36話 混乱するものたち
「本当にびっくりした。隠れて休んでいる時にいきなりアリスさんが光の中から出てくるんだから。」
「それ私も思った!」
「俺も衝撃だった。みなみがピャァなんてよくわからない声を出したから、びっくりしてそっちに行って、そしたらアリスさんが倒れてたからな。」
「死んで復活する経験は初めてで驚いたよ。あと、こんなにはしゃいでて大丈夫なのか?」
「それは大丈夫なんです。めぐるが風の精霊に頼んで私たちの声が周りに届かないようにしているので。あとは姿が見えないように穴でも掘って隠れれば、見つかりません。」
「そうか。それなら安心だ。」
ずっと気を抜けなかった体の力を抜いて、ホッと息を吐く。
見つかりにくいなら、今までの休憩とは違ってしっかり落ち着いて休むことができるからだ。
「安心したよ。もし目が覚める前に外に出されていたらまた死んでいたからね。」
「そんなことしません!教えてもらっているのに追い出したりしたら最低じゃないですか!」
「もし追い出したら俺がそいつを追い出すぜ!」
みなみはアリスにそう言い返した。
そう言い返してくれるのがアリスは嬉しかった。自分を慕ってくれていると感じたからだ。
これがルイ様のこっちの世界にくる前のクラスメイト…。
アリーはそう考える。
ふと思ってしまったことがあった。
前世での知り合い。こっちにきた勇者の中でそのことを知っているのは、試練の迷宮に潜っている4人だけとは聞いていたが、彼ら彼女らは気づいているのだろうか。
こっちの世界に昔からいて、召喚の時点で一人いなかったことに。
クラスメイトが召喚された時から一人いなかったことに。
もしそれに気づいていたとしたら、あまりにそのことを気にしなさすぎではないか。
1度も話題にすら出していないのだ。
だからアリスもルイが言うまでは気づかなかった。
気づいていなかったとしたら、なぜ気づかない。
クラスメイト。それは勇者たちに少しだけ教えてもらっていた。同じクラスで1日過ごすものたちのことらしい。
それならなんで勇者たちは存在していたはずのクラスメイトを忘れているのだろうか。
前世と色が変わっただけの元クラスメイトが昔の英雄だと紹介されても何も思わなかったのだろうか。
ちょっと感じただけの違和感。
ちょっと引っかかっただけだ。
それなのに、そのちょっとがものすごく気になってしまう。
幸い、目の前には気になったことの中心にいる勇者がいる。
今、ここで聞いてみてもいいのではないか?
気になって、勇者たちが話すことも頭にうまく入ってこない。
気になることがあって話をうまく聞けてないなら、とりあえずその気になることを無くして仕舞えばスッキリするだろう。
だが、ルイ様が元クラスメイトだったということは言ってはいけない。彼のことを勇者たちに紹介した時、今思うと隠そうとしていることがたくさんあったんだと気づいたからだ。
多分このことだろう。
彼が言いたくないんだ。もし言うことがあるなら、本人が直接教えるだろう。
だから、クラスメイトのことをさりげなく聞こう。
「ちょっと聞きたいんだが、クラスメイト?は全部で何人いたんだ?同じ部屋で1日大人数で過ごすなら全員のことを覚えているんだろう?
私もまだ話したことすらない勇者たちも多いから少し教えて欲しいんだ。」
「クラスメイトですか?ああ、18人のかなり少ないクラスなので私は結構覚えています。」
「みなみちょっと待って!僕がやりたいな。クラスメイトの紹介!」
みなみが説明しようとして、めぐるが口を挟む。
めぐるはどうやらクラスメイトの紹介をやりたかったようだ。
「え〜っと、僕たちのクラスで特に有名だったのは今は迷宮に潜ってる金竜 聖也、赤坂 誠司。この二人はいろんな意味で目立つ存在だよ。
女の子だと青花 恵美かな。すごく美少女で、みんなに優しいんだ。あとよく一緒にいる空島 穂乃果。あの子ものんびりしてて優しくて、一緒にいて楽しくなる人なんだ。
有名なのはこの辺りまでで、ここからはクラスにいるクラスメイトみたいな感じな人だね。それは僕を含めても。
え〜と、とりあえず全員の名前を出します!
桜 みなみと桜 ひな。あっこの二人は双子姉妹って意味で有名だったっけ。
今ここにいる残ってるのが、僕、紫音 めぐると大黒 淳。
他には一気に行くけど、
翠原 恒星
石乃橋 沙耶香
黒部 千
灰羽 流瑠花
太陽 勇気
干柿 火花
茶畑 護
十色織 シャルル
草瀬 葉
あと1人は、あと1人…。あれ?」
「やっぱりあと1人のことは覚えていないのか?」
「はい…。あと1人いるはずなんです。すごく目立ってて印象に残ってるはずなんですけど思い出せない。みんな何か覚えてない?」
「ちょっと待ってめぐる。確かに1人いたはずだよ。いつも恵美と誠司と聖也に穂乃果、みんなと仲が良くて特に、恵美と誠司と仲がよかったクラスメイト…。」
「おい待て!なんでこんな気に入らないクラスメイトを忘れてたんだよ!」
「名前は!僕、あと少しのところまで出かかってるんだ。白……。」
「「「白鳥 涙!」」」
「そうだあいつのことだ。なんで今まで忘れてたんだよ!」
「私、こっちにきてから1回も話してないかも。顔すら合わせてない。」
みなみがそう慌てていっている。
「それは僕もだよ!」「俺もだ。会ってすらいないぜ。」
「今まであいつはどこに…いやそもそもこっちに召喚されているのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます