18話 黄色の扉 ー対策と再挑戦ー




 私たちはさっき全員、虫に押し潰されて死んだ。数えきれないほどの虫がいて、部屋を埋め尽くしていた。

 前の扉の部屋で復活することができたけど、どうやら部屋も活動するようになったみたいで、さっき倒したばかりのゴブリンキングたちまで復活していた。

 とりあえず、さっきの手順でサクッと倒しておく。レベルも上がったおかげで、前回より楽に倒すことができた。


「で、どうする?先に進むためのアイデアがあるなら何か出してくれ。」


 聖也が丸投げしてきた。だけど、そんなにすぐに思いつかないよ。一度にあの数を倒す方法でしょ。

 穂乃果はずっと下方向を向いて黙っているからまだ考えがまとまっていないのかもしれない…いや…穂乃果はすっごく虫嫌いだから大量の虫を目の前で見て固まってるだけかもしれない。


「虫…虫がいっぱい。服の上に止まってきた。虫…虫‥虫……」


 やっぱり、何かアイデアを考えていたんじゃなくて、虫の恐怖でかたまってただけだった。まあ、あんなに大量の虫が自分に集まってくるなんて恐怖としか言えないもの。特に虫の裏側、すごく細かくて…あれ?あまり覚えていないかな。


「ちょっといいか?」

「ああ、いいぞ。」


 悩んでいた時、誠司が手を挙げた。意見を出してくれるのだろう。だけど、それに挑戦するためにはもう一度、虫の中に入っていかないといけない。

 だから、なるべく少ない回数で次の扉を潜りたい。


「全員気づいてたと思うけど、今までの扉ってボスを倒すまで南京錠で閉められてたんだ。だけど、今回黄色の扉では、奥の緑の扉に鍵がかかってなかった。

 だから、もしかしたら奥の扉はボスを倒しきらなくても開くかもしれない。」


「「「・・・・・・・・・・・・・」」」


「あれえ?急に黙ってどうした?」


「いや…誠司ってこういう時にすごく頼りになるなって思った。気づいていると思うって言われたけど、俺は気づかなかった。」

「私、全然気が付いてなかったよ。よく気づいたね。」

「ぅん。いけそうなら、早めに進みたい。」


「そうか、気づかれてなかったか。」


 誠司は大雑把に見えて、意外と周りをよく見てる。注意力もあるから、みんなが気づかない些細なことでも気づく。

 聖也が気づいてくれたおかげで、周りがものすごく助かることも多い。今だって、聖也以外誰もそのことに気が付いていなかったから。

 だけど、気になったことになんでも向かっていくから、周りがよく見えることが逆に悪い方向に向かうこともある。


「よし!とりあえず奥の扉を目指してみよう。黄色の扉の奥がどうなってるかは入ってみないと分からないけど、とにかく全力で奥を目指す!」


 聖也が黄色の扉を開ける。

 

「いくぞ!」


 私たちは一斉に奥に向かって駆け出す。

 部屋の中はさっき出てきたばかりの虫で埋め尽くされていた。


「ヒィッ!虫は見たくない!」


 穂乃果が手で顔を隠してしゃがみ込んだ。


 どうしよう。扉の中に入ったら入ってきた扉は閉まっちゃう。しまった途端、虫が襲ってくる。

 穂乃果が怖がって虫に近づけなくなったら困る。


 私は、奥に向かうのを一回やめて、穂乃果に駆け寄る。


「穂乃果、目を瞑って!私が引っ張るから。」


 穂乃果の腕を掴んで、無理やりだけど立たせる。そのまま引っ張る。


 無理やり引っ張ってごめんね。目を瞑ってもどっちにしろ怖いよね!どこから襲われるか分からないから。

 大丈夫だよ!私が絶対に穂乃果を守り切るから!


 扉が閉まった。


 私たちを見つけた虫たちが一斉に襲いかかってくる。私と穂乃果にも飛びかかってくる。

 私は、魔力で壁を作って防ぎながら、魔法で虫を吹き飛ばす。


 2人で先に進んでいく。


 誠司と聖也が、私たちに襲いかかってくる虫がなるべく減るように、周りで倒してくれている。


 火属性ってこういう時にすごく役に立つなぁ。たくさんいると、ものすごく燃え広がるもの。私は火属性は持ってないから羨ましい。


 周りの虫たちが燃える。聖也がさらに燃え広がるように樹属性を使ってる。


 地球では絶対やったらいけないことだな。放火魔になっちゃう。でも、今それをやってくれるのはすごく助かる。


 私は、火を消してしまわないように光魔法を使って虫を焼いていく。灰も残らず燃え尽きるから光の力はすごいと思う。



 本当にキリがない。どうしよう。倒すのが追いつかなくなってきた。

 誠司と聖也の体力もそこまで続かないし。


「恵美!私が扉まで全部焼くよ!私は魔力をほとんど使ってないからそれを全部使う。」


 穂乃果が私に声をかけてきた。後ろを向いて穂乃果を見ると、穂乃果は目を開けていた。


「大丈夫なの?」

「大丈夫!…じゃないけど、頑張る。」


 穂乃果は手を前に出して、魔法名を唱えた。


「《火砲》」


 勢いよく、火の大砲が前に飛び出した。それはとても大きくて太い火で、前にいる虫と周りにいる虫まで全て焼き払った。

 扉までの道が開ける。私たち4人はそこを進んでいく。


 私は、緑色の扉に手を伸ばす。


 扉が開く。扉から真っ白な光が漏れてきた。


 誠司が言った通り、この扉は中にいる魔物を倒しきっていなくても開いた。


「あああああああああ!」


 全員で扉の中に飛び込んだ。


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