第2章 アルケミストツールズ1 アフターストーリー
第25話 置き去りヒロイン
昨日は氷上さんと日野さんだけが願いを叶え、俺と司は願いは保留にした。
妹ちゃんも願いを保留にしたのは意外だったけど――それ以外は特に何もなく家に帰った。
家に帰ってから、結に時乃兄妹の事について質問攻めにされた。
特に妹ちゃんについて質問されてたが、何もないからな?
妹ちゃんは司ラブだし、俺の事なんて眼中にないはずだから――結には妹ちゃんには好きな人がいるって説明してもなかなか引き下がってくれなかった――
もう勘弁してくれ……
そして今日、6月5日の朝――学校に行き教室の自分の席につく。
シナリオ通りなら、日野さんと氷上さんが転校してくるはずだ。
まぁ昨日会ってるし驚きも何もないとは思うがな……
――そう思っている時、先生が教室に入ってくる。
「みんな席に就け~、今日は転校生を3人紹介するぞ」
……はい?――3――人?
――待て待て!?
他の転校生なんて聞いたことないぞ!
シナリオが……シナリオが壊れてく…………
教室のドアから確かに3人入ってくる、そしてその顔を見て俺は思い出したのだ――シナリオを終わらせるまで一度も会わなかったヒロインの事を……
日野さんの隣にいる、金髪縦巻きといういつの時代の悪役令嬢だよとツッコミをしたくなる髪型、そしてこの町でもお金持ちで有名な茨木財閥の長女、アルケミストツールズ最後のヒロイン――茨木玲、神具ヤールンの元ホルダーである。
――そして脇に控えているのが、小学生と見間違うほど低身長、紫色の髪のロリ系女子――柴田琴子、神具グングニルの元ホルダーでヒロインではないが、あちらの世界では一定層人気があった。
本来なら、蓬莱学園と姉妹校の――蓬莱蓬莱女学園に通っているはずの生徒なのだが、何故?
司は俺の方を向くが首を横に振る……
知らないよ!俺こんなシナリオ知らない!!
「それでは自己紹介を――」
「初めまして皆さん!わたくしは、茨木財閥の長女!――茨木玲ですわ!!――こっちが執事の緑川琴子、わたくしのおつきですわ――以後お見知りおきを!」
「えっと――日野詩織……です――皆、よろしくね?」
日野さんが圧の強いお嬢様のせいで控えめな挨拶になってしまっている――本来なら中二病全開のあいさつをかましてクラスをドン引きさせるのがシナリオ上でそうなってたのに……
――あぁもうめちゃくちゃだよ!
「そ、それではお二人は空いてる席に座って下さい――えっとそれでは授業を始めます――」
まじでどうなってるんだ……
――しばらく時間がたち、休憩時間になる――茨木さんと日野さん、柴田さんはクラス中に質問攻めにあっている。
俺と司はそれを遠巻きに見ている。
「ねぇねぇ?日野さんと茨木さんはどうしてこの学校に転校してきたの?柴田さんはおつきだからだろうけど――」
「私は親の都合――かな?」
「聞いていただけますか!――わたくしの転校してきた目的は、未来の旦那様を見つけることですわ!」
――旦那様?あれ……でも確か茨木さんって……
司が俺にクラスの人たちに聞こえないように耳打ちする。
「なぁ守?あの人確か女の子にしか興味ないんじゃなかったのか……」
「そのはず……なんだけど――だから落とすのにも苦労してようやく落とせるはずなんだよ……どういうことだ?」
謎だ――どういう心境の変化だろう。
契約していた時の記憶は1のルールが適応して、ホルダーじゃなくなると自動的に消えるはずだし――ツールズがらみじゃないのは間違いないな。
「そう、あれは昨日のこと――わたくしが一人でいるところを暴漢4人に襲われそうなところを同い年くらいの男の子に助けていただきましたわ!あのように自分の身も顧みず優しい男性とは一度もあったことがございません!!――この町の唯一男子が通えるのがこの高校なので、ここにいると確信しておりますわ!その方の側に少しでも長くいるため女学園から転校してきたのですわ!!」
――昨日……そして暴漢4人……男子高校生が助けた……このワードにすごく聞き覚えがある……
俺をジーと司が見つめる。
「守じゃん原因――どうすんのこれ?」
「……いや、どうするったって――」
「――きっとその方は王子様のようにイケメンですわ!性格もよくて勉強もスポーツもできるはずですわ!!」
――言えるかぁぁぁ!!
このハードル上がった状態で――あっそれ俺です……
――とか言えるわけないだろッ!!
「アハハ!イケ、メン……勉強――出来、る……あ~腹痛い……」
司笑ってんじゃねぇよ!――よし隠し通してやる!
――茨木さんの幻想を壊さないため絶対に俺は言わないぞ!!
「……二人とも……教室移動……いこ?」
「いいよ、ありがとう神宮寺君」
そしてさらに時間がたちお昼休みに俺と司、風間君と神宮寺君の男子グループで食堂にお昼を食べにいく――
日野さんはクラスに友達ができなかったからか、妹ちゃんと氷上さんと一緒に食堂にいるのを見た。
――氷上さんに煽られているのか日野さんが泣きながら詰め寄っていく、それを妹ちゃんが止めるという光景を目撃する。
――日野さんは分かるよ、その気持ち痛いほどわかる――負けないで日野さん、応援してる。
俺も昔は司以外友達いなかったしな……
昔の記憶がフラッシュバックしたので、ちょっと悲しい気分になった。
いいもんね!今は友達が二人も増えてるしぃ!!
「――なんか……鈴木、君……泣いて、る?」
「気にしないで、時々情緒不安定になるんだ」
「かわいそうだな……」
俺たちは昼ご飯を談笑しながら食べ進める。
でも俺はこの時気づくべきだった。
――目立つ奴は高校でどうなるのかを……
俺と司は知っていたはずなのに気づけなかったんだ。
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