6話 再会の時







「防音結界を張った。これで誰にも聞かれない。思いっきり体を動かして殴り合っても誰にもバレることはない。」




 私と誠司は、ルイさんの部屋に来た。部屋に来た時ルイさんは防音結界を張っていた。何を話そうとしてるんだろう。結界を張るほど聞かれたくないこと。




 ルイさんは準備が終わったのか椅子に座ってこちらをじっと見る。私と誠司も用意されていた椅子に座った。






 私たちも真剣な表情でルイさんを見ると、彼は突然表情を崩した。




「ああぁぁぁあ。永かった。3000年以上努力したんだ。頑張った甲斐があったよ。」




 突然、彼が普段言わないようなことを言い出した。私も誠司も唖然としている。




「えっと、ルイさんどうしたんですか?」




 誠司も衝撃で挙動がおかしくなっている。




「ああもう。敬語ももうやめてくれ。めんどくさいし敬語を使われるとかむず痒すぎる。」


「えっ?」


「急にどうした?お前。」


「適応するの早いな…。」




 今、ルイさんはなんて言った?彼は同学年と確かに言った。これはどういうこと?




「ああもう、気づいてくれると思ってイメージ変えてわざと黙ってたんだ。俺の時間を無駄にさせるな。」




 私の中でルイさんのイメージが変わっていく。




「どうしたんだいルイさんや。敬語はやめたじゃない。それともま〜た敬語で話して欲しいのか?」


「やめろ。絡んでくるな。とりあえず投げ飛ばす。」


「おい!やめろ。俺のレベルじゃ大怪我どころじゃすまぎゃあああーーー」




 誠司が投げ飛ばされて壁にぶつかる。




 私はなんだかこの光景を見たことがある。あれは中学に入ったばかりの頃。






 ◆






 あの頃はまだ誠司と私とるいくんの関係は、誠司はただの同じクラスの生徒、私とるいくんは幼馴染という感じだった。




 誠司はある時から突然、るいくんに絡んだり、いたずらをしたり、一緒についてまわるようになった。


私は、なんで誠司がるいくんと関わり始めたかは分からなかった。だけどるいくんは誠司が絡んでくるのを結構楽しんでたのかな?




「なな!涙さんや。恵美ちゃんとはまだ付き合わないのか?」


「やめろ。」


「なあなあ聞かせてくれよ。俺とお前の中だろ?」


「俺の中ではお前はただのクラスメイトだ。」


「教えてくれてもいいだろ〜」




「いい加減にしろ。」




「ふぎゃ!」




 誠司がるいくんに投げられる。るいくんのあのほっそい体のどこにあんなに強い力があるのかなって思う時もあった。






 ◆






 誠司がるいくんに投げられた時の記憶と今の状況が自然と重なる。まあルイさんは名前が同じなだけなだけだけど。




「なんでルイさんにるいくんが重なるの?」




 私は1人つぶやく。






「はあ、もうお前も気づいてるんだろ?面白がって分からないふりをするのをやめろよ。誠司。」


「へへ。やっぱりバレてたか。る〜い!」




 何故かルイさんと誠司が仲良くなっている。あの人はルイさんじゃない。




「るいくん…。」




 私は無意識にそう言っていた。誠司も嬉しそうな表情をする。




「や〜っと気づいたか。まあだいぶ雰囲気は変わってると思うけどな。久しぶりだな恵美。」




 るいくんは、私の顔を見てニカっと笑った。るいくんがこの表情をする時は、本当に嬉しい時だけだ。


私の心臓がキュッとして目からじわりと涙が溢れてきた。




「るいくんのバカ。なんで言ってくれなかったの?」




 私は泣きながらるいくんに聞く。




「異世界召喚で転生したって言ったらお前は笑うだろ。」


「当たり前でしょ。」






































<ルイ 視点>主人公だよ?




 俺は涙。今はルイ=ヴァイスだけど。転生してから本当に色々あった。自分がなんか人族やめちゃってたり、神々がめちゃくちゃ争ってたり、強くならないと死にそうな世界だったり、まだ勇者召喚が存在していなかったり。




 俺はずっと誠司と恵美が地球からこちらの世界に召喚される時を探していた。どこで召喚されるかも探していた。勇者召喚の知識が天神から人族に与えられた後、俺は勇者召喚の兆候を探し続けていた。




 最近、俺はついに勇者が召喚されるという情報を得た。少し準備をしてから、動き始めようと思う。




 


 危なかった。やっと、恵美と誠司を見つけたと思ったら、オーガが襲いかかっていて2人は死にかけていたんだ。まだ、致命状じゃなくてよかった。これぐらいなら簡単に治せるから。




 今日は野営することになりそうだから、俺は肉を調達しに行った。




 ささっと肉を確保してから戻ってくると、恵美が起きていた。




「あっ。やっと起きた?よかった。」




 あの時のことがトラウマにならなくてよかった。精神的なダメージは、治すことができないから。






 ◆






 これは、ルイがこの国の王と話をしたいと言った時の話。




「防音結界よし。映像よし。見張りはいない。よし!」


「そんなに誰にも聞かれたくない話なのか?」


「俺が直接話に来て誰かに聞いてほしい話をするわけがないだろう。」


「そうか。まあ…そうだな。」




 俺は王を黙らせて、話したかった要件を伝える。






 ◆






「ねえ、るいくんに何があったの?異世界から召喚された時に何があったの?」




 俺は、恵美にそう訊かれた。でもだめだ。まだ、誰かに全てを教えるのはまだ早い。


 この話をしてしまうと、今まで伝わってきた世界の歴史は偽りだということが嫌でもわかってしまう。




 恵美と誠司とその友人とそのほかのもの。クラスメイトたちは、魔王を倒すために勇者として異世界に理不尽に召喚されたという。なら、それに関してだけ伝えるか。これだけなら多分バレない。バレたとしても面白がって許容してくれるだろう。




 俺は恵美と誠司をまっすぐ見る。




「恵美、誠司。クラスメイトに黒翼の天人族は最後のクラスメイトだとは絶対に言わないでほしい。その代わり、これだけは絶対に金竜に伝えて、クラスメイトに広げてもらってくれ。」




 俺はまだ、全てを話さない。だが真実を一つだけ伝える。




「お前ら勇者の敵は魔王だけじゃないからな。」


「えっ?」


「おい、ルイ。それはどういうことだよ?」






 ◆








「国王。今、俺がお前に伝えておきたいのは、人族が危機に陥っている原因が魔王だけではないということだ。この話は、この後勇者にも伝える。話は以上だ。」




 ルイはそう言って話していた部屋を出た。




「魔王だけじゃないと言うのはどう言うことだ?黒翼の天人族ルイよ。」




 部屋に1人残された国王は、騎士のものが迎えにくるまで1人でその言葉について考え続けた。






 ◆






「話はこれで終わりだ。そろそろ防音結界を切る。切る前に早く出ていってくれ。その後絶対にさっきの話を金竜と穂乃果に伝えろ。俺の正体についても話して問題ない。」




 俺はあえて冷ややかに突き放すように軽く威圧もしながら2人に言う。




「そのほかの人には伝えちゃダメなの?」


 


 恵美にそう聞かれた。でもダメだ。これはお前らのパーティーだけで知っていてほしい。これ以上話すことはしないが少し威圧を強める。






「そう。るいくん。わかったよおやすみ。」


「おう。お前も無理すんなよ。」




 2人は部屋を出ていった。恵美は何かを察してくれたのか話を切り上げて出てきてくれた。俺はずっとかけ続けていた幻魔法結界・・・・・と防音結界・・・・をきる。




「はあっ、はあっ。ギリギリだったな。かなり危なかった。気づかれてないといいがな。」




 俺は疲弊した体を無理やり動かし、ベットに入り込んだ。


 俺はあっという間に眠りにつくことができた。






 ◆






ーあら。ダメじゃない。真実を話そうとしちゃあ。まあ今回は見逃してあげるわ。勇者に伝えたのは真実に辿り着くためのヒントの一つだけだもの。私って優しいわ。




ーだまれ。さっさと出ていけ。




ーあらひどいわ。あなたは私の大事な大事な子供だもの。




ー利用しやすい道具だろ。お前のその言葉は。相変わらずクソ野郎だな。次に会う時はお前の顔はおばさんだ。




ーあら?いいのかしら。さっき話そうとしたことはまだいいけど、今のはダメよ。今謝っても許すつもりはないわよ。あなたは私の子なのだから。親の私がしっかり躾するわ。










 突如、世界が黒く染まる。それは、自然とルイの意識を覚醒させた。




「ツッ、はあっ。ふうっ。」




 俺は、ガバッと飛び起きる。自分でも驚くぐらい冷や汗をかいていた。もう朝になっているようだ。




 俺は自分の頭と背中がズキズキと痛むことを確認する。そして枕をボスッと殴る。枕の中身が飛んでいったので直しておく。




「あのババア。またやりやがった。」




 そのセリフを言った時俺は、びっくりするぐらい怖い顔をしていたと思う。殺気もすごく漏れていたはずだ。


 後で確認したら、部屋に亀裂が入っていたからな。バレないうちに慌てて修復した。















あとがき

 まだまだ話は続いていきます。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る