・Memory04(ゆうひ視点)
『まひるさんに、どうしても会って話がしたいです。会えそうな時に連絡をください』とメッセージを送った。
それから返信が来たのは三日後だった。
僕は、どう謝罪をするべきか、何度も何度も脳内シミュレーションを繰り返していた。
そうして待ちに待ったまひるさんに会える日。
情けない話、緊張のあまり何度も病室に入ろうとしては入れずウロウロとしていた。見兼ねた昼中くんに頭を叩かれて、ようやく病室へと足を踏み入れる事が出来た。
やっぱり昼中くんを連れてきて正解だったと思う。
昼中くんには、僕が声をかけるまで病室の外で待機してもらう事になっている。彼女にだって昼中くんと会うのにタイミングが必要だと思ったからだ。
病室は四人部屋だったけれど、退院したのか、誰も入って来なかったのか、まひるさんが窓際で一人のようだった。
淡いピンク色のカーテンで仕切られているそこへ声をかける。
「……っあの!夜風、ゆうひです……」
「どうぞ」
まひるさんの声がした。
ゆっくりとカーテンを開ければ、痩せ細ってはいたけれど、どこか血色の良い顔をしたまひるさんが居た。
僕は安堵と共に勢い良く頭を下げた。
「ごめんなさい!!謝って済む問題だとは全く思ってない。取り返しのつかない事をしたと本気で思ってる。許される事じゃないのも分かってる。けど、でも……本当にごめんなさい」
ゆっくりとその場に土下座をする。
しばらくの沈黙の後、まひるさんが口を開いた。
「あの後、大変だったんだよ」
「ごめんなさい……」
「気を失ってて、目を開けたら地獄のような痛みと恐怖を耐え抜いてやっと今、だよ」
「すみません、でした……」
謝罪以外に口に出来る言葉が何も見当たらなかった。
どれだけ痛い思いをしただろう。どれだけ苦しかっただろう。どれだけ怖かっただろう。どれだけ……絶望しただろう。
僕のちっぽけな脳みそじゃ、彼女の苦痛の一ミリも理解出来ないに違いない。
「それでも……僕はキミが生きていてくれて心底安心したんだ。キミが生きてて良かった。随分身勝手な話だって分かってる。ただの僕のエゴの押し付けだって。こんな痛い思いするくらいなら目を覚まさなきゃ良かったってまひるさんは思ったかもしれないのに……。それでも、安心したんだ。生きていてくれて……ありがとう」
僕はどうしても僕の思いを伝えなければと思った。
僕なんかよりキミの存在はよっぽど価値がある。だから、あの時、キミだったら僕の人生を丸ごと好きにしてもいいやって思えたんだ。
「償わせてほしい。僕が生きてる限り、キミを支えるから。絶対一人にはさせないから。僕の出来る事を……、いや!出来ない事でも出来るようなるから!!なんでも頼ってほしい」
僕は僕の一生をキミに捧げるよ。
それが唯一の償いだと身勝手にも思ってる。
「……っ」
「……っ、もちろんそんなんじゃ全然償い切れないのも分かってるから!!」
勢い良く顔を上げてそう伝えれば、視界に映った彼女が両手を顔に当てて泣いているのが分かった。
僕は頭が真っ白になって狼狽える。
(泣かせてしまった!!どうしよう!!)
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