11話 試練の迷宮




 俺が、クラスメイト全員に夢を見せてから2時間。全員が夢から覚めた。




「うわぁぁぁあ!だめだ。嫌だぁぁ!」


「ゾンビが1匹…ゾンビが二匹…押しつぶされる数の暴力…。」


「全員死んじゃだめだ〜ぁ!」




 かなり辛い夢や精神的にきつい夢を見ていたようで、目覚める時に叫び声を上げるものが何人かいた。クラス全員普段絶対見ないような表情をしていてかなり面白い。その顔をしている側はきついと分かっていてもどうしても笑ってしまう。




 全員の顔色が良くなった後、結界を解き元の訓練場に戻す。そしてその訓練場に巨大な魔法陣を描き始める。描き終わった後、魔法陣に軽く魔力を流し、効果を発動させる。




 すると地面が少しずつ盛り上がっていき、一つの大きな洞窟が現れた。入り口には大きな扉があり、扉の左右に松明がかけてある。


 


 これはまるで、




「「「「「「ダンジョンだ。」」」」」」




 まあ、見た目はゲームに出てくるようなダンジョンだろう。まあ、中身もダンジョンだ。名前が違うだけで。ゲーム好きのテンションがすごく上がるものだ。




「まあ、ダンジョンのようなものだが、これは、ぁぃっ…天神が次に魔王が現れた時のために用意した試練の迷宮だ。ここを制覇すると、全員にあった強力な武器が手に入ると言われている。というか手に入る。全員はここでレベル上げをしてもらう。この迷宮は死んでも外で復活するから思いっきり戦え。」




 是非ともテンションが上がった状態で敵をバッタバッタと倒し、レベルを上げて強くなってもらいたい。クラスメイトが口を開く前に迷宮の扉を開け、中へ投げ込んだ。金竜パーティー以外。




「とりあえず観察だ。さっさと強くなれ。あっ金竜パーティーはちょっと他の奴らと迷宮の中身が違うから。」


「えっ?」


「まあ、頑張れ。」




 俺は4人も迷宮の中に投げこむ。










 ◆






<恵美 視点>


 私たちは悪夢を見せられた後、休憩もなにも入れさせてもらえずにそのまま迷宮の中に放り込まれた。しっかりパーティーごとに分けられていて、私と一緒に放り込まれていたのはいつも通りの3人だった。




 ゲームをやっている時は、こんなところに私も行ってみたい!って思ってたけど、実際に来ると結構怖いな〜。




 迷宮の形は、ゴツゴツした岩でできた洞窟だ。一定の距離ごとに松明があるけど薄暗くて生ぬるい風が吹いている。




「よし。どんどん進んで制覇を目指そう!いこう。俺たちならいけるはずだ。」




 金竜が自信満々でいう。出口はしまっちゃったし行くしかないよね。




「じゃあ頑張っていこうか。」


「恵美ぃ。近くに居させて。」


「穂乃果…無理するなよ。」




 私たちは、迷宮の奥へと進んでいった。






 


 スパッという剣で相手を斬る音と、ドォンという何かが爆発した音が洞窟に響いている。






「ああぁぁあ、もう!さっきから弱い敵たくさん出てきてすごくうざい!」


「恵美…口調が変わってるぞ。」


「しょうがないでしょ!何十分もずっと同じ弱い敵が大量に襲ってきてるんだから!元はと言えば全部誠司のせいだからね!」


「それは悪かったと思っていない。」


「「・・・・・・・・・・・。」」




 今、私たちがこんな状況になってる理由はたった一つ。誠司が明らかに罠だと分かるものを何の遠慮もなく押したからだ。






 






 時は少し前まで遡る。私たちが、洞窟の奥へと進んでいる時、先に進んでいた誠司が何かを見つけた。




「おぅ〜い。ここになんかあったぞ!」




 誠司が見つけたのは、金の台座に置かれている赤いボタンだった。




「こ…これって。」


「誠司‥これはどうみても」


「「「罠だよ(な)(〜)(ねぇ〜)」」」




 赤いボタンは洞窟の雰囲気と全くあっていないすごくポップなデザインで、いかにも押してはいけないという感じだった。しかも、このボタン押すべからずって書いてあるから、100%罠だよ。押したら絶対に何か悪いことが起きる。




「金竜。これ押してみていいか?」


「君はバカなの?」




 誠司はバカなんだよ、金竜 聖也。押すなと書かれていれば押したくなって、開けるなと言われて開けちゃうのが誠司なんだよ。だからこのままだと絶対に誠司は押す。絶対に止めないと。




「誠司!絶対に押さないでね。」


「じゃあ押すな。」




 私が押すのを止めようとすると、誠司は何の遠慮もなくそのボタンを押した。




「「「・・・・・・・・・・。」」」




 誠司以外の空気が凍る。




「誠司、押すなって言ったよね。」


「言われると押したくなるだろ?」




 自分でも分かってたはずでしょ。押すなって言ったら誠司は押すし、押していいよというと遠慮なく押す。どちらにしろ押すことになっちゃうのを。




 ボタンが押されて、洞窟の壁が動き出し、揺れる。私たちは狭い岩の空間に閉じ込められてしまった。絶対にこれから何かが来る。しっかり備えないと。


 揺れがおさまった後、洞窟の壁に、たくさんの穴が空いていた。その穴から大量のネズミが飛び出してきて私たちに襲いかかってきた。私たちはネズミを倒しにかかる。ネズミはものすごく数が多くて、1回目に出てきたネズミを全部倒しそうになると、また新たなネズミが飛び出してきて、こちらを襲ってくる。




 次から次へと襲ってきて、キリがない。このままネズミを倒すのはいつまで続くのだろうか。私たちの体力も魔力もどちらも限界だ。それでも襲いかかり続けるネズミたち。








 そして、現在に戻る。大量のネズミが、こちらに襲いかかってくるようになってから20分。突然ネズミの投入が止まった。




「終わったのかな?」


「流石に疲れたよ〜。」




 と思ったら、これが最後だというように、さっきの何倍もの数のネズミが私たちに襲いかかってきた。こうなってしまった原因は誠司がボタンを見つけてしまったことだ。




「「「誠司のバカヤロォぉぉお」」」


「それは悪かったぁぁぁあ!」




 私たちの大きな声が、洞窟に響き渡った。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る