・Memory02(ゆうひ視点)



『え?あ~……小学生男子みたいなアプローチだよねぇ』



 電話の相手はまひるさんだ。僕は耐え切れなくなって彼女に連絡してしまった。



「アレが好きな相手に取る態度なのだとしたら、僕は今後一切女性からアプローチを受けたくない」

『あはは。何があったのかは聞かないでおくよ』

「……そうしてほしい」



 乙女心なんて僕には到底理解出来ないだろう。



『ゆうひくんはさ、城ケ崎の事……やっぱり許せないよね?』

「……」



 昔の僕ならためらうことなく即答出来ただろう。けれど、今の僕は城ケ崎と同じ舞台の上に居る。やった事や経緯は違えど、許されない罪なのは同じだ。それに、城ケ崎よりも僕の罪の方が遥かに重い。



『無理強いをする気は無いんだけど、もし……万が一可能だったら、さ。今の城ケ崎を少しでいいから見てみてほしい。ほんと気が向いた時でもいいから』



 そんな事、命令さえしてくれればキミの言う事ならいくらでも従うのに。彼女はそうはしない。そして僕自身も、心のどこかで彼女はそんな事をするタイプじゃ無い事を理解していた。



「……分かった。……善処する」

『ありがとう。でも、ほんと無理だけはしないでね。約束』

「……うん。約束、する」



 でも、確かに、昔の城ケ崎に比べたら随分、嫌かなり話しやすくなったように思う。それもこれも、きっとまひるさんと出会ったからに違いない。



「……まひるさん」

『なーに?』

「あの、さ……城ケ崎に、会いたいとか……思う?」

『え!会いたい!』

「即答……」



 驚きはしたものの、正直返答は予想がついていた。


 いつだってまひるさんは前だけを見てるのだから、眩しくて、嬉しくて、つい笑ってしまった。


 そうして僕は、勇気を振り絞って城ケ崎と連絡を取る事にしたのだ。





「あぁ……!アナタがゆうひの体の中に居た女の子なのね」

「信じてくれてありがとう!また会えて嬉しい!」

「じゃあ、僕はもう帰ってもいいかな?」



 ガタッと席を立とうとしたら、両側から袖を掴まれた。



「駄目よ!」

「ダメ!」

「なんで……」



 どう見たって、男一人に女二人なんて違和感が激しい。人目が気になって仕方がない。



(帰りたい……。昼中くんも誘えば良かった)



「後から陽一も来るからここに居て」

「まひるさん、僕の心の声読めるの?」

「……ゆうひくん大丈夫?異常事態なの?」



 真面目に問えば、心配するような目で返って来た。



「どう見てもこの光景は異常事態だよ」



 もはや断言出来る。居心地の悪さは過去を振り返ってみてもトップスリーに入る。


 城ケ崎から衝撃の告白を受けたから尚更だ。どういう顔で、どういう態度で、どういう立ち位置で居たらいいのか最早訳が分からない。




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