第45話 ボーナスステージ、そしてフィナーレ



(第三者視点)



ある日の午後


木佐宮みさきは、仕事が一段落し、自席で、ちょっと考え事をしていた。

(今日も定時で帰れそうね。旦那も定時だから、正樹を迎えに行って、3人で帰れるわ}


するとその時、電話が鳴った。

みさきは電話を取る。


「はい、株式会社ヒットショッピングジョイです。」


みさきは、株式会社童貞の木佐宮とプロジェクトを経て結婚し、息子を産んでいた。

その後、職場に託児所・保育園があるこの会社に、白平の勧めで就職したのだ。


出産経験を経ても、プロポーションは変わらない。いや、あのメロンのような胸は、さらにワンサイズ大きくなった。


メロンを息子に取られて、パパはちょっとだけ寂しそうである。



みさきが電話を取ると、聞き慣れた声が聞こえる。

「ヤッホー。お姉ちゃん、元気?」


「早紀、こういうときには、木佐宮さん、でしょ。仕事とプライベートは分けなさい。」

みさきはたしなめる。


「そんなこと言ったって、お姉ちゃんだって、私のことを早紀って呼んだじゃない


。おあいこでしょ。」


正論ではある。


みさきはため息をついた。


「まぁ、いいわ。何か用?」


「あ、そうそう。プロジェクトTT、シリーズ9発動です。


真理社長、ユカさんも了承済み。というか、社長のお友達みたい。資料送るね。対応よろ。」



電話が切れた。


妹の早紀は、株式会社ショッピングジョイで働いている。

これも、白平の紹介だ。


メールで送られてきたデータをみさきは確認する。


(年齢42歳。貯蓄5億。年収三千万円の投資銀行ディレクター。。なるほど。お金には困ってなさそうね。世の中には、こんなに稼ぐ人がいるのね。)


みさきは、チェックリストを確認していく。提出書類も含め全てオッケーだ。


書類を、爽香に送ろうかと思ったが、多分これは、直接持っていったほうがいいだろう。みさきは、書類をプリントアウトして、爽香のところへ行く。


「爽香さん、プロジェクトTTシリーズ9発動です。連絡お願いします。」


爽香は、ちょっと渋い顔をする。


「え、また? 9回目なのね。


そろそろ彼方も怒るわよ。」


「そこをなんとかするのが、爽香さんのお役目です。それに、真理社長のお知り合いみたいですよ。」


爽香はしぶしぶ、という感じで言う。

「わかったわ。まぁ、人助けだものね。恩恵に預かった身としては、この人の気持ちもよくわかるしね。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


みさきが去ると、爽香は、ため息をついた。


(まだ早いわね。夜7時位に連絡しよう。

家に帰ってからでいいわね。)





その後、爽香は彼方に電話する。


「もしもし、彼方、元気?」


「爽香が電話してくるまでは元気だったよ。

なんか、嫌な予感しかしないんだけど。」


「そんなこと言わないでよ。彼方には、いつも感謝してるんだから。」


「もちろん私も、理屈ではわかってんのよ。ちょっと言いたかっただけ。

資料送ってちょうだい。日程はいつぐらい?」


彼方の問に、爽香が答える。


「再来週の水曜日の晩ね。スケジュールを見る限り大丈夫みたいだけど、確認してちょうだい。」


「わかったわ。」彼方は電話を切る。


そこへ、夫の一郎が帰ってきた。

「ただいま。彼方、何か不機嫌そうだな。どうしたの。」


一郎が聞く。


「プロジェクトTTよ。再来週水曜日。」


一郎はスマホで自分のスケジューラーを確認する。

プロジェクトTT(仮)と書いてあった。既に予定されているわけだ。


「了解。わかったよ。」



彼方は、平静を装って一郎に言う。

「せいぜい頑張ってちょうだい。」


一郎は無言だった。




プロジェクトTTの当日、一郎は、指定された高級ホテルに行き、告げられた部屋のドアをノックした。


すぐにドアが開き、書類に載っていた女性が現れる。ただしバスローブ姿だ。


一郎は、部屋に入る。


「よろしくお願いします。」

女性は、緊張しているようだ。


「こちらこそよろしくお願いします。田中です。

では、一応お約束なので、最後の説明をしますね。



結果がどうであっても、今後、私は、全く関与できません。あなたと連絡を取ることもありません。大丈夫ですか?」


「ええ、わかっています。」


「では、この書類にサインをお願いします。」


差し出された書類に、女性はサインする。


「確かに受け取りました。」


一郎はそう言って、書類をブリーフケースに入れて、鍵をかける。


「では、始めましょう。

ベッドでお待ちください。」


女性はうなずいて、ベッドへ行く。

最初からバスローブ一枚だ。


一郎は服を脱ぎ、パンツ1枚になって、ベッドへ向かう。


「力を抜いてくださいね。」

一郎が言う。


そしてそれから2時間。2人はまぐわった。


時間通りにアラームが鳴り、一郎が言う。

「お時間です。あなたに幸運が訪れますように。」


一郎はそう言って、服を着て、ホテルを出る。、すぐに、彼方に電話する。

「終わったよ。」


「お疲れ様でした。早く帰ってきてね。」


一郎は、妻と息子の待つ自宅にタクシーで帰る。


(まさか、こんなことになるとは思わなかったな。)

一郎は回想する。




彼方が無事、出産して間もない頃、同じように無事に出産した爽香から、彼方に連絡があった。


「これから、継続的に田中さんを貸してほしいの。」」

爽香が言うのだ。


意味がわからず、彼方は聞いてみた。

「どういうこと?」


爽香は言う。

「同時に、40女を3人も妊娠させるなんて、なかなかできることじゃないわ。


彼、つまり一郎さんは、40になった女性に対しての希望の星よ。40になって、子供が欲しいけど、相手がいない、あるいは相手はいるけど、事情があって、妊娠が叶わないような女性に対して子種を提供してほしいの。」


爽香は続ける。。

「多分、彼には、その能力があるわ。少なくとも、その噂を聞いた、同世代の女性が、私のところに殺到してるのよ。」


彼方が答える。・

「まぁ、そういう女性の気持ちは、私自身が、わかりすぎるほどわかるわ。このまま、処女のままで朽ち果てるより、せめて子供が欲しいって思うもの。」


「だから、一郎さんなのよ。できるだけ今までと同じ条件で、女性たちに種付けをしてもらうの。プロジェクトTT、田中種付けプロジェクトよ。」


「なんか名前は変ね。まぁ、私もなかなかお相手できないし、真面目な彼だから、変なことにはならないわよね。」

彼方は答える。



「相手の女性については、経済的に問題がない人だけを選ぶわ。それから、基本的に、一郎さんは子供を認知しない。それは、私や、川田さんと一緒ね。それだけは徹底するわ。


あなたたちの家庭を壊すつもりはないもの。

それに、もし必要があれば、SDGファンドがなんとかするわ。」


「なるほど。ならお金の面は安しね。」

彼方も言う。


SDGファンドと言うのは、ショッピングジョイ・ドリームトレーディング・ギフトファンド

と言うものであり、事務局が認める子供に、金銭的なサポートをするものだ。 

織田貞男の資産の一部を使っている。



性格を考えると、一郎は彼方の了解があれば、断る事は無いだろう。そのため、先に彼方を説得することにしたのだ。


もちろん、このプロジェクトTTについては、ショッピングジョイだけでなく、ドリームトレーディングも資金面で関わっている。


このプロジェクトは、表面上は、一千万円の寄付が必要になっている。

ただ、実際のところは、そのお金は将来的に、生まれる子供に対して使われる。また、妊娠が成就しなかった場合には、経費を差し引き、違う形で、返金されることになる。だが、気軽に申し込まれないために返金する事は伝えない。


一千万円をかけられる女性だけを対象にしているのだ。


また、できるだけ過去の成功事例と同じ環境の再現を試みるため、人工授精ではなく、実際に肉体的に結合する。それも条件である。


その条件を聞いたとき、ほとんどの女性は嫌がるのではなく、逆に喜んだという。

そういう機会も欲しいのだろう。



結局、今までは、プロジェクト8回のうち、何と6回の成功が確認されている。しかもあと2回は結果待ちなのだ。


これに加えて、彼方、爽香、それから和香の分もある。


世の中的にはありえない確率だ。


彼方は一郎のことを、『年増孕ませ男』などと言う。

まぁ、事実ではあるのだが。


もうちょっとしたら、彼方にも2人目を産んでもらおう。と一郎は思う。



     

関係者の間で、プロジェクトTTは百まで続けると言う合意がされている。


ちろん、種付けがいつもうまくいくわけではないだろうが、田中の遺伝子は、かなり多くの子供たちに受け継がれることになる。




都市伝説として語られることがある。

40まで童貞であった男の話だ。


その男は平凡な容姿、そして平凡な苗字「田中」と言う。


そんな平凡な男が、40で童貞卒業してから百人と関係を持ち、多くの子をなしたというのだ。


童貞の星、童貞ドリーム田中。

伝説の男は、今日も黙々と、女性に愛と子種を提供しているのだろう。






★★★


田中は、また暗闇の中ににいた。、

闇から3人が現れた。


織田貞男は言う。


「ボーナスステージはどうだい。」


「いや、もう何というか。最初のハーレムでも夢みたいだったのに、ここまで来ると、もう自分でなくなったみたいです。」

田中は言う。

 

「私も、占ったときには、こんな結果が待っているとは思いませんでした。」

奇蹟の占い師が言う


「田中ちゃん、この際だから最後まで絞り出しちゃってね!百人斬りなんて、そう簡単にできることじゃナイわよ!」

ダンディな謎の人も言う。



「そうですね。男の夢みたいな生活、そして、女性に希望を与える。人助けとして僕が望んだことが体現されています。全然考えたのと違いますけどね。


これからも、百回目のプロジェクトを目指してがんばります。ですから、応援してください。」

田中は言った。


すると、織田貞男が口を開いた。

「その意気だ。百と言うのはあくまで一里塚だと思ってくれ。君の体力と精力が続く限り、この崇高なプロジェクトは続けてもらって構わんのだよ。」


他の2人も「そうだ。そうだ。」「そうよそうよ」と言う。


田中は「頑張ります。」とだけ答える。




田中は前を向き挨拶する。


「皆さん、今まで読んでいただいてありがとうございました。

あ、まだ評価の★をつけてない人はちゃんとつけてくださいね。ついでにレビューもお願いします。」


いつの間にか、彼方、爽香、和香、みさき、海野も出てくる。


全員で1列に並び、読者の前に立つ。


皆、一斉に礼をする。


「ご愛読ありがとうございました!」


(株式会社童貞 完)

 完)

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