39話 涙とルイ




「まあ一言で言うと、お前たちが言う白鳥 涙という人物にあったことはある。」


「本当ですか?どこで、どんなきっかけで?これから会うことってできますか?」


 みなみがアリスの方にズイズイとちかづいて聞いてくる。

 あまりの勢いに少し驚いて後ろに引いてしまう。


「待て。待ってくれ。あったことはある。まああるんだが…今どこにいるかを聞くと少しばかり次に彼に会うときに気まずくなると思うんだ。それでもかまわないならいいが…」

「構いません。」「構わないよ!」「かまわない。」


 一言でズバッと言ったが本当に構わないのだろうか。

 最初はそう思っていても後から聞かなければよかったと後悔することは山ほどあるのだから。


「ならいいか。…よくはないが。

 彼は今、勇者たちと一緒に王城で暮らしているよ。」


「「えぇ!」」「なんだって!」


「じゃあ僕たちもあったことがあるの!?」


「もちろんあるさ。彼もなんで気づいてくれないのかってショックを受けてたよ。

 顔立ちや身長とかはほとんど同じで、髪と目の色が変わったり余計なパーツがくっついたりしただけなのにってさ。」


「アリスさん。俺、今話を聞いて思ったんだが、あいつ転生したとか言っていなかったか?」


 転生。なんで淳がそれに気づいた。

 

「地球という世界で転生というのは当たり前に存在するものなのか?」

「いやいやそんなんじゃない。小説で有名なだけだ。異世界で転生するとか異世界に転移するとか。」


 物語でよくあるのが転生と転移なのか。

 向こうの世界のことをさらに1つ知ることができた。


「なんでその考えになったんだ?」


「単純な理由だけどさ、色が変わったり余計なパーツがついたりしたクラスメイトはいないだろ?だから1人色が変わったり余計なパーツがついてるあいつは勇者とはちょっと違う感じなんじゃねえかって思ったんだ。」


 ちょっと召喚された勇者たち鋭い人ばかりじゃないかとアリスは思った。

 何かに気づくのがものすごく早い。

 だから説明するのもものすごく楽だ。


「ああそうだな。あいつは転生したといっていた。ちょっと特殊な転生だったみたいだけどな。」


「やっぱりそうか。で、あいつはなんて名前のやつに転生したんだ?

 なんとなく予想はついてるけどよ。」


「彼、白鳥 涙は今___「言わなくていいです。」」


 みなみが止めた。


「彼には私たちが自分で聞きます。転生した白鳥 涙が誰なのか私たちは知っていますから。」


「みなみ!?僕は分かってないよ!?」

「教えるから後にして。」


「本当に教えなくていいのか?」


「大丈夫です。クラスメイト全員で彼に聞こうとおもいます。」


「それなら私は言わないことにするよ。」



 ◆◆◆◆



<ルイ 視点>


 迷宮の中に放り込んだ元クラスメイトも、その後に放り込んだアリスと騎士たちも全然外に出てこない。 

 きっともうすぐ出てくるはずだけど、待ってる間俺はものすごく暇だ。


「あっやっと1組出てきたかな?

 この感じだとクラスメイト全員?

 割と広く作ったはずなのにどうやって全員合流したんだよ…。」


 クラスメイトが全員迷宮から出てきた感じがしたので、急いで迷宮があった場所に向かう。


「やっと外に出てきた〜!」

「お疲れ様。」

「頑張ったな。」

「というよりこの迷宮きつすぎだろ!なんだよあの敵の強さは!新人がラスボスに挑むような感じだぞ!あんなの倒せねぇよ!!」

「出られたし結果的に強くなったからいいじゃない。」

「ずっと後ろで支援してた君は羨ましいね。僕は魔力切れで大変だったのに。」


 全員ボロボロだし、お互いの悪口を言い合ってるけど、中はものすごく成長しているのがわかる。

 だってこの迷宮はレベル50以上になって外に出たいと願わないと出られない仕組みの迷宮だから。元クラスメイトは確実に成長している。

 すごく頑張ったんだろうな。

 謎解きとかも入れてたことがあったから頭もたくさん使ったはずだ。


 アリスも出てきている。

 せっかくだから声でもかけようかな?


「アリス、いきなり迷宮に放り込んだりしてごめんね。お疲れ様。」


「ルイ様…突然こういうことをするのはもうやめてください…。」


「悪かったよ。流石にふざけすぎた。」


 流石に悪かったと思っている。

 

「今度は事前に言ってから放り込むことにするよ。許可を取れば問題ないだろ。」


「そういうことじゃないです。」


 そういうことじゃないのか…。

 じゃあどうやって勇者や騎士、魔法使いを迷宮の中に放り込めばよかったのか…。


「そもそも放り込むのをやめてください。」

 

 迷宮の中に放り込んだらダメなのか?

 それは初めて知った。

 迷宮は、強くない人がいたら迷わず放り込んでもいい場所じゃないのか?

 どちらにしろ死なないのに…。



「ルイさん。いえ白鳥 涙さんであっていますか?」


 みなみがこちらにきて話しかけてきた。

 アリスが今俺から距離をとった理由もこれを聞くためか?

 全員が同時に外に出てきた理由もこれを聞くためなのか?

 

 今まで誰にも気づかれなかったから油断してたのか?

 まあ、なんで今まで外見がほとんど変わってないのにバレてなかったのか自分でも疑問だったし今更バレても別に困ることはなう。困ることはない…多分。

 

 いや、困ることはあるな。

 バレるとなんか気まずくなる。それに自分だけで動きづらくなる。今まで以上に情報提供を求められるだろう。

 昔同じクラスだったからという理由だけで。


 でも誤魔化せる気がしない。

 誤魔化しても無理だろうな。アリスが話しちゃったはずだし。

 もうバレてもいいか。勇者との関係がものすごく悪くなるだけだし。

 

「うん。そうだね。確かに白鳥 涙だったよ。」


「なんで教えてくれなかったんですか?」


「教える意味あった?今までさ、ほとんど関わってきていないクラスメイトにわざわざ会いにくることなんてないよ。」




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