24話 フローズンスネーク
蛇と相対してからすぐに私は鑑定をかける。みることができないとかはならなかったけど、やっぱりかなり強い。レベルが低くても油断したらいけない。あと、最近は鑑定をかけるのが習慣になってきてる。だけど、鑑定だけに頼りすぎずに自分の目で見て考えることもしておかないとね。
「あのおっきい蛇。鑑定してみたけどすごいね。島に来てからもまたレベルが上がったから、ステータスもほとんど見られたけど見てからびっくりしたよ。やっぱり魔物は強ければ強いほど、レベルは低めなのにステータスが高い。」
「で、あの蛇の正式な名前は?」
「フローズンスネークだって。やっぱり魔物ってそのまんますぎる名前が多いね。属性は氷で、多分火属性魔法と雷属性がよく効くと思う。」
「じゃあ、恵美がサポートに回って、他全員が攻撃だな。」
「頑張ってね。」
「「了解。」」
「頑張るよ。恵美ちゃん。」
素早く作戦を立てて、行動を始める。氷だから、魔法は火属性と雷属性がよくきく。
私はどちらも持ってないから、サポートに徹する。まあ、その二つの属性どちらかを持っていたとしてもきっとサポートにまわると思うけどね。
誠司、聖也、は前に出て剣に属性を纏わせる。いつの間にそんなことできるようになったんだなって思う。だって、空色の扉を開ける前はそんなことできなかったから。前は属性魔法を剣と合わせて飛ばしている感じだったから、今の方がかなり扱いやすくなってると思う。
どんどん成長していてすごいなぁ。このままじゃあ置いてかれちゃうよ。
ーヒュッ
「〈火球〉」
2人が剣を振って蛇に攻撃をした時、同時に穂乃果も攻撃を仕掛ける。
遠くからの攻撃と近くからの攻撃二つ、蛇は一つだけを防ぎ、その他二つにあたる。合計で三つの攻撃が飛んできているから、全てを防ぎ切るのは両手があったとしても難しいだろう。
攻撃に当たった蛇は、口から何かを吐き出して近くにいた誠司と聖也に攻撃をした。それが体にかかってしまった2人は、ふらりと体勢を崩す。かかったものは毒だった。
それに気付いた私は、すぐに光魔法と聖魔法二つを順番にかけて2人を回復させる。ついでに切れかかっていた体力も回復させる。体力が回復すれば、またすぐに尽きてしまうけど一時的に全力で叩くことができるから。
「〈炎柱〉」
フローズンスネークの真下から現れたその魔法はどぉっと空へと昇る。これは穂乃果が放ったものだ。
「〈火球〉」
穂乃果は、誠司と聖也に負けないよう次々と魔法を放つ。前よりも、魔法を発動するスピードが速くなっていて、もうすぐ二つ同時に扱えそうらしい。魔力は穂乃果に私が少しずつ渡していってるから今の時点では魔力切れの心配はない。私は、回復と避け切れなさそうな攻撃を防いだりするくらいだから魔力に余裕があるんだ。全員の様子をよく見て、魔力切れにだけは絶対にならないように注意している。
フローズンスネークの体が、私たちの火にあたって少しずつ溶けてきていた。氷の地面にポタポタと水が流れてきている。
「このまま溶かし切るぞ!」
「恵美!ちょっと回復してほしい。」
「了解。」
このままこっちが溶かし切っていく。できると思った。
「3人とも、気をつけて!」
溶かせると思った時に、自分たちの周りの空気が凍った。フローズンスネークの溶けたところも凍りついている。だけど、元の時みたいにしっかり硬い鱗があったりはしない。ツルツルとした氷だ。私たちも凍っている。このまま放っておくと、冷え切って死ぬ。
「みんな、大丈夫だよ。」
そう穂乃果は言った。穂乃果はさっき気をつけてと言っていたから気付いてたんだと思う。守り切れないと気付いたから自分が助かるように防御をした。だから、今は穂乃果だけが動ける状態だ。
「私があいつを溶かすから。」
そう言った後、穂乃果は魔力を練り上げ貯める。貯めて貯めて、増やして、練り上げて、どんどん大きくしていく。まだ発動していないのに、目に見えるくらい濃い魔力で、どれほどの魔法を打とうとしているのかがわかる。
「全部もえろ〈業火〉!」
ーあたり全てが燃えた。一瞬で冷たかった空気が暑くなった。冷え切っていた空気が一気に熱されたことで、大きな爆発を引き起こした。温泉の近くみたいに煙がどんどん増え、あたりを包んでいく。その間ずっと、ゴーゴーといいう音が聞こえていた。
「穂乃果!どこにいるの?」
穂乃果のおかげで動けるようになった私は、すぐに穂乃果を探す。穂乃果は最初から私の近くにいたから意外とすぐに見つかった。
「あっ、恵美!無茶しちゃってごめんね。熱くなかった?」
そう横になりながら呑気にそう言っている穂乃果に私は抱きついた。
「心配したからね。今回復するから、もう無茶はやんないでね。」
「絶対にやらないとは言えないかな。全員が無茶しないで魔物を倒せるようになるまではね。」
「でも、できるだけやらないでね。」
穂乃果にはもう無茶なんてやってほしくない。こうやって大きな魔法を使って倒れてほしくない。枯渇している魔力を私の魔力を移して回復させる。これで、倒れるくらいの気分の悪さは改善されるはず。
「穂乃果。支えれば立てる?」
「うん、平気だよ。」
穂乃果は寄りかかりながらも立ち上がった。
「被害がすごいねぇ。キラキラしてて綺麗だった森が消し飛んだよ。ほとんど水になっちゃった。」
「あはは、燃やしたのは穂乃果なんだけどね。」
「それは言わないでよ。」
「おーい。恵美〜、穂乃果〜?」
「あっ、誠司、聖也。こっち!」
誠司と聖也は私たちを見つけたみたいでこちらの方に向かってくる。私たちは無事に合流した。
「フローズンスネーク、どろっどろに溶けてたぞ。あれじゃあフローズンスネークじゃなくてメルトスネークだな。」
「メルトってどういう意味?」
「それは英語で(加熱されて)溶ける、融解するっていう意味だ。」
「なんでそんなこと知っているんだ。誠司…」
聖也、私もそう思う。そう思っているのは1人じゃないよ。多分穂乃果もおんなじことを考えてるから。なんで誠司ってこういう時なんか色々知ってるんだろうって。
「しっかり溶かせててよかった。」
「すごい威力だったな。」
「穂乃果のおかげで次の部屋に行けるよ!」
「扉を探そう!って言おうとしたけど…」
「目の前にあるね。」
私たちが通るべき扉は、探す前に目の前に現れた。
「だけどこの色はどう見ても…」
「紫だよね。」
私の言葉に穂乃果が続ける。
「やっぱりそうだよね!私の目がおかしくなったとかじゃないよね。」
「おおかしくないよ。鑑定してもしっかり紫色の扉って書かれてるもん。」
「お前ら2人とも落ち着け!」
「「逆に2人はなんでそんなに冷静なの!」」
私と穂乃果が落ち着くまで15分くらいかかった。
落ち着いた後、改めて扉を見る。どう見ても紫色の扉だ。鑑定を使わなくても、これはどう見ても紫。
「まあ、青じゃなくて紫でも結局は先に進むことは変わらないんだけどね。」
「うん、行こう…。」
虹の色は外から赤、橙、黄、緑、青、紺、紫だ。赤から始まって紫で終わる。もしかしたら誠司が予想した通り、最後の部屋なのかもしれない。最後の部屋なら、1番大変なもののはず。
気を引き締めていこう。
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