第43話 ハーレルート



俺、田中一郎はふと意識を取り戻した。


周りは暗闇だが、向こうに3人の人影がある。


俺は近づいてみる。

3人は皆笑顔だ。拍手をしている。

「おめでとう。」「おめでとう。」「おめでとう。」


祝福の言葉をもらう。


俺は碇シンジかよっ!って、突っ込んでみる。

だが、若い連中は、碇シンジを知っていても、おめでとうの意味は知らないっ鴨な。


それはさておき。


「田中くん、シナリオクリア、おめでとう。」


織田と言う男が言う。


(すべてはゼーレのシナリオ通りに。といってもやっぱりわからんだろうな。)



織田は続ける。

「俺の旧姓は、大童。つまり、俺が大道貞男だ。



今は、君と同じく、非童貞だがね。」

織田、いや大童貞男は笑う。


「そうでしたか。

いろいろお世話になりました。

入社はしませんでしたが、とても参考になりました。」


俺は答える。


「いや、君は当社始まって以来の大プロジェクトの参加メンバーだったんだよ。その功績を記念して、マルチエンドのゲームのクリアの特権、ハーレムエンドとボーナスステージだ。」


「え、それはどういうことですか?」

意味がわからない。


「いや、君は知らなくて位いいことだったな。失礼する。」


そのまま3人は消えてしまった。

「ハーレムだよ~」「ハーレムなのヨオ!」という声が遠くから聞こえた。


たぶん、奇蹟の占い師と、ダンディな謎の人だろう。


俺は、また意識を手放した。


翌朝になった。

鳥がチュンチュン鳴いている。彼方さんが横にいる。

これこそ、リアル朝チュンだ。やった!


俺は謎の充実感に包まれた。


今日はまだゴールデンウィークで休みだ。

朝はゆっくりした。


その後、彼方さんは、俺に真剣な顔で言った。


今から、1週間だけ、あなたに、女性と会う時間を差し上げます。


そこで何が起きても、どんな結果になっても、私と結婚してくれる限り、私は何も言いません。


ちゃんと、言い寄ってきた人たちと、決着をつけてきてくださいね。」




なんだかよくわからないが、言い寄られてる女にきっちり断って来いということなんだろう。


まぁ、彼女と結婚するんだから、妙なしがらみは残すべきではない。



海野は、司君とよろしくやっているから、特に何もする必要は無いな。


俺は、ゴールデンウィークのうちに、みさきにメッセージを送り、会う拓測を取り付けた。


それから、翌日は和香、その翌日には爽香さんと会う約束も取り付けた。



午後の公園を散歩しながら、俺はみさきに対し、結婚することを報告した。ついでに、童貞卒業したことも。


彼女は、状況を知っているので、童貞喪失を無理に隠す必要は無い。



みさきは俺に言う。

「では、これからお祝いですね、2人になれるところで、乾杯しましょう。これが最後だと思いますから、付き合ってくださいね。」


俺は承諾した。


みさきに着いていくと、アルコールも出すカフェに入った。

休日だし、明るいうちから飲むのも悪くないだろう。


みさきはカシスオレンジ、俺はビールを頼んだ。


「童貞卒業と結婚を祝して乾杯!」

みさきが声を上げる。


「あまり大声で言わないでくれよ。周りに聞かれたら恥ずかしいよ。」

俺は言う。


「今日は、お祝いですから、ここは私が出します。あと、私の思い出作りも兼ねていますからね。一杯だけ飲んだら行きますよ。


え?どこへ。



田中さんに、メロンを食べさせてあげます。そして、ビギナーであるあなたに、女の喜ばせ方を教えてあげますよ。」


飲み終わると、俺は、みさきに連れられて、ラブホテルに入った。


彼方さんが言っていたのは、こういうことだったんだな。俺は理解した。



男なら誰でも欲しがるメロンを堪能した後、講義になった。女性の喜ばせ方だ。そうなのか、そんなこともあるのかなど、俺が全く知らないことばかりだった。

奥が深いな。


そのあたりを復習で少しだけ実践した。みさきは変幻自在だった。



ラブホテルを出て、別れる前に、みさきは俺にもう一度キスをして、言った。


「田中さん。お幸せに。」


彼女は、踵を返し、颯爽と去っていった。


彼女の目に涙が浮かんでいたような気がしたが、多分それは気のせいだろう。




翌日、和香に会う。

俺は、結婚することになったことを告げる。そして、カワダッシュには入社できないと言うことも。


和香は言った。

「おめでとう。田中くん。幸せになってね。


でも、その前に、私にも思い出を頂戴。」


そう言って、ラブホテルに連れ込まれた。

「最後なんだから、しっかりした思い出を頂戴。」という言葉に、抗いようがなかった。


俺は覚悟を決めて、和香に近づく。


和香の要望で、みさきの時と違い、避妊具なしで頑張った。みさきからの伝授が早速役に立ち、多分俺は、彼女に良い思い出を与えることができたと思う。




そして、爽香さんに会った。

高級ホテルのフレンチレストランだ。

爽香さんに、結婚することになったと報告する。


そして、転職はしないので、ちょっと気まずいかもしれないけれども、今の会社に残るつもりだと伝えた。


爽香さん言う。

「分りました。実は、この会社には、跡継ぎがいないので、父は、会社を売ることを考えています。

そうしたら、新しい株主から社長が送られてくるだろうと思います。田中さんは、自由にプログラミングができるようになりますよ。」


「そうなんですか。でもM&Aとかあると、リストラとかかなりあると言う噂も聞きます。どうなんでしょうね。」


「多分それは大丈夫だと思います。社員に優しい会社になると思いますよ。」


「それならよかった。この会社に残って、『さわやか業務システム』をサポート続けたいと思います。」


爽香さんは、俺のほうをじっと見ながら言う。

「それはそれとして、私からもお願いがあります。」


このパターンは、もしかして…

「今夜、私を抱いてください。一生の思い出にしたいんです。」



俺はちょっと迷ったが、既に、みさきとも、和香とも関係を持っている。2人も3人も一緒だ。二度あることは三度ある。彼方さんには了解も取っているんだ。


俺は了承し、爽香さんとホテルの部屋にチェックインした。


爽香さんは恥ずかしそうに言う。

「初めてなので、優しくしてくださいね。あと、何もつけなくて構いません。あなたのことを、直に感じたいんです。」


言葉通り、爽香処女だった。

泊まろうとしたら、爽香さんに帰ってくれと言われた。


「強すぎる思い出は、毒になります。今なら楽しい思い出になりますから。」

爽香さんはそんなことを言う。


俺は、直にタクシーで帰宅した。。


ほんのちょっと前まで童貞だったのに、いつの間にか女性4人と経験してしまった。


不思議だな。


俺は自宅に戻った。今夜は、部屋には行かないと彼方さんには言ってある。



俺は、ちょっと残っていたヘネシーのコニャックをショットグラスに入れ、


「素敵な彼女たちに乾杯!」


と言い、コニャックを飲み干した。




いつの間にか暗闇になり、そしてまた3人が現れた。


大童、いや織田貞男は言う。

「どうだった、ハーレムルートは。ほんんの数日だったけどな。」



「最高です。」

俺は答える。海野はどうでもよかったが、それ以外の4人の女性を抱くことができたのだ。


これからは、彼方さん一筋になるが、何の文句もない。


俺は、彼方さんとともに生きることを誓うのだった。



(完)



…そう思ったところで、織田貞男が言う。



「いや、まだ、終わらんよ。

これから、トゥルーエンドだ。」


みんなのその後に決着をつけようじゃないか。」





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