が綺麗に整頓されて並べられていた。しっかりその武器の詳細情報も書かれていて、名前までついているのもある。


「勇者のやつは1番奥にあるから。誠司と恵美のはルイにこれを渡せって言われてるから今渡す。穂乃果は、ルイがもしかしたらクラスで召喚されるかもっていって用意してたところのから選んで。」

「わかった。ありがとう。」









あとがき

長そうだったので分割します。

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