第47話 遊び



「ですから、ほらこのギミックを起動させてくださいまし」

「これですか?」

「そーそー」


「結人、そっち敵いるけど」

「うお、マジだ!焦ったぁ〜ありがと陽向」

「いえいえ」

『ちなみに右にもいるぞい(^o^)』

「おお、危ねえ」


俺らが今プレイしているのは、MMORPG【SILENCE SIREN】の新ダンジョン。今日はスタジオも予約で埋まっていて、別に借りられるところもなく、rayさんの家でネトゲをすることに。

rayさん以外の俺、陽向、uka、kurokoはノートPCを持ち寄っていて普段とは勝手が違うため、ちょっとやりにくい。けれどこうして皆とリアルで顔を合わせながらやるゲームもなかなか楽しい。


(しかし、なんとなく予想はしていたが......rayさんってかなりのお嬢様なんだな。すげー豪邸)


この間、ライブ後に父さんが車で送った時に見てはいたけど、明るい時間に改めて目の当たりにするとその豪邸ぶりに、気圧されしてしまう。インターホン押すのを躊躇うレベル。


ふつーに庭に噴水やプールがあるし庭園に執事さんみたいな人いるしで、品のない言い方になってしまうが金持ちぶりが凄まじかった。

屋敷の中も広々としていて、緊張感で胃をやられそうになったが、rayさんの部屋は思ったよりも普通で今はリラックスできている。


まあ、普通とはいえ他から比べて普通なだけで、部屋には広いしトロフィーや賞状が飾られていてrayさんの只者ではない感がひしひしと伝わってくるのだが。


(まあ、前に言ってたもんな。ピアノの腕前がすげえって)


白いベッドに白い枕。花が活けられた花瓶に白猫のクッション。ふつーの女の子らしい部屋。

窓際にグランドピアノとエレクトーンとシンセがある以外はふつーだ。

ちなみにその窓から出たところはバルコニーになっていて、ぎり二人くらい座れるブランコが設置されている。天気の良い日はそこで読書をするのだとか。rayさんらしい。


ピロン、とゲーム内チャットが鳴る。


『ほらほら、aoくんぼーっとしてる場合じゃないぞー(ノ´∀`*)』

「なにをしてますのao!ほらアタッカー!働いてくださいまし!!」

「わるい!」


慌ててモンスターに攻撃を始める。隣にいる陽向がクスクスと笑い、rayさんからも笑っている声が微かに聞こえてくる。


「rayもちゃんとヘイトためてくださいな!攻撃攻撃!」

「は、はいぃ〜!」


叱られるrayさん。俺たちのパーティーはいつもukaがタンクをやっているのだが、今日はなぜかrayさんがやっている。

なんでも新しいことに挑戦してみたいとかで、ukaが指導している。


新ダンジョンで大変なんじゃないかと心配したが、rayさんは学習能力が高くあっという間に基本の動きを覚えてしまった。ならなぜ怒られているのか?それはポンだからである。


「ヘイト散ってますわよ!痛いっ!こっち攻撃きてますわ!?」

「すみません、それはわざとです」

「!?」

「なんかムカついて」

「ヘイトを確認してわたくしが二番目に高いことを理解した上で......!?やりますわね、ray」

「殺されたくなければもっと優しくしてください」


素直で優しくて温厚なrayさんだが、たまにちょっと黒い。勿論これはじゃれ合いの範疇だ。陽向とkurokoが爆笑してる。


「くっ、しかしヒーラーであるわたくしが倒れれば全滅ですわよ」

「死ぬ時は皆で......仲間でしょ、ね?ukaさん」

「怖い!?わかりました、すみません!!優しくしますからヘイトを!!」


にこりと儚げに微笑むrayさん。怖えよ!


そんなこんなで午前中から始めたネトゲが12時を回り一段落した。少しつかれたのかkurokoはrayさんのベッドに項垂れ、ukaがそこに覆いかぶさった。その時「うぐぁっ」と潰されたkurokoのなんともいえない声が聞こえた。


「そういえば橙子ちゃんは?」

「ん?ああ、あいつならどっか遊びにいったよ。なんか同級生と遊園地行くんだって」

「あ、そうなんだ」

「どうして?遊びたかった?」

「うん、まあね。いつも結人にくっついてるから居ないのがちょっと違和感」

「え、マジでか......」


違和感覚えられるレベルでセットで見られてるのかよ。それはちょっと困るな。多少距離を置くか。


「でもさ、二人の仲が戻って良かったよ。一時期はかなり険悪だったしね」

「あー......まあ、そうだね」

「今度さ、みんなで遊園地いかない?橙子ちゃんも誘って」


「遊園地!!」


トイレへと行っていたrayさんが戻って来た。そして開口一番に遊園地と口にするその様子から「遊園地好きなんだ」と察せられた。


「いいですわね、遊園地。貸し切りますか」

「いや貸し切るなよ」

『これだからukaお嬢様は(´・ω・`)』

「あん?」

『またお父様に叱られるよ。無駄遣いするなって(*´∀`*)』

「ひいいっ!?」


ガクブルになるuka。おそらくソシャゲでの件を思い出してるのだろう。だいたい貸し切りとか味気無いだろ。わいわいしてて活気あふれてる空間が楽しいんじゃないのか?引きこもりが想像するに。はい、すいません、遊園地行ったことないんすわ。生粋いってすいません。


「でもでも、いーですねえ!遊園地!」

「rayさん遊園地好きなの?」

「はい!あ、まあ、行ったことはありませんが」

「あら、そうなんですのね。では思い出づくりに行ってみましょうか」


『いくー!٩(๑òωó๑)۶』


「それじゃ後でスケジュール合わせよっか。空いてる日教えてね」


こうして我ら【Re★Game】のパーティーは遊園地へと挑むこととなった。てか、橙子......ほんとに遊園地いってるんか?なんとなく違う気がする。



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