TSした男子高校生はガールズバンドでなり成り上がる。

カミトイチ@SSSランク〜書籍&漫画

第1話 終わりの始まり、男の子の秘密



――ゲーム内チャット――



ao『こんばんはー』


hina『aoだ!やほー!』

kuroko『こんばんは!(*´ω`*)』


ray『こんばんはです』

uka『こんばはー。今日もあっちぃですわね』

hina『まじそれな』

kuroko『ほんそれ_(┐「ε:)_』

ray『蒸し上がっちゃいますね』


ao 『まー、夏が迫ってきてるからな。てか、今日イン少ないな』


hina『だねえ。あたしら以外みんな落ちちゃったからねえ』

uka『いや貴方がインするのおせーんですのよ』

ao『ああ、そっか』

uka『そーですわ。もう23時ですのよ?遅すぎますわよ』


ao『ほーん?遅いと言えば、こないだ約束したクエストに一時間遅れてきたのって誰だっけ?高飛車お嬢様』


uka『うぐっ!?』


kuroko『u〜なんとかって人(u_u*)』

uka『あ、umikaさんのことですの?』

ao『おいww』

ray『罪をなすり付けたらだめですよukaさん』

hina『www』


uka『スミマセンデシタ』

ao『w』

kuroko『w(*´ω`*)』

hina『はやかったなー決着w』

ray『ですね(笑)』


hina『そんなことよりほら、aoはデイリーおわらそうよ』

uka『もたもたしてると日付かわりますわよ』

ao『あ、ホントだ』

uka『わたくしタンクしてあげましょうか』

ao『マジで?ありがてえ!頼む!』


hina『aoはいつも通り盗賊シーフかな?』

ao『うん、そーそー。近接でいく』


ray『あ、では私はヒーラー出しましょうか』

hina『そんじゃあたしは遠距離で弓かな』

uka『いや皆いつも通りっていう』

ao『確かにw』


kuroko『私は新しい家具手に入ったから、ギルドハウスのハウジングしてるねー。デイリー終わったら集合で!(っ・ω・)っ』


ao『りょーかいっ』

hina『はーい!』

uka『わかりましたわ』

ray『了解です』



――



ao『たでまー』

uka『マジでヘイト散らされてヤバかった』

ray『ごめんなさい(笑)』

hina『まあまあw』

ao『uka落ち着け。どうどう』

uka『馬!?』


kuroko『おかえりー(*´ω`*)』

hina『ただいまkurokoちゃん』


ray『わあ、すごい!今度は和風な内装にしたんですね』

kuroko『うんうん!こないだ観たBloodKrushのMVが和風テイストだったからさ、和風良いなってw(*´艸`*)』

hina『あーね!新曲凄いカッコよかったしね!』

uka『わたくしも観ましたわよ!あのドラムはかなりの難易度ですわね!』

ao『言うと思ったwおまえマジでドラム好きだよな』

uka『ふふん!』

ray『何を勝ち誇ってるんですか』


ao『ところで』


hina『ん?』

uka『?』

kuroko『?』

ray『はい』


ao『この間、四人でオフ会やったんだろ?どうだったの』


hina『あー!楽しかったよー!』

kuroko『めちゃくちゃ楽しかった(*´ω`*)』

uka『ネカマは居ないことが証明されましたわよ!残念でしたわね』


ao『いや何がだよ』


uka『来なかったことを悔やむがいいですわ!』

ao『おまえ俺をなんだと思ってるんだよw』


ray『aoさんも来たら良かったのに』


ao『いや、ほら俺男だし。一人だけ』

uka『そんなの知ってますわよ。前にあなたの歌声聴きましたし』

kuroko『hinaちゃんが撮った昔のカラオケの録音ね。上手かった(*´艸`*)』

uka『なかなかにお上手でしたわよ。悔しいけど』

kuroko『なんで悔しがるの!?Σ(・∀・;)』

uka『いやほら男の癖に女性キーの曲わたくしより上手く歌えてるから』


ao『いや、高さ足りてないし。下手だよ』


hina『aoは下手じゃないよ自信が無いだけじゃん』

ao『そりゃまあ。自信はないよ。だって俺ってほら、引き籠もりだし』


ray『それは貴方のせいではないですよ』

uka『おー、でたでた。また卑屈になっちゃってw』

ao『こいつ』

hina『こらuka!なんで煽るかなぁー』

uka『ぷぷっ、苛められっ子』

ao『ukaおまえ覚えてろよ』

uka『オフ会来たら謝ってあげますわよ』


kuroko『煽るねえwでもまあ私はaoの歌すごく好きだよ(*´ω`*)』

ray『私も好きです。綺麗な声してますよね』

hina『そうそう!aoの歌声は素敵なんだよ!自信持って』


ao『そっかありがと』


hina『いや軽ッ』

uka『軽い!?』

kuroko『!?Σ(・∀・;)』

ray『軽い!』


ao『ごめん、気持ちは嬉しいけど』


hina『そっか。まあ無理矢理は良くないか』

uka『え、バンドは』

kuroko『ボ、ボーカルは(´∀`;)』

ray『でもaoさんが楽しめないと意味も無いですし』


hina『気が変わったら言って。その時みんなでセッションしよう』

uka『まーそーですわね。気持ち乗らない歌は聴いていても微妙ですし』

kuroko『だねえ。まあその内だね。私達もそれまでにたくさん練習して上手くなろー!٩(๑òωó๑)۶』

ray『ですです!aoさんが気持ちよく歌えるように!』


hina『私達のロックバンド、ボーカルはaoだからね!待ってるよ!』


ao『ありがと、皆』



――......ッ?



なんだ?寒気が......風邪かな。そう言えば少し怠い。


『ごめん。ちょっと風邪ひいたかも。落ちるわ』


hina『マジで!?ao大丈夫!?』


『うん。ちょっと早めに寝るわ』


kuroko『あらまあ。暖かくして寝るんだよaoさんや(*´ω`*)』


『ありがと。おつでした』


uka『おつおつですの。おやすみなさいao』

ray『お疲れ様でした。早めの予防大切ですよaoさん』


『わかった。おやすみ』


俺はメニューを開きログアウトを押す。


(......なんだ?)


PCの画面。ネトゲのタイトルが表示されている。しかし、目が霞んで文字が読めない。

変に思い目を擦る。するとその時、指先が僅かに震えていることに気がついた。


あれ、これ風邪じゃないのか?もしかして、もっとヤバイやつ?


ゾクリと恐怖が背筋をなぞる。悪寒というのだろうか。それを意識した瞬間、より寒気が増したように感じる。


俺、aoこと青山あおやま 結人ゆいとは、引き籠もりの高校生二年生。


高校に入学してから僅か一ヶ月で不登校になり自宅から出られなくなり、それから約一年の月日が経ち、自室からもあまり出なくなった。音楽を聴きながらネトゲ三昧の毎日。


トイレやご飯の時は部屋から出るが、家族とは目も合わせず口も聞きたくないからイヤホンをつねに耳につけ、外界を遮断していた。


食事中、一度だけ妹の顔が視界に入ったことがある。未だに忘れる事の無いあの表情。心の底から軽蔑し、嫌っているような顔。

いや、実際に嫌われていたんだと思う。


こんなボサボサに伸び切った髪とよれよれのパーカーを着た引き籠もりの兄なんて見るのも嫌だろう。

俺だってこんなのが身内に居たら嫌だ。気持ちはわかる。


多分、学校でだって......俺のせいで肩身が狭い思いをしているんじゃないかな。


――ズキン


心臓が、頭が。全身に激しい痛みが走った。


明確に死を予感する体の異変。


(......ヤバい)


走馬灯。いつかのあいつのセリフが頭をよぎった。俺をイジメていた軽音楽部の同級生。クラスメイト。


『――知ってるか?一度落ちた人間は這い上がれ無いんだぜ』


俺は落ちた。学校に行けなくなって、人が怖くなって、どこにも居場所が無くなった。

だからもう俺の人生は終了したも同然なんだ。


激しくなる動悸。ズキズキと痛む胸を抑え、部屋のフローリングに転がりうずくまる。熱が高いせいか床がひんやりと冷たく感じる。


息が......呼吸が上手く出来ない。


ぼんやりした意識の中。幼なじみ黄瀬きせ 陽向ひなたの顔が浮かぶ。


『結人!あたしメンバー集めるからさ、いつか一緒にロックバンドやろーね!』


hina。ごめん、約束守れない。


こんな俺をずっと支えてくれた陽向。不登校になっても部屋に引き籠もるようになっても、リアルの人間では彼女とは繋がりが絶たれることは無かった。


気がつけば側にいてくれた。


こうしてネトゲで絡んでくれたり、音楽好きが集るギルドを作ってくれたり、側に居ようとしてくれた。


なのに俺は、陽向になにも返せていない。


(......悔しい)


このまま死ぬのは、嫌だ。


自信が無いなら、自信をつければ良かった。


どうせ死ぬなら、死ぬ気で何かをやれば良かった。


どうせ人生が終わっているのなら、時間があるのなら、恥ずかしい人間とレッテルが貼られているなら、それを逆手にとって挑戦すれば良かった。


(そうだ......やりたくても怖くて踏み出せなかった事。歌い手、バンド、YooTuber......)


この無意味な命に僅かにでも意味を残したかった。


俺は......そうだ......まだ、死にたくない。


――死にたくない。


「......あ、う......っ」


家族を呼ぼうと声を振り絞る。しかし、僅かに出るのは掠れた音だけ。


――死にたくない。


這いずり、部屋を出ようと扉に手を伸ばした。だが、扉までの距離は遠く、届かない。


――視界が暗転する。


(......あ、そういえば......机の、隠してある......エ◯ゲと同人誌......やば)


――死にたくない。


強い後悔を胸に、意識が途切れた。






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