16話 橙の扉
◆◆◆◆
私たちは、橙色の扉を開けた。
最初、ぱっと見魔物は見えなかったから、恐る恐るって感じだけど中に入っていったんだ。そしたら、中に入った途端、扉が閉まっちゃったんだよ。
誠司がすごく慌てて、扉に体当たりして、力づくで開けようとしてくれたけど、全く動かなかった。
15mくらい離れたところで、さっきみたいに地面が光った。さっきは一つだったけど、今度は3つ。
地面からは、さっき戦って倒したばっかりのゴブリンキングと、ゴブリンの魔法使い?が2匹現れた。魔法使いの方は、手下のゴブリンを3体ずつ召喚してきた。
自分たちより強い魔物とこのパーティーより多い人数で戦うのは初めてのことだ。私たちはいつ何が起こってもいいように、武器を構えて準備をする。
私たちと、ゴブリン達の間にひんやりとした空気が流れた。
ダッと誠司と聖也がかけだした瞬間、相手も同時に動き出した。
2人が手下ゴブリンを切り捨てた後、後衛だと思われる魔法使いの方に切り掛かる。
「「〈水砲〉」」
私たち2人は、近接が主体だと思われるゴブリンキングに魔法を使って前に近づけないよう足止めする。魔力を消費し続ければ、継続的に魔法を打つことができる。できないこともあるけど、足止めにはピッタリだ。
(少しずつだけど進んできちゃっているから、もう少し魔力を消費して勢いを強くしよう。
それでも魔力消費はきついし、じわじわ進んできてるから早くきて!)
◆◆◆◆
<誠司 視点>
俺と聖也は、後衛の2人に魔物が近づかないように、まずは弱い方から倒していこうとする。
魔物が現れてから、2人で真っ直ぐ魔法使いゴブリンの方へ向かっていく。途中襲ってくる手下ゴブリンはサックリと切っていく。
(感覚が狂ってきてるな。)
そう思った。生き物を殺しても、大量の血を見ても、生臭い匂いを嗅いでも、気分が悪くならなかった。
(耐性がついてきている!と思えればいいが、そう思えそうにない。
最初はあんなに気分が悪くなったんだ。だからこそおかしいと思う。こんなにすぐに慣れるものなのか?
それとも、召喚された時にスキルでもついてきたのか?言語が違うにも関わらず、言葉が通じたり、文字が書けたりするように。)
そんなことを考えながら、魔法使いゴブリンに切り掛かる。
魔法使いゴブリンは、手下を召喚したりしていたが、俺たちが近づいていくのを見ると、すぐさま魔法を打ってきた。やっぱり、魔物も魔法を使えるようだった。
俺は全力で魔法に向かって突進した。
(やっぱり思ったとおりだ。威力がものすごく低い!)
思わずニヤリと笑みをこぼした。無表情でいるつもりだったが、案外俺は戦闘狂の素質があるのかもしれない。戦うことが楽しいと感じているのだから。
スパッと魔法を切る。少しでもずれれば怪我を負うが、問題はない。
一気に踏み込んで頭から切ろうとすると、杖で防がれた。
当然防ぐだろうが、ゴブリンの方の杖はボロボロのものだ。こっちの武器の方が高性能だったため、杖はスパッと綺麗に切れた。そのまま頭を切ると、光の粒子になって崩れ始めた。
誠司はとっくに倒していたみたいで、俺が倒すのを待っていたみたいだ。
勢いをそのままにして、グルリと体の向きを変える。お互いの進むスピードを見ながら、息を合わせてゴブリンキングの背中に向かって走る。
恵美達も、水砲で足止めしてくれている。
(足止めはすごく助かるな!ずっと前を向いて防いでいるから、後ろが無防備だ!)
俺と聖也は、無防備になっているゴブリンキングの背中を切り裂いた。
ゴブリンキングは、背中が切られたことによって後ろに力が入り、前の方も無防備になった。その無防備になったところに恵美と穂乃果の魔法が直撃する。
ゴブリンキングは絶命した。
光の粒子になって崩れて天に昇っていった。
「よっしゃぁあ!2人とも足止め助かったぜ!」
「それならよかったよ。思ったより魔力を消費したから2人もあっという間に魔法使いの方を倒してくれて助かったよ。」
全員で勝利を噛み締める。
俺は戦っている中で気づいたことがある。これは絶対に痩せる。
よく食べないと、みるみるうちに体重が減っていくだろう。地球の女子は大喜びだ。もっとも、斬り合ったり殴り合ったりしても平然としていられることが条件だが。
「そろそろ何か食べようか。確か穂乃果が全員分の荷物を持ってたっけ。」
誠司がそう提案した。俺としてもすごく助かる。ちょうど腹が減ってたからな。
「うん、しっかり持ってきてるよ!どちらかというとルイに押し付けられた感じだけど。
なぜか見た目より大量に収納できるマジックバックで、しかもその中には満タンに食料が入ってて、さらに、頑張れよってメッセージと、非常時のためのポーションまで入ってるんだよ…。こっちは回復魔法を使えるのにも関わらずだよぉ。絶対に長くなるんだと思う。」
「すうぅ!」
俺は息を深く吸い込んだ。俺はあいつのことをよく知っている。あいつは念のためとか言って余計に持たせる性格じゃない。大体、ピッタリより少し多いくらいだ。そんなルイが、家族キャンプに行くくらいの食料を入れているなら、絶対に長引く要素があるんだろう。
もう、時間感覚もわからなくなっているから、何日経っているかわからない。ここが今、どのあたりなのかもわかっていないしな。
「とりあえず…食おうぜ‥。」
俺は話の流れを無理やり変えた。
◆◆◆◆
<恵美 視点>
「そろそろ行くか!」
誠司が元気よく立ち上がった。
大量にあった食べ物の話をしてから、私たちは眠った。
(地面が硬くてあまり眠れなかったけど、万が一倒れそうになったら、私が疲労を回復するから大変でも大丈夫!
あれっ?もしかして疲労を回復してどんどん進んでいったら、会社だったらめちゃくちゃブラックだよね!
しっかり休んでね!ブラックな会社みたいになっちゃうから!)
割としっかり目に寝て、魔力も体力も回復させた。
広げていた食料や食料と食料などを全てしまった。こんな量を全部しまえる鞄はすごい便利だと思う。これさえあれば、後片付けも面倒じゃないから。しっかり欲しいものを思い浮かべれば、自然と手元にやってくるし、中身を直接見て取り出すこともできるから。
「次はもう何なのかわかってるんだよねぇ〜」
「「「ハァ〜」」」
穂乃果がそれを言い始めて、その声はどんどん小さくなっていった。私と誠司と聖也は、息を合わせたように同時にため息をつく。
まあしょうがないよね。
さっき見たばっかりな気がする橙色の扉を一回り大きくした黄色い扉が目の前にあったら、ため息もつきたくなるよ。
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