第28話キスマークの代償



食事に誘われて、期待に胸と〇〇を膨らませて佐藤さんのお部屋にやってきた俺は、食事の終わりにソファの上で佐藤さんにキスしていた。


俺たちは長くキスをして、ちょっと離れた。

俺の目線の先には、ベッドルームのドアが見える。


ここはもう、行くしかない。


どういう風にしよう…俺は段取りを考える。


俺たちはしばらく、ソファで抱き合っていた。


彼女も抵抗しないんだから、これはもう、やっぱりそういうことなのだな。


据え膳食わぬは男の恥と言う言葉もあるし、ここは、覚悟を決めて、彼女をいただこう。

今夜のデザートは彼女だ。(一度言ってみたかった。)



俺は高速に頭を回転させて、そういう結論を出す。


まぁ、この回転は、酒でちょっと曲がっていたかもしれないが。


「あっちへ行きましょう。」」

俺がそう言うと、彼女は小さくうなずいた。


、俺は彼女をお姫様抱っこし、立ち上がる。


これでぎっくり腰にでもなったら大笑いだな。と思った。


彼女は華奢なので、何とか俺の腰は大丈夫だった。俺は彼女を抱きかかえて、ベッドルームに行く。寝室の戸は押すと開いた。間取りは、俺の部屋と左右対称になっている。


ベッドルームの中には、シンプルなセミダブルのベッドがあった。


大きな枕がある。

ベッドの上の掛け布団は、ベッドに入りやすいようにめくられていた。

シーツはきっちりと伸びている。


やはり彼女もその気だったのだろう。俺は確信した。


俺は、彼女をベッドに横たわらせ、ブラウスのボタンに手をかけた、そこで俺は、彼女が少し震えているのに気づいた。


俺は優しく、彼女にもう一度キスをする。

キスは優しいが、俺の体の一部は臨戦態勢でイキっている。


先に、俺が上半身を脱ごう、その方が、彼女も、脱がされやすいだろう。


なんとなく、そう思い、俺は、ポロシャツをめくって、脱ごうとした。


その時だった。






「いや!」




彼女の声がしたと思うと、俺は、彼女に両手で思い切り押し出され、ベッドから下に落とされた。


カーペットに落ちたため、特にどこもたいした痛みはなかった。だが、あまりに予想外だ。今更なぜ?


俺が混乱していると、彼女が叫ぶ。


「キスしてた時も、ほかの女性のことを考えていたでしょう! 他の女の人を抱いたばっかりの体で、私に触れないで!!」


彼女は、ベッドの中で、俺に背中を向けた。

彼女の体が小さく震えている。、


え?よく意味がわからない、

確かに、さっきキスしたとき、みさきと練習しておいてよかった、と思ったが、それがバレたのか?


そこで俺はふと自分の姿に気づいた。

ポロシャツをめくり上げたため、胸元に、まだ消えていないキスマークがくっきりと浮かび上がっている。


ああ、これを見られたのか。


これは、白平とみさきに運ばれて寝ているうちに、みさきにいたずらされたものだが、そんなことを言っても、信じてもらえないだろう。


これはダメだ。戦略的撤退しよう。

卒業延期だ。留年だ。


イキっていた場所も、すっかり萎えてしまった。


俺は、

「すみません、誤解です!」


と叫ぶと、ポロシャツをおろしてベッドルームを飛び出し、自分のポーチをひっつかんで、這う這うの体で自分の部屋に逃げ戻った。


ソファーに座り、さっきの事を考える。


せっかく、卒業するチャンスだったのに、まさか、みさきのいたずらが、こんな結果を生むとは思わなかった。



誤解されたまま、彼女と終わってしまうんだろうか。いや、キスしているときにみさきのことを考えたのは事実なんだが。


まあ、みさきのことは置いておこう。

キスマークの誤解、どう解こうか。


まさか、「僕は童貞です!」なんて叫ぶわけにもいかない。


俺は、LINEで、メッセージを入れた。「何か誤解があったようです。

説明させてください。

本日はごちそうさまでした。ありがとうございました。」


と、書いて送った。

結局、その日寝るまで、何度かスマホをチェックしたが、メッセージが既読になる事はなかった。


俺はこの数日のことを振り返る。

とにかく、いろいろありすぎた。

怒涛のような日々だ。



まず金曜日、海野に一杯盛られ、白平とみさきに助けられ、気づいたら、知らない天井で、土曜の朝だった。


助けてもらった代償として、みさきにはいたずらで胸にキスマークをつけられたが、まさかそれがその後の佐藤さんとのことで問題になるとは思わなかった。


それから、みさきと濃厚なキスをした。 俺のファーストキスだった。

(これも、佐藤さんとのキスのための練習とも言えたが、みさきのことを思い出したのを、なぜか佐藤さんに気づかれてしまった。)


その後、株式会社童貞でプロジェクトの説明を聞いて、それから俺の「さわやか業務システム」の評価についてとんでもない書類を受け取った。


日曜には、辞表を持って社長の家を訪問し、知り合った爽香さんと楽しく話をしたが、曽その後、社長から、婿入りして会社を継いでくれ、と言われてしまった。

何とか爽香さんに対応してもらえたとは思うが、ごまかすわけにもいかない。



そして今日。佐藤さんに食事に呼ばれし、いい雰囲気になりかけたのに最後は押しのけらる有様だ。。



あまりにも変化が大きい。波乱万丈だ。濃密すぎる。



今までの、のんびり生活とは次元が違う話だ。

あ、カワダッシュからの誘いの件もあった。


うわ~


さすがに限界だ。これが女難か!


頭が痛くて、ぐるぐる目が回る。


朦朧とした頭で、俺は何とか、ベッドへもぐりこんだ。

明日は会社だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る