33話 墓参りからの
「久しぶり。天人族で1番の若者が会いにきたぞ〜。」
そう言いながら俺がやってきたのは、たくさんの色が溢れている花畑…に建てられている大量の墓のところだ。
ここからの景色は、何度も見にきたいくらいに綺麗だから仲間も喜ぶだろう。俺はそう思って、戦争で死んだ仲間の墓をここに建てることにした。どこに建てればいいかわからなくてリントに聞いたのがここになったきっかけだ。ここに墓を建てている頃はまだリントも元気だった。
ここに大量の墓があるのを知ってる人がいても、ここがずっと昔に起きた戦争で死んだ人たちの墓だということは俺しか知らない。
いや…俺以外にも1人いるな。生きている…と言っていいのかはわからないがこっちの世界の姉がいる。確か538歳差の。もう生きている年数が姉の歳を超えた。
姉は元気だろうか。元気といえば元気だが、きっとまえが元気すぎたせいで今大人しくなりすぎているのかもしれない。今までずっと迷宮の中で過ごし続けた……人だからな。ずっと人と全く会わない環境で過ごしてきているだろうから、4人と出会ったらものすごくハイテンションになるだろう。
もし、4人が迷宮から出てくる時そこに姉がついてきてたら、久しぶりに話したりすることもできるかもしれない。
その時は姉もここに連れてこよう。今度はゆっくり休んでもらうために。
俺はその時に言ってやるんだ。長い間お疲れ様って。
それだけじゃなくてもっとたくさんいろんなことを。
◆◆◆◆
「ただいま。まだ勇者たちって出てきてない?」
「あっお帰りなさい。勇者たちはまだ出てきてないですよ。」
あれ?おかしいな。
俺はアイリス王国から海辺の街に寄り道して、そのあと魔大陸に行ったあと、大戦の跡地に行って戻ってきたんだけどそれだけ時間があればレベル50くらい簡単に超えられるはずなのに。
だって迷宮の中にはレベル50を超える魔物を大量に配置してるから。迷宮の中の魔物は、外で倒しきれなさそうだったから勇者の特訓用に入れたやつだし、共食いがあったとしてもかなりの数を入れてるしかなり広いから数がなくなることなんてあり得ない。なんなら俺が魔大陸に行った時に少しだけ強い魔物を追加してるし、これだけすればあっという間に50は超えるはずなんだけど。
「…そう。そういえば、俺がいない間に何かあったりした?一部の騎士の人が怯えてるんだけど…。」
「ああ、それはですね、時折迷宮から魔物の唸り声と共に聞こえてくる叫び声に怯えているんですよ。
恐怖のどん底に落とされた時に出した自分の声にそっくりだと言って騎士たちがビビっているんです。」
「そっそうなの?」
叫び声か…。恐怖のどん底に落とされた時のような恐ろしい声…。そんなものはないと思うけど。だって、本当に恐怖のどん底に落とされた時って声は全く出なくなるから。実際に死にかけた時、声なんて出そうとしても全然出せなかったし、まだ声が出るなら恐怖のどん底じゃないんだよ。
『ギャァァァァァァァァァァァァァァァ____』
『キャァァァァァァァァァァ_________』
「ヒィッ」「もう嫌だー」
今聞こえてきた悲鳴も叫び声もまだ元気がいい。これだけ叫ぶことができるなら、今襲ってきている魔物も倒すことができるだろう。叫んでいるエネルギーを使って全力でやりあえば倒せない相手じゃない。
俺も叫んでた頃が懐かしいよ。叫んでいるうちはまだ戦えるとか言って魔物の群れに放り込まれたりしたあの頃のことが。
小さい時はまだ魔物とも戦い慣れてなかったし、転生前は戦ったことすらなかったから、怯えて叫んでばっかだったんだ。
魔物をある程度倒せるようになったら、今度は盗賊と戦わせたり、模擬戦で死にかけさせられたり、本当に大変だった。気づいたら俺も、叫んでいられるならまだ戦える!とかいう考え方になった。
まあ、昔のこともはっきり覚えてるから、自分が叫んで逃げ回ってきていたことも忘れていない。だから、この迷宮は死なないように設定して、死んだら復活できるようにしたんだ。だけど、生き返る場所はランダムで、魔物がいない場所に復活とか都合のいいことはできない。死んだ後、その死んだ場所で復活することも結構ある。だからさらにビビって叫ぶ人も増える。
俺の気持ちを理解しろ!みたいな感じでこんな迷宮にしたんじゃないんだ。こうなったら便利だなと思って作ったものが本当に大変なことになっただけで、クラスメイトが魔物に襲われ続けて怯えて欲しいとかそんなことを考えていたわけじゃない。昔、俺を好き勝手言った仕返しだ!とかそんなことを考えていたわけじゃない。そんなことは絶対にない。昔の嫌なことを今更掘り返して、その恨みをぶつけているとかそんなことを考えていたわけでもないんだ。
「えっと。ルイ様?何を言ってるんですか?」
「えっ!?……もしかして、全部口に出てたりした?」
もしかして今考えてたこと全部聞こえてたりしたのか?
「はい…。聞いてしまって、すみません。聞こえてしまったもので。」
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