第1話 伝説のプログラマー
「田中さんさんは、伝説のプログラマー、真童 貞男(しんどう さだお)のことをご存じですか?」
白平といおう男が聞いてきた。
「聞いたことはありません。」
俺は答える。
「そうでしょうね。では、ネット起業家のMGOの外熊さんや楽連の君谷さん、あるいはエージサイバーの田藤さんの事はいかがですか?」
「もちろん知っています。」俺は答える。
システム、ネット関係で知らないやつはいないだろう。
「その3人についてどういうイメージをお持ちですか?」
「そうですね。3人とも素晴らしいリーダーだと思います。外熊さんは、機を見るのに敏な方で、ダイヤルU2、プロバイダーその他いろいろビジネスを見つけてたり買収したりしてチャンスをものにされる方ですね。」
とりあえずほめておくことにした。
「君、谷さんはまぁインターネットを使いながら、体育会的なノリで営業をかけて、それと技術をうまく組み合わせて会社を大きくしたと思っています。あと国際性もありますね。田口さんは、広告とかブログとかメディアを通してどんどんビジネス大きくしていますね。」
あと二人もほめておこう。
「田藤さんは、キラキラした生活、女優奥さんにしたり、美人社員を集めたりしてなかなか派手なイメージがあります。でも最近は配信にものすごく力を入れていて、勝負師としての顔もありますね。」
「はい、全て当たっていると思います。ところでこの3人の共通点って何だと思いますか?」
「リーダーということ以外何があるんでしょうか。」
俺にはわからなかった。
「この3人の共通点は、誰もプログラマーではないと言うことです。」
「なるほど。そういえば、そうですね。」
みんなビジネスマンだが、プログラマー、エンジニアではない。
「この3人の裏には、先ほど申し上げた伝説のプログラマー真童貞男がいたのです。」
「全く聞いたことがありません。」俺は言う。
「そうでしょうね。じゃあ、経緯をお話します。」
白平は座りなおして言う。
「最初は外熊さんのダイヤルU2でした。大学に入ってすぐ位であった真童は、友人である外熊に頼まれて、ダイヤルU2システムを構築したのも彼です。「
「そうなんですね。」
「そして、起業最初の頃でお金があまりなかったので、基本的に、真童に対して、株やストックオプションでの報酬をメインにしました。若い会社にはよくあることです。」
ほう。ちょっと金の匂いがしてきたな。
「彼はMGOのシステムを1人で組み上げました。そして、その頃、渋谷ビットバレーとか言って、いろいろな人々のつながりができ、その中でインターネット企業がどんどん大きくました。」
「そうだったんですね。」
「例えば君谷が楽連を作った時、後ろのシステムの大体を構築したのも真童なのです。
また、君谷と仲のいい田藤のエージサイバーのブログや、広告システムなどを作ったのも、彼なのです。」」「
なるほど。彼は裏方として日本のインターネット起業家を支えたんだな。
「そして、この三社はすべてIPO,つまり株式を新規公開しました。」
それは知っているな。それで、彼の持っている株も値上がりしたんだろう。
「真童は表に出ないように、株式の持ち分は表面上5%を下回るようにして、大量保有報書というを出さないようにしています。そのため、彼の名前はほとんど開示される事はありません。」
大量保有報告書というのは、いわゆる5%ルールで、会社の株の5%以上保有する場合には名前を開示するという法律上の制限だ。
「ちなみに、これ以外にも、彼の資産は、非常に多いです。
他にも、、当時のGマーキュリー、今のシクミイと言う会社があります。
この会社の転職サイトやSNS、そしてゲームなどにも彼が関わっています。
彼に頼りたくなかったNDAの北波さんは、オークションシステムを仲間内で作ったところ、サービスリリースの直前にシステムがトラブルを起こして、サービスインできなくなってしまいました。そこで、北波さんは、彼女に言わせれば恥を忍んで、真童貞男に依頼したのです。
ハーバードの同窓生である君谷は反対しました。彼女のことが嫌いなのです。ただ真童はもともと人が良い人間ですので、北波の依頼も受け、オークションシステムのリリースを行いました。その結果、彼はNDAの大株主でもあります。
他にも、成功しなかった会社も含め、いろいろな会社のシステムの裏に彼がいたのです。」
俺は気になったことを聞いてみた。
「楽連の君、谷さんは黎明期の頃、自分でプログラミングをしたと言うことを自慢していますが、実際のところはどうなんでしょう?」
白平は答える。
「ああ、君谷さんはそう言われているようですね。プログラミングをしたのは確かなようです。ただ彼がやったこととは、言ってみれば、家を一軒建てたときに玄関のドアを取り付けたとかその程度ですね。全体のシステムの中のごく一部になります。ドアを持ってきて、ネジで取り付けたからといって、俺がこの家を建てたとは言いませんよね?」
白平の目が光ったような気がした。
「そこら辺はやっぱり自分を大きく見せたいと言う君谷の性格が反映されているのではないでしょうか。まあ、事実は変わらないので、真童は気にしていません。」
そういうことか。
「話を戻しますね。」
白平と言う男は言った。
「そして、彼は、毎日毎日プログラミングを続け、童貞のまま、40を迎えてしまったのです。」
俺は何も言えなかった。俺も童貞のままで40を迎えたからだ。
「ふと気が付くと、真童貞男の保有する個人資産は、一千億円を超えています。」
「一千億円?!」俺は驚いて叫んでしまった。
そんな金額想像すらできない。
「そして、彼は、童貞のまま、40を迎えた事実を認識し、いろいろ自分を振り返りました。
自分は誇り高き童貞のまま40を迎えた。それはそれでいいかもしえrない。
だが、世の中には、童貞のまま苦しんでいる男たちも沢山いるし、またそれで道を踏み外す連中もいるのだと。」
そうかもしれないな。
「エンジニア、特にプログラマーはストレスの多い職業です。5人に1人画メンタルをやられる。また、燃え尽きてやめていく。 ただし、多くの童貞はコミュ障です。うまく就職すらできない。それでまた世間に呪詛をまき散らすのです。」
それも絶対にあるな。
「そういう連中を、地下の人たち、いわゆる反射の人たちは放っておきません。プログラミング技術は、反社会的勢力にとって、喉から手が出るほと欲しい人材なのです。」
考えたこともなかったが。
「メールによる振り込め詐欺、出会えない出会いサイト、クレジットカードの番号を抜き取るフィッシング詐欺や、大きなものでは数百億円の仮想通貨盗難にも童貞プログラマー崩れがかかわっているという噂さえあるのです。」
「それが本当なら、大変なことですね。」
俺は言う。可能性は否定できないしな。
「自分はもはや金には困っていない。であれば、自分の資産の一部を使って、童貞たちを救うことができないか? 彼は考えました。
「で、どうなったのでしょうか?」
俺は興味を持って聞いてみた。
「彼は、この会社、株式会社童貞を設立し、知り合いの童貞たちに声を掛け、従業員としました。それが株式会社童貞の始まりです。」
社名はさておき、かなり意義ある事業であることを俺は認めざるをえなかった。
真童貞男の気持ちは、俺もある程度わかるからだ。
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