15話 ボス




 私たちは、試練の迷宮を引き続き進んでいた。パズルを解いた場所は、魔物が全く現れない場所だったみたいで、しっかり休むことができた。


 時折現れる魔物を倒しながら通路を進んでいった先には、豪華で大きな扉があった。赤いゴツゴツした扉で、金属の飾りがついている。




「ここで道は終わりだな。」




「これはゲームだとボス部屋!って感じだね。すごくわかりやすいところに設置されてる。」




「途中で離脱できるタイプだといいな。」




「ここで止まってても意味ないよ。先に進んでいこう。」




 聖也が扉を押すと、自動でドアが開く。この世界にも、動力が違くても自動ドア(扉)があったんだと思った。


 私たちは、扉の内側へ進んでいった。


 中は思っていたよりも広かった。さっきのパズル部屋と同じくらいの広さかと思ってたから動きやすくて嬉しい。




 この感じだと、扉の内側に、大きいボスがいたりするのがお約束だけど、この迷宮はどうなんだろう。


 まだ、この空間に灯りがついていなくて薄暗いから、周りが見えなくてわからないけど、ここには何かがいる。絶対に何かがいる。最近そういうのがなんとなくわかるようになったから。


 灯りがついてくれれば答え合わせができるのに。




 突然、壁にくっついていた松明がボボボッと全てついた。こういうのって、ゲームでしか見たことないから、すっごくワクワクするよね。これからボスが現れますよって感じで。


 でもさ、実際戦うのは、ゲームで作ったキャラクターじゃなくて私たちなんだよな。


 さて、どんなボスが現れるかな?できるなら、相性がいい相手がいいな〜。




 地面から風が吹き、その風で土煙が舞い上がる。下から、王冠を被ったゴブリンが現れた。大きな木の棍棒を持っている。




 うわぁ。迫力ぅ〜。ゴブリンキングだー。


 自分より何倍も大きいと、威圧感があって緊張する。ずっと戦ってたとは言っても、まだオーガ以外で自分大きくて強そうな魔物にはあったことがなかった。


 変に攻撃しようとすると、確実に返される。


 あの巨体から繰り出される攻撃は、致命傷になるかもしれないから絶対に当たらないようにしよう。




「誠司、聖也、頑張ってね。後ろから援護するから。」


「ちょっ、おまっ。お前は攻撃しないのかよ!」


「後ろからは攻撃するよ!〈水砲〉」




 私は、2人に絶対に前に出ないと宣言してから、敵が攻撃する前に攻撃を始める。


 水砲は水を大砲みたいに打ち出す魔法で、最近使えるようになったばかりの魔法だ。


 魔法は、レベルが上がると熟練度が上がったという証拠になる。今のレベルで扱える魔法の中で1番強力な魔法が、この水砲だ。聖属性や光属性は最初、支援系ばっかりだから。




 打った水砲がゴブリンキングの胸に当たる。


 衝撃はあったみたいだけど、ふらつくほど効果はなかった。




 私の先制攻撃と同時に、誠司と聖也がかけだす。前は聖也、後ろが誠司だ。


 2人とも、近接攻撃も魔法攻撃もどっちもできるから、剣に魔法を宿らせて戦う。魔法剣士みたいなことをやっていて、すごくかっこいいなと思う。




 ゴブリンキングが聖也に殴りかかる。




 聖也は魔法で強化した剣で、その攻撃を受け止める。




「〈土矢〉×3」




 その隙に、穂乃果が土矢を打ち込む。




 やっぱり穂乃果はすごい努力家と思う。空いてる時間は、訓練場の的に魔法を打って鍛えている。だから、穂乃果の魔法はクラスメイトの中でもトップクラスに強い。


 矢系の魔法は必要な熟練度がかなり高いから、どれだけ努力したかがよくわかる。


 私もまだ、矢系の魔法は使えない。使おうとしても一本だけだ。3本も同時に打つなんてできない。




 打ち込まれた土矢は、ゴブリンキングの片腕を吹き飛ばし、残った2本は腹に突き刺さる。




 片腕を飛ばされたことでバランスを崩したゴブリンキングの頭を、棍棒を受け流した聖也が飛んで突き刺す。


 


「〈水砲〉」


「おりゃぁあ!」




 そこを私の魔法と誠司の突撃で、ゴブリンキングを押し倒す。


 誠司も聖也に合流して、ゴブリンキングの心臓を刺した。


 


 ゴブリンキングはそこで死んだ。


 血を流し続けることはなく、光の粒子となって消えた。




「疲れたぁ。」


 そう誠司は言った。




「私も。」


 私も誠司の意見に同感だ。本当に疲れた。




「だけど、僕たちだけで倒せたな。」


「そうだな。」




 そうだね。私たちだけで、倒すことができたよ。すごい達成感。


 前より魔力が高くなってる気がするから、きっとレベルも上がったよ。




 でも、オーガよりも弱かった。あいつはもっと素早かったし、もっと力も強かった。


 まだまだルイくんは遠いな。まだ、ゴブリンキングで苦戦しているんだ。オーガなんてまだ殺されちゃう。




「まだ、魔力に余裕があるから、回復するね。」




 私は、前で動き回って疲れている2人に近づいて、回復魔法を使う。


 手から、白い光が出て、2人の中に入っていく。




「恵美、ありがとう。」


「回復してくれるのはものすごく助かるよ。ありがとう。」




 お礼を言ってもらえるとすごく嬉しい。


 聖也も一応聖属性の魔法が使えるけど、前で戦う分魔力消費も多いから、このパーティーの回復役は私なんだ。自分しかやることができなくて、自分がやることで誰かが助かるのはすごく嬉しい。


 感謝されると、もっと頑張りたくなるよね。




「よし、先に進んでいこう。」


「これからも、時々こんな部屋があると思う。気を引き締めていこう。」




 やっぱり誠司と聖也は元気だな。もう回復して、元気になってる。


 そうだね、気を引き締めていこう。




 私は立ち上がって、胸を張って、気合を入れ直す。




「こんな部屋があるって聖也は言ってたけど…もう目の前にあるよぉ。」


「「「えっ?」」」




 そう、穂乃果が指を向けた先には、さっきより一回り大きな扉があった。今度は橙色の扉で、つるりとしている。この橙色の扉の方が、豪華な装飾がついている。




「もしかして…これからずっとこんな感じが続くのかな?」




「まじかぁ…。」










あとがき

 現代ファンタジーの話を思いついて、書いてみました。よかったらそちらも呼んでんみてください。リンクです。

 https://kakuyomu.jp/works/16818093079483160231

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