俺は勇者召喚で転生した

和音 トワ

召喚と転生

1話 異世界勇者召喚+転生

 少しづつ暑くなっていた6月のある日。俺、「白鳥しらとり るいは今日も授業中に居眠りをしていた。授業中の居眠りはすごく楽しいものだ。クラスメイトが一生懸命勉強をしている中、1人のんびり寝ているというやってしまった感が好きだ。


 俺はなるべく自分のやりたいことだけをやるようにしている。その結果、あまり人と話ができなくなり孤立するようになってしまった。わけではない。




 こんな俺にも、話しかけてきて仲良くしてくれる友人がいる。




「こら、るいくん。ま〜た授業中に寝て。」


「あいたっ。恵美、おでこを弾くのはやめてくれ。痛い。」




 でこを弾いてきた彼女は青花あおはな 恵美えみ。俺の幼馴染で、学校一の美少女と言われているみんなの憧れのような存在だ。恵美は俺と特に仲が良いので、恵美が好きな男たちは一部を除いて俺に敵意を向けている。




 なんでこんないつも居眠りしているような奴が恵美の近くにいるんだ?という感じだ。俺は嫉妬されるという気持ちは知りたくなかった。仲良くしてもらっていて羨ましい!とかならいいんだ。なんであんな奴がって、自分のこと棚に上げて誰かを下げようとするのがすごく嫌だ。



 ところでなんで恵美は俺に話しかけにきたんだ?いつもは誰かと集まって昼ごはんを食べている時間だろうに。とっとと他の奴らと一緒にどっか行ってこいよ。



 




「るいくん、今どっかに行ってくれないかなって思ったでしょ。」


「えっ。」



 恵美が何かに気付いたのか、俺に文句を言ってきた。いつも思うが、恵美は心の中で思っていることを知ることができるんじゃないかと思う。恵美に向かって何かを思うだけで、大体バレる。しかも思っていることをドンピシャに当ててくる。




「そんなことより、一緒にお昼食べよ!最近一緒に食べてないでしょ。」




「それだけ?」


「それだけだよ!」


 


 なんと恵美は幼馴染と昼ごはんを食べるためだけに俺のところに来たようだ。俺は恵美と一緒にいられるのがすごく嬉しい。最近は別々に過ごすことが多かったからな。

 だけどちょっとだけもう少しだけ周りの目を気にしてほしい。今もクラスの男たちがこっちをを睨んできている。ほら、女子も盛り上がっちゃってるから。




「まあ、久しぶりだから一緒に食べるとするか。」


 周りのことは見なかったことにして、涙は自分の机の上に弁当を出す。




「やったー!」




「涙。2人だけで昼食なんてそんな羨ましいことはさせないぞ!俺もまぜろ!」




 そう言って突然机をくっつけてきたクラスメイトは俺のもう1人の友人の、赤坂あかざか 誠司せいじだ。クラスのムードメーカーで話もうまい。なんで俺みたいなやつと関わるのかが疑問なくらいたくさんの友人がいる。




「お前だけいい思いするなんて、俺が許さないぞ!」




 誠司ははいい奴なんだが少しうざい。俺はそう思う。


昔からやたら俺に絡んできて、自然と仲良くなってしまったのが友人になったきっかけなんだよな。






 俺たちは3人で昼食をとっていた。昼休みをのんびり寝て過ごし、眠りから醒めてあくびをした頃授業を受けるためにクラスメイトが全員戻ってきた。その時それを待ち構えていたかのように魔法陣が現れた。


「誠司!恵美!気をつけろよ!」


 クラスメイトがドアから逃げようとするが何故かドアは開かない。俺は窓を開けっぱなしにしていたことに気づきそこから外に出ようとした。だが間に合わなかった。

 目が潰れそうになるくらいの強い光が現れ涙たちと他のクラスメイトは目を瞑るしかなかった。クラスメイトと一緒に光の中に吸い込まれていく。


 どこかに引っ張られていくような感覚がする。これがライトノベルでいう異世界召喚か。これを体験する人ってどれくらいいるんだろう?


 


 光に包まれ、俺は意識を手放した。






 ◆






 俺は気がついたら仰向けに倒れていたようだ。意識が戻ってきたので、自分の状態を確認する。光がいつの間にか収まって視界は真っ暗になっていた。目瞑っているのだろう。恐る恐る目を開ける。




 目を開けて最初に目の中に入ってきたのは白色の翼が生えた金髪碧眼の綺麗な女の人だった。目の前にいたのはいい。だがこれは近すぎる気がする。俺は少し離れて欲しいと思って女の人に手を伸ばす。そして固まる。




 なんと俺の手は小さくなっていた。まるで赤ちゃんのような手だ。


 俺は召喚されたんじゃあないのか?逆にあれで召喚じゃ無いとかだったら驚きだ。


 女の人が俺の体を持ち上げる。


 俺の身長は150センチあるはずだ。


 いくら身長が小さめだったとしても女の人が軽々と持ち上げられるわけがない。




 自分の意思で動かせる赤ちゃんのような手。これはそういうことなのだろうか。というか確定だよな。夢を見ていたと言うわけでは無い限り。

 

 クラス全員で異世界召喚と思ったら、俺は転生していた。そう言っていいのだろうか。


 


「ほら、ルイ。お母さんですよ〜。」




 俺を持ち上げている女の人はそういった。




 信じたくはないがこれは真実なのだろう。


 つねっていたいかどうか確認することはできないが感覚もある。




 どうやら俺はクラスメイトと異世界に召喚されたわけではなく異世界に転生してしまったらしい。










































<恵美 視点>




 私はなんで倒れているのかな?




 確か私はるいくんと誠司くんと久しぶりにお昼を食べてそれから‥どこかに吸い込まれて。そうだった!




 私たちは教室に現れた魔法陣で何かされた。こういうのなんていうんだっけ?なんとか召喚?




 私、恵美が目覚めたのは教室ではなく大きな広間だった。床には大きな魔法陣が描かれている。周りは滑らかな石で出来ており、どこか神秘的な雰囲気だ。




 私はその光景に目を奪われる。




「おっす恵美。やっと起きたか。まあ俺もさっき起きたばっかなんだけどな。」




 誠司が話しかけにきてくれた。誠司によるとクラスメイトがほとんど全員この場にいるらしい。




 でも大事な人がここにはいない。私の幼馴染。




「るいくんは?ぱっと見どこにもいないの。」




 私が聞くと誠司は暗い顔をした。誠司の言いたいことがなんとなくわかって、私は声を飲み込む。




「俺さ、起きた後涙がそばにいないことに気づいて全員の顔を見たんだ。涙はこの場にはいない。」




 その言葉を聞いた時、私は衝撃を受けた。


 どうしてって誠司に聞きたくなるのを抑えて、声を殺した。






 突然目の前の扉が開いた。入ってきたのは豪華な服を着ている人たちで、まるでゲームの中に入ったような服装をしていた。


 周りにいた何人かは何が起きたのかを把握しているらしい。「召喚きたー」って言って盛り上がっている。盛り上がってるのはいいけど、なんでこんな状況で盛り上がれるかがわからないな。




「突然申し訳ありません。勇者様、私たちの世界を救ってください!」




 リアルでこんなことを言う人を私は初めて見た。でもさ、突然そんなことを言われても困るな。どう返せばいいかさ。




 クラスメイトのほとんどがおおっという感じで盛り上がった。こういう展開が好きな人はこの後のことが楽しみみたい。だって中学生だもん。そういう年頃だよね。




 落ち着いた後、女の人が説明をしてくれた。




「私はアイリス王国第一王女リリー=アイリスです。簡単に説明すると今この世界に危機が迫っています。


  魔王ヴォルフドットが世界を支配しようと企み人が暮らす世界へ侵攻しようとしています。魔族たちが強化した魔物だけでもとても強く私たちではとても敵いません。昔から言い伝えられている勇者と言うなので特別な力を持つと言われる人を異世界から召喚しました。


 


 どうか魔族と魔王を倒し私たちの世界を救ってくれませんか?」






 私はどう反応すればいいのだろうか。無理矢理感がすごいし、まさか本当かどうかもわからない言い伝えを信じて召喚したなんて。




 そんな時クラスの人気者金竜きんりゅう 聖也せいやが立ち上がって発言した。




「僕は魔王を倒そうと思う。助けを求めている人たちを放っておくことは出来ない!みんなも協力してくれないか?」



 金竜はみんなに一緒に世界を救わないかと呼びかけた。金竜の言葉を聞いてちらほらと彼を支持する声が聞こえてきた。他の人たちも徐々に世界を救おうという考えになってきているように見える。


 金竜は正義感が強い人だ。それも驚くくらいに。自分はどうなってもいいから周りを助けたい!とか言っちゃう人だ。自分のことも守りなよって思うのは私だけかな。



 私は、本当にそれでいいのかと思う。ほとんど情報をもらっていないのに、こんな簡単に決めていいものか。魔王が侵攻しようとしているのを、戦いも何にも知らない私たちが止めようとするなんて。


 だから金竜にはしっかり考えてほしい。自分のこと、周りのこと。

 金竜が発言したらクラスメイトの大半はあなたについていくと思うから。




 この世界はゲームのようにセーブも復活もできない。ここは現実だ。だから何かあったら。


 


 もしるいくんがいたらどんな意見を言ったかな。


 るいくんはすごくめんどくさがりだから、異世界を救うなんて面倒。世界を見て回るついでだな。とか言って自由に世界を見て回ってそうだな。




 もし、この世界のどこかにるいくんがいるとしたなら、私は探しに行きたいな。




「誠司はどうするの?」


「ん、俺?俺は涙を探すよ。あいつのことだからどこかにいるだろ。世界を救うとしたらついでだ。」




 誠司は私と同じような考えだった。私がるいくんを見つけないと。




 でももうクラスメイトの考えは金竜くんの考えのように世界を救おうとしている。クラスメイトは今1人いないことに気づいていない。いや、気づこうとしていないのかもしれない。るいくんは男に嫌われてたから。


 


 るいくんは無自覚だけど美形だし、勉強の成績もかなりよかったから女子にモテたんだよねー。


 まあ私がいつもそばにいてもるいくんを狙う子がいるくらいに。泥棒にるいくんは絶対に渡さないんだから。




 そんな私怨と私情を挟むクラスメイトでも私は誰も死んでほしくない。もし本当に世界を救いたいなら世界を救おうとして無理をしないで欲しいな。




「王女様。僕たちは世界を救うのに協力しようと思います。何をすればいいか教えてくれませんか?」




 結論から言うと、私たちは勇者として世界を救うこととなった。まあ、金竜が賛成派だったから反対派がほとんどいなかったんだよね。帰る目処も立たないし。


 王女様はぱあっと明るい顔になって嬉しそうに説明をはじめた。




「協力してくれるんですか。ありがとうございます。まずはステータスを確認して欲しいです。ステータスオープンといえばれるはずですよ。ちなみに平均は全ての項目が5から10です。勇者様方は平均の何倍も強いそうです。」




 この王女様、絶対に今のセリフ練習してたと思う。めちゃくちゃ滑らかなんだもん。こんな緊張しそうなところで噛まないわけがないもん。




 クラスメイトはステータスを確認し始める。いろんなところから嬉しそうな声が上がる。




 私もステータスオープンと言ってみた。すると目の前に青いパネルが現れた。私はいきなり、科学じゃ説明できないものを見た。これでは、ゲームと勘違いするものが出てくるだろう。あとなぜか、どういうシステムなのかがすごく気になってしまった。




「恵美!ステータス見せ合いっこしようぜ〜。」




私は、誠司と一緒にお互いのステータスを確認した。




名前 青花 恵美  年齢 14歳 性別 女 


種族 異世界人


称号 異世界の勇者


ジョブ 聖女


レベル1


体力 15


魔力 450


筋力 10


俊敏 8


防御 8


魔防 400




魔法 氷レベル1、水レベル1、光レベル1、聖レベル1


スキル 鑑定レベル1、杖術レベル1




 私はこんな感じだった。見事に魔法特化だ。これを見ると本当に異世界に来たんだな〜と感じる。




 誠司が見せてくれたステータスはこんな感じだった。




名前 赤坂 誠司  年齢 15歳 性別 男


種族 異世界人


称号 異世界の勇者


ジョブ 聖騎士


レベル1


体力 150


魔力 100


筋力 150


俊敏 40


防御 150


魔防 150




魔法 無レベル1、火レベル1、光レベル1


スキル 鑑定レベル1、剣術レベル1




「誠司が聖騎士か。すごくバランスが良くて強いね!でも全然似合わないね。」


「お前だって、強いだろ。魔力が極端に!しかも似合ってるしなんなんだよ。」




 私と誠司はお互いのステータスの感想を言い合った。


周りも他の人とステータスを見せ合っている。ある一箇所ですごく盛り上がりを見せたところがあった。




「聖也すごいな。お前勇者だってさ!」


「ああ、僕も嬉しいよ。この力があれば僕は世界を救える!」


「俺たちなら世界を救えるぞー。」




 どうやら金竜は勇者だったらしい。クラスのリーダーみたいな人が1番強いなら…。私は少しだけだけど安心した。




「全員自分のステータスはみましたか?今から装備を渡したいのでこちらの水晶に手を当ててください。この水晶に触るとステータスのジョブと能力値が出ます。触った人から装備を渡していきます。」




 私たちは順番に水晶に触れていった。水晶に触れるとさっき見たステータスのようなものが映った。私はなんだか個人情報を覗かれるみたいで少し嫌だった。




 水晶が映し出した結果を見るといろんなジョブがあっていろんな強さの人がいると知った。その中で私と誠司はかなり強いと知った。でも一番強いのは勇者だった。なんなのあの勇者。強すぎじゃないかしら。


 ステータスは全て150。魔法は無、雷、氷、樹に加えて光と聖なんて、属性が多すぎな気がするわ。でもそれだけ突出していたおかげでみんなの息が揃った。それは感謝しなくちゃ。




「勇者様方には明日から騎士たちが1人1人力の使い方を教えます。その後外に出てレベルを上げてもらいます。今の状態ではとても魔王には勝てないので、みなさんよろしくお願いします。」




 私たちは、部屋に案内された。相部屋だがかなり広い。私は女の子の中で特に仲がいい穂乃果と同質だった。


 


「恵美!一緒の部屋だったんだ。これから頑張ろうね。」


「うん!」




 あのあと、食事をとりお風呂にも入ったが、私たちの人生で一番濃い1日はこうして終わったのだった。










 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る