第40話 結果論
「うん。少し前に馬草がRe★Gameをくれって意味のわからない事を言ってたから。陽向もukaから聞いてて知ってるだろ、名乗ってYooTubeにチャンネルを作っている偽物の話......あれがあいつらだと知った時にこの手を考えていた」
驚いているな。いや、黙っていた事にたいする不信感か?これから俺は問い詰められるのだろうか。
「なんで、今なの?」
「......え?」
「結人が怪我する必要あった?」
「そりゃまあ。だって実際に俺が暴行されているっていう馬草が言い逃れができない証拠動画が欲しかったから......なんで?」
「今回、相談しなかったあたしが言えた事じゃないけど......もっと早くその計画を私に言ってくれてたら」
ああ、意味がわかった。つまりそういう事か。
「陽向が代わりに殴られた?」
こくりと頷く。頬に涙が伝う。
「......結人は、傷だらけだよ......」
傷だらけ。確かに、ここまでたくさんの傷を負ってきた。痛くて辛くて逃げたくなるような。いや、実際に逃げて引き籠もった。
でも、それでもまだ戦えたのは......陽向が大切だったからだ。
彼女が傷ついたら意味がない。
「でも、陽向は助けられたから」
「ダメだよ」
陽向が言う。
「何がダメなんだ?俺は俺がいくら傷つこうと、大切なモノが守れればそれで良い。それが俺の意思で、望みなんだよ」
認めるよ。俺はもうRe★Gameが好きでたまらない。文化祭までの期限すらどうでも良くなっている.......それだけ明確に大切なモノになってしまった。
陽向、rayさん、uka、kuroko。
皆を守れるなら、俺は手を汚す。
(......その結果、俺が傷つこうが、例え他人を傷つける事になろうが構わない)
「!」
その時、俺をおおうように彼女は両手を伸ばし、背に手を回した。温かな陽向の体温が俺の体を包み込む。
「結人は、あたしにとって大切なモノなんだよ」
「......あ、うん」
「言ってる意味、わかるよね」
「でも、俺は......むぐっ」
背後から橙子が俺の口を塞いだ。ちょ、お前なにしやがる。
「この話は、あたしも陽向さんに賛成だよ」
陽向に抱きしめられ、口は橙子に塞がれどうにもならない。なので仕方なく大人しく話をきこう。
「今回のこの馬草くんをハメた計画もさ、やろうと思えばホントはもっと前にできたはずでしょ。なのになんでやらなかったの」
すっと橙子が塞いでいた手をはなす。答えろって事か。どうでも良いけど拘留のされ方レ◯ター博士みたいじゃない?
「俺は俺だけがやられるくらいなら耐えれたし、あまり大事にしたくなかった。今回は皆に危害が加えられそうだったから手を打っただけなんだよ」
「それが間違いなんだよ、お兄ちゃん」
「......いや、言いたいことはわかるよ。俺が傷つくのが嫌だって事だろ。でも、もしかしたら先手を打とうとして失敗したかもしれない。そうなれば馬草が陽向にちょっかいをだして迷惑がかかる可能性があって」
すっと橙子がまた俺の口を塞いだ。なんだこのシステム!
フン、と耳元で鼻で笑う陽向。
「言い訳ばっかだね、結人は。あとワガママだ。うん、ワガママ」
「あははは、お兄ちゃん言われてる〜」
「まるで橙子ちゃんみたいだね」
「はは......え」
「あ、でも結人のがお兄ちゃんだから、橙子ちゃんが結人みたいなのか。どっちでも良いけど」
あれ、これもしかして......陽向、怒ってる?
「ひ、陽向さん......もしかして怒ってる?」
ナイス橙子!さすがは兄妹というべきか、俺の疑問を代わりに聞いてくれた。ありがてえ。ってか口塞ぐのやめて?
「そりゃ怒るでしょ。だって結人さ、考えてよ。そうやって馬草の嫌がらせを耐え続けた結果が不登校と引き籠もりだよ?限界まで抱えられたらはっきり言って迷惑なの。わかる?」
めっちゃキレとる!でも、確かに.......それを言われたらぐうの音もでないな。
「そうやって結人が追い詰められて傷ついてるのって結人だけじゃないんだよ。あたしも、橙子ちゃんもご両親だって辛くなる.......だから、頼れるならちゃんと頼ってよ。お願いだから」
今いわれて気がついた。確かに、俺は周囲に迷惑をかけないようにと頑張った。でもその結果、大きな迷惑をかけてしまっていた。
もしかすると陽向や家族、誰かを頼れば......良かったのかもしれない。
(まあ、あの頃はそれすら怖かったわけだが)
でも、今は違う。
「あー......まあ、一応だけど、陽向さんもあたしも別にお兄ちゃんが悪いっていってるわけじゃないよ?ただ、今回はあたしを頼ったわけじゃん?だから陽向さんも頼ってほしかったんじゃない?」
いや橙子は俺に対してやってたことがやってたことだし、極論多少の危険はまあいいかと思っていた。っていうのは今は言わないほうがいいな。
まあ、要するに......。
「ちゃんと頼れって事か」
「頼ってくれる?」
陽向が聞く。
「今度は、ちゃんと頼る」
俺がそう言うと、彼女はまた強く抱きしめた。そしてゆっくり一歩離れると安堵したかのように柔らかく微笑んだ。
「えーと、お兄ちゃんと陽向さん、良い雰囲気のところ悪いんですけど、良いかな」
そう言いながら俺と陽向の間に入り込む橙子。
「馬草側で発生したYooTube収益はどうするの?それはあいつらに渡しちゃう感じ?」
「まさか。やつらに渡す気はさらさらないよ」
「え、でもどうやって?」
「ukaとkurokoが動いている」
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