第16話 . 悪あがきと驚愕
気がついたら、知らないベッドで寝ていた。俺はパンツ1枚で、鳥の声が外から、鳥の声が聞こえる。
ほんまもんの朝チュンだ。
全ての童貞があこがれるであろうシチュエーションである。
そしてもう一つ。
「知らない、天井だ。」
これも、できれば言ってみたいセリフの上位になるだろう。
朝チュンと、知らない天井。
本来なら素晴らしいコンビネーションに感動するところだが、今日だけはそれどころではない。
心には、不安しかない。
俺は、自分に何が起こったのかを検証しようと必死になった。
だいたい、リアリティーとしては、知らない天井どころじゃない。天井も知らないけど、ベッドも知らんぞ。部屋も知らん。
誰かの寝室だろうか。ベッドと机とサイドテーブルだけしか見えない、簡素な作りだ。
俺は、パンツ一丁だった。部屋を見回すと、脱いだシャツはや靴下は、ベッドの横のテーブルにきれいに畳んである。スーツとワイシャツとスラックスは、しっかりハンガーにかけてある。ネクタイもあった。
結論は1つ。
昨日、海野と飲んで、どうやら一服盛られたようだ。
そして、意識を失
(以下、省略
全裸、いやパンツ一枚で朝チュン、知らない天井だ。
この途中が、人生でいっちゃん大切なのに。
以下省略してんじゃねえ!
控えめに見ても、ここに連れ込まれたわけだ。
(これは、もしかしたら…) 戦慄と恐怖と後悔が、頭の中をよぎる。いや、ほとばしる。
その間のこと、何で覚えてないんだよ。一生に一度の大事なイベントなのに。
そして、海野の馬鹿野郎。お前みたいなおばさんビッチに童貞を取られるつもりはなかったぞ。
…ちょっと待って。
ここは落ち着こう。
まだ、童貞を奪われたと決まったわけじゃない。うん。そうだ。
もしかしたら、部屋に運ばれただけで、何もされてないかもしれない。(どう見ても希望的観測だが。)
俺のアソコは朝から元気だ。モーニング・スタンダップ。
抜かれてないから、元気なのかも。
…だが、今までの経験からいうと、抜いても抜いてなくても、朝元気なのは、いつものことなのだ。
今回、したのかどうかについて、証明にはならない。
俺はベッドの中を見る。
特に、栗の花系の匂いはしなかった。
もしかしたらセーフちゃうか?(希望的観測)
でも、ほのかに女性の香りがした。どこからだ?
あれ?ここに長い毛が落ちてる。
…どう見ても、俺の毛じゃないな。ゆうべ突然伸びた…とは言えないな。
俺は、自分の体を再度確認する。あれ?右胸のところに、赤黒い蝶の刺青?いや違うな。やっぱりそうか。
どう見てもキスマークだ。俺は体が固いし、どんな上海雑技団の人間でも、自分の胸の下にキスマークを付けるのは無理だな…。
いや、これは本当に一大事だ。
あれ?何だこれ?
さっきからいい匂いがすると思ったら、俺の裸の肩に、何かひっかかっている。
手に取ってみると、女性用のピンクのブラジャーだ。
これは、さすがに俺のものではない。
俺も、ブラジャーをしようかと思ったことが…ない。
結構大きいカップだ。だけど布は薄い。
これなら、海野の鼓動が感じられても不思議はなかったのにな…。
ちょっと鼻を近づけると、やっぱり、とてもいい匂いがする。
「あ、部長、起きましたか」」
女性の声がする。俺はびっくりして飛び上がる。これで人生終了だ。
「やだ、私のブラの匂いなんか嗅ぐのやめてくださいよ。」
…何と恥ずかしいところを見られた。海野に一生言われるぞ。
死ぬる。
…あれ?
海野の声ではない。
俺は声のするほうを見た。
バスローブを着た女性がにこにこ笑っている。
「…」 俺は驚愕のあまり、声が出なかった。
そこに立っていたのは、バスローブを羽織った木佐みさきだった。
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