第44話 オールクリアしたトゥルーエンド


俺は、こうして佐藤彼方さんと結婚した。

彼女は田中の苗字になったが,仕事では佐藤で通すことにした。



籍はすぐに入れたが,結婚式は半年後になった。

実は,彼方さんが妊娠したので,安定期まで待ったのだ。


結婚式には、取引先や、社員もたくさん呼んだ。

取引先の1人、カワダッシュの川田和香さんは、妊娠していた。


それから、友人の1人として、爽香さんが出席していた。これは驚きだ。爽香さんと彼方さんは、大学の友人だったらしい。不思議なこともあるもんだ。


そして、爽香さんも妊娠していた。


1つの結婚式に、少なくとも40代の妊婦が三人も出ていると言うのはちょっと珍しいのではないだろうか。


内心はわからないが、二人は祝福してくれた。




俺のいる会社は、外部のシステム会社に買収された。

その会社は、ハイパードリームトレーディングと言う。


実は、ここは、株式会社童貞の関連会社の一つだった。もちろん、うちの社員には、株式会社童貞のことを知らされていない。


社長は白平さんになった。

そして、「さわやか業務システム」の開発は、子会社に移管された。

俺はその会社の社長として、このソフト全体の責任を持つことになった


ただ、社長といっても、経理や資金繰りとかは全て親会社に委託するので、今までの部長と大して変わらない。

俺にはそれが心地いい。

給料も上がったことだしね。


違うのは、子会社ながらも社長の給料をもらえるようになったこととそれからシステムを自分で好きに方向性を決めて作り上げ、コーディングも自分で程度でやれるようになったことだ。



ついでに、俺の会社に株式会社ドリームトレーディングから、人材を回してもらって、システム開発機能は今まで以上に向上した。俺もとてもうれしい。


もう一つ驚いた事は、株式会社ショッピングジョイのシステムを、ハイドリームトレーディングが請け負っていたことだ。


なるほど。それならショッピングジョイのシステムが、しっかりしていて、どんなに売り上げが上がっても問題がないと言う事はよく理解できる。


そして、爽香さんも結婚することになった。ハイドリームトレーディングのエンジニアだという。


「子供には、父親が必要だ。」

と言って、自分の子供として育てたいと言う申し出があったのだ。


彼は、前から爽香さんのことが好きだったが、取引先の役員だし、仕事に影響しても困るので、言い出せなかったらしい。



ただ、爽香さんが、未婚の母になると言う話を聞きつけて、居ても立ってもいられず、プロポーズしたそうだ。


爽香さんは、結婚して、栢崎(かやさき)の苗字になった。


ギリギリまで仕事を続け、出産後も、すぐに復帰したそうだ。



株式会社カワダッシュは、大きな仕事を、定期的に受けるようようになった。

それは、ドリームトレーディングのDDTプロジェクトだ。


機密性の高いプロジェクトだが、そこの信頼性が高いこと及び、イベント開催のノウハウがあることで、DDTプロジェクトについては全部カワダッシュに協力をしてもらうことになり、カワダッシュもかなり売り上げが増えたようだ。


そして、和香の妊娠に伴い、ドリームトレーディング及び関連会社から、人が出向した。その中で、体質的に子供が作れない男性がいて、和香に一目ぼれしたこと、そしてどうしても子供が欲しかったと言うことを告げた。 いろいろあったようだが、最終的に妊娠中の和香にプロポーズしたのだ。


彼は、期せずして2人の父親となった。

ワンポイントリリーフで、カワダッシュの社長も受けることになるらしい。

和香の幸せを願おう。



そして、彼方さんは、出産を機に、月刊角丸の編集長を辞め、産休を経て、女性誌の編集者に復帰した。

ショッピングジョイの商品とのコラボとかを担当するらしい。爽香さんと一緒に仕事ができると、彼方さんも嬉しそうに話していた。


ほぼ同時に、俺の血を引く子供が3人生まれたことになる。


ただ、他の2人については認知はしていない。あくまで父親はその人たちと言うことにしているのだ。


養育費を払おうとしたら、両方とも辞退された。爽香さんは、親の財産と自分の貯金もたくさんあるし、また和香も、カワダッシュの役員として、十分に生活できている。


それに、結婚祝いとして、貞男から、かなりのお祝い金をもらったようだ。


大童貞男、いや、織田貞男は,そのあり余る資産を、こういうところに使ってくれているのだ。


海野は、司くんと結婚し、妊娠して会社を辞めた。

出産後は、保育園の保育士さんをやっているらしい。


みさきも、派遣期間が終了し、会社からいなくなった。風の噂では、結婚、出産したらしい。細かいところは知らない。


俺は幸せだし、関わった女性たちも、それぞれ幸せになっているような。



株式会社童貞には入れなかったけれど、ものすごくお世話になった。



俺たちは、同じマンションの、一番広い部屋に移った。3LDKだ。これが社宅扱いになっているので、家賃はほとんどかからない。これも白平新社長の配慮だ。ありがたいことだ。


俺は、妻の彼方と息子の道郎が寝静まった夜中、マンションの窓から街の明かりを見ながら、コニャックを入れたショットグラスを掲げ、


「株式会社童貞に乾杯」

と言って、一気に飲み干す。


偶然の積み重ねが、今の人生を作っていく


これからもいろいろな事件があるのかもしれない。


彼方さんを泣かすような事は絶対にしないが、人の役に立つことができるのであれば、できる限り頑張っていきたいと思っている。


酔いが回ってきた。明日も頑張ろう、と思いつつ俺は意識を手放す。






暗闇に、織田貞男と二人が現れた


彼は言う。


「これが真の結末,トゥルーエンドだ。ハーレムを通過しての結末だ。」


そうなのだろう。


「たった一度の人生で、こんな状況を味わえるなんて全く考えてもいませんでした。


良い思い出になりました。ありがとうございました。


俺はそう言い、頭を下げた。


「まだ、終わらんよ。

織田貞男は言う


「え、どういうことですか?」


「これから、ボーナスステージだ。

これからも励んでくれ。」


え?

俺は混乱した。


まぁ、きっとなるようになるだろう。




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