概要
※昭和の日本を舞台としていますが、この作品はフィクションであり、実在の人物や地域、組織などとは一切関係なく、特定の物事や思想を貶めたり讃える意図もありません。
※性描写・暴力描写がありますので苦手な方はお気を付けてください。(エピソードに*のある話)
※BL要素はありますが、著者はBLと思って書いていません。
※こちらの短編『絡まる』を元に長編化したものですがやや設定は変えてあります。ですがネタバレになる部分もあります。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!俺がネガならあいつはポジで。
強さ(男らしさ)
自由
この作品が僕に深く刺さった理由がこの二つです。どちらも僕が強く求めているものです。この作品ではこれら二つが徹底的に蹂躙されます。でも安心してください。激しい暴力の後にはどこか爽快感さえあって、これは、被虐嗜好とはまた別の(根っこは同じなのかもしれませんが)趣があります。
繰り返しますが、強さ、男らしさ、自由、健やかさ、何もかもが地面に叩きつけられ踏まれます。
でも、いきなりめちゃくちゃにされるわけでもないんです。なんて言ったらいいかな……とにかく、こんなに心乱れた読書は久しぶり。
主人公の良太郎は「強さ」を求めます。
もう一人の主人公邦正は(僕が察するに)「自由…続きを読む - ★★★ Excellent!!!呪いと愛憎…生涯にわたる男と男のクソデカ感情が、読者の情緒を掻き乱す!
「いつかお前の人生をめちゃくちゃにしてやる」という強い意思だけが、その人の生を繋ぐ。
そんな巨大な感情を互いに抱き合う2人からしか得られない栄養素があります。
戦前、戦時中、そして戦後と、激しく移り変わる昭和の時代。
社会背景や家父長制の男女観、当時の空気感までもが伝わる精緻な筆致で描き出されるのは、男2人の深い因縁の物語です。
いろんなしがらみに囚われ縛られ続けた彼らの、血よりも濃くて死よりも苦しい魂の軛に、みんなで悶え転げよう!
冒頭から綴られる「おとなの男はつよい——」という一連のフレーズ。
そしてタイトルにもある「梨の実を割る」描写のイメージ。
作中で繰り返されるこれらの表現を、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!梨に始まり、梨に終わる
梨畑の美しい描写から始まるこの作品。
読者は昭和史をなぞりながら、男二人の行く末を見守ることになるのだが、心かき乱されるシーンがいくつもあり、考えさせられるテーマを多数内包している。
男とは。女とは。昭和という時代は何だったのか。人間の在り方。変わるもの、変わらないもの。
暴力や性といった、見つめ辛い事柄を真摯に描いている作品でもあり、登場人物たちが皆、血の通った生々しい存在として関わってくるので、そこも見どころである。
男二人の関係は、BLやブロマンスといった表現がそぐわない独特なもので、「良太郎と邦正」としか言えない唯一無二のものである。
そんな二人の結末をどう捉えるのか。
私は「彼らら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この感情を、何と呼ぶことが正しいのだろう
時代の変遷というのは、価値観を変える。日本は昭和から平成、戦争や経済成長の中で激動とも呼べる時代を送った。
その中にあって自分を縛り付ける価値観から逃れきれなかった男と、その男にずっと捕らわれ見続けた男の物語、なのかもしれない。
始まりの感情を、何と呼ぼう。それは憎悪と呼ぶことが正しかったのかもしれない。けれど終わりの感情は、果たしてそう呼ぶことが正しいのだろうか。
時代は流れていく。
けれど誰もがそれに従い、変わっていけるわけではない。ただ変われないまま、流されていくしかないこともあるのかもしれない。
ずっとずっと心の中に影のように落ちるものを、何と呼ぼうか。
それは決して同じ質量で、…続きを読む