第22話 魔王復活

間違いない!――こいつ俺が倒した魔王だ!


なんで復活してやがる!!


しかも俺の体で、それに頭にも違和感がある――



「急にどうしたのこの人!?頭に変な角生えてるし!」


「魔具に乗っ取られてるんだよ、昨日壊したはずなのになんで復活してるのよ!」


「まずい状況……というわけか――」



くそ!!体動かせないんじゃどうしようも……

――魔王は俺の体を使って立ち上がる。


「聞け愚民ども!吾輩は魔王ライオスである!!さあ恐れ振るえるが――」


「――ちょっと黙ってくれるかな?」


「ふぎゃあッ!!!」


――司は容赦なく、神具ソハヤを俺の腹に突き刺す。

魔王は威厳もへったくれもなく、情けない声を上げた。


いや容赦ねぇな、おい!!



「き、貴様!この体は貴様の友人のものであろう!?よくなさけ容赦なく攻撃できるな!?」


「僕って、魔王戦は基本会話をスキップする主義なんだよね、長い会話とか聞いてられないし、正直どうして世界滅ぼそうとするとか興味ないしね――とりあえず落ち着いたら?興奮すると体に悪いよ?」


「「「いや、落ち着けるわけがない(けど)!?」」」



 ――その場にいた全員がハモッた。


司よ……その気持ちがよく分かるが聞いてあげて?


魔王さんがせっかく前口上述べようとしてくれてたのに……というか俺刺されてるのに痛みゼロだな。


――心の方はダメージ負ってる気がするが……



「安心しなよ……今刺してるのはあくまで魔王の魂に差し込んでるから肉体にはダメージゼロだ――そういう能力だろ?これは……」



いや確かにそういう使い方出来るとは言ったけど

――言ったけどさぁ……普通ためらったりしない?



「いやよかったよ、昨日飲み物に入れた、壊れた魔具の欠片が効いてないんじゃないかとヒヤヒヤしたもん、魔具も弱くはなってるけど、力が戻ったみたいだし、魔具としてカウントできるね――これで僕の計画に移れるよ」


「友に何たる仕打ち……貴様それでも人間か!!――この悪魔め!!」


「「「「魔王にそれ言われてもなぁ……」」」」



お前あのクソまずドリンクにそんなもんいれやがったのか!


通りで時々じゃりじゃりするわけだ――お前体の自由が戻った時覚えてろよ!?



「これで合計10個のツールズがこの場にあるわけだ、これを全員に一人二つ持てるように分配します――そしてみんな博物館に向かって終了宣言すればあら不思議、5人全員が勝者ってわけ――昨日守にルール確認した時から思ってたんだけど……ルール、ガバガバ過ぎない?」


「確かに――誰も1人が勝者、なんて言ってなかった……盲点だったよ、確かにそれならこの場にいる全員が願いをかなえられる」


「おい!吾輩を無視するんじゃない!!」



 頭いいな司!

 よし俺を利用しようとしたことは水に流そうじゃないか。

 全員ハッピーなら俺が体張った意味あるし――魔王が何か言ってるが…全然耳に入ってこない……



『あの……鈴木さんを助けなくていいんですか?』


「おっと忘れてた――それじゃあ魔王、魔具の再生に協力感謝するよ――お礼に地獄へ送ってあげる」


 ――司は刺した神具ソハヤをさらに奥にねじ込む。


「バカなッ!!この吾輩が……一度ならず二度までもッ!!神と同じ結末など吾輩は断じて――」



――それを最後に魔王の魂だけが斬られた、もう奴の魂はこの世にはいないだろう……最後まで不憫な奴だな、出落ちにもほどがある。


俺の頭から角が落ち、それが魔具として機能していることも、契約が完了していることも確認できた。



「さてっと、博物館に向かおうか?それで全て終わるから」



――そう終わる……自分が願うのは、俺と司の元の世界への帰還だ。


俺が2人で元の世界に帰る事を願えば、この世界ともお別れすることになる――まだ名残惜しいし、やり残したこともあるけど……所詮俺たちはこの世界にとってのイレギュラーな存在――なら元に戻すことが一番なんだ……



『『こんな結末は認めないわ(ぞ)!!!』』


「感傷に浸ってるときにうるさく叫ぶんじゃ――」



言葉を遮るようにドカンという音がファミレスの外から響き渡る――窓の外を見ると動物を混ぜ合わせたような、異形がこちらをのぞき込んでいることに気づく……


「守!!」


「分かってる、よッ!――譲渡!か・ら・の・全力フルスイングッ!!!」



俺は司が投げ渡した、神具ソハヤを受け取り、フルスイングする。


神具ソハヤから斬撃が飛び、異形の目を横一文字に切り裂く。



「お゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!」



異形はひるみ、後ろに倒れ、砂となって消える……

――覗き込んできた窓から驚愕の光景を目にすることとなる……


一軒家ぐらいありそうな身長をした異形たちが町を跋扈している光景――この様子を俺は見たことがある……


アルケミストツールズのとあるルート最終局面、知能なき異世界の生物が、その姿を視認できない一般人と町を容赦なく蹂躙する……知るのはホルダーたちのみ――


モンスター襲来イベントだ!――けど、何故それが今日に現れる!!


まだ先のはずだろ!?――アダムとイデアの二人じゃ、モンスターの転送装置にMP注ぐにしても、まだ時間がかかるはずなのに……


俺がシナリオを変えたからか……俺のせい――なのか……



『兄さん!姉さん!あなたたちは何てことを!!』


『はっはっは!(私)俺が王になれないのなら道連れよ(だ)!!全員敗北よ(だ)!!!』


『衛兵!この二人をとらえろ!マナ封じの手錠もつけるのも忘れるな!!』



あちらではアランとイデアが捕まったようだが、今はそんなことはどうでもいい――モンスターが町で暴れたら大変なことになる!


――考えるのは後だ!まずモンスターを何とかするのが先だ!!



『サード俺の体ごと次元をずらせ!』


『おけぇおけぇ~』



――これで俺は透明人間になれる……だったか?

契約してない奴には見えなくなるわけだ、司の言うことだ。

間違いはないだろう――


――俺は窓に手をかける。



「先に博物館に行ってろ!――俺は後から追いつくから!!」



「待てよ、守!!」



――司の制止も聞かず、俺はファミレスから外へ飛び出した。

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