第23話 モンスター襲来

 俺は町中を疾走する――神具を持ちながらモンスターの居場所を探す、まだどこも叫んでいる人や騒ぎが起きてないのが幸いだな。



『オリアナ様!転送されたモンスターの数と場所は分かりますか!』


『はい!送られた数は11体――博物館前に5体、さっき倒していただいたのが1体――残り5体は町にばらけるように配置されてますね』


「厄介だな……」



博物館前ならあいつらが何とかしてくれるとは思うが、残り5体は俺一人で何とかするしかない――


MPはこいつが何とかしてくれる。

新たに手に入れたツールズ、魔具ライオス――マナドレインにより周りのマナを極限まで濃縮し、体に取り込むことでMPを短時間で回復できる。


本来なら魔術構築とかいうこともできるらしいが……壊れていて俺は使えない。

――いや壊れているから俺でも使えるようになっているといってもいい。


神宮寺ともう一人以外が契約するとマナ暴走を起こして、体がはじけ飛ぶ

――そうならないように司は調整してくれたのだろう。


この展開も読めてたっていうのか?――司?



「それにしても数が多すぎる!――MP回復手段を手に入れたとはいえ、これじゃいくらMPあっても足りない!!」


『少し提案なのですが……神具ソハヤは確かこちらの記録だと、目視で斬りたいものを思った通りに切り裂くことができると記載されてます……なら全てを目視できる位置に行けば一度で倒せるのではないでしょうか?』


『それだ!さすがオリアナ様だ頭いい!――まじ天使!!』


『いえ私は神族と魔族のハーフなのですが――』



推しの言葉を遮らせていただいて、俺はより高いところに転移する……

博物館裏手にある雑木林を抜けた先に、地上から390メートル――蓬莱町を一望できる蓬莱山と呼ばれるところがある。


――その頂上にたどり着く。


ここから複数のモンスターの姿を視認する、だが草や木などが邪魔して博物館付近のモンスターを視認できない……だけど他のモンスターはすべて視認した――よしこっからなら狙えるな


――バッターボックスに立つように神具ソハヤを構える。



『いいですか?その神具はイメージが大事です――集中を……』



イメージ――イメージか……


投げてきた球一つを打ち返すことことはしてきたが――

さすがに複数の球を当てるイメージ何て、俺にはないぞ……


こんな時、司ならどうする――そう言えば昔こんな話したことあったな……




――いいかい守?

バット使って喧嘩する機会あったら体の芯を狙うんだよ、ボールと一緒さ。


――何?複数人相手ならどうするのかって……?

それはね、真っすぐな1本の線で描けるように、敵が並んだ時に思い切り、線をなぞるようにフルスイングだよ!


え!?喧嘩にバット使うなんてスポーツマン失格だって?

――だったら聞かないでよ!真面目に答えちゃったじゃん!!




 懐かしいな……喧嘩なんてしないしバットをそれに使わないとは決めてたけど、今回は刀だから大目に見てくれるだろ!


ありがとう司――お前のアドバイスが役に立つぜ!!


――刀を握りなおす……真っすぐな1本の線で描けるように敵を並べて考える……その線に沿って……



「思い切りッ!フルスイングッ!!!」



 神具ソハヤから斬撃が飛び出す――距離があるがそんなものお構いなしに威力が落ちることなく飛んでいく――


ビルを斬撃が通過していく――狙うはモンスターのみ!


――モンスターは何が飛んできたのかも確認できず、5体まとめて一刀で斬り伏せられる。


遠くからでもズシンという音がこちらまで響き、その直後――砂となって消えて見えなくなる……



「や――った……できた!」


『お見事ですね!』



 やった!推しの賛辞もいただきました!!

――思わずガッツポーズをとる。



「――ってそうだ!急いであっちとも合流しないと!!」



司もいるし大丈夫だと思うが、それでも心配だ。



『そうですね、博物館前のモンスターは2体にまで減りましたが、少し――危険な状況かもしれないですね……」


『サード頼む!急いでくれ!!』


『はぁい』



博物館前に転移すると、モンスター2体が鎖のようなもので縛られ、それでもなお、異形の手を司たちに伸ばそうとする。


氷上さんは気絶している日野さんをおぶり、妹ちゃんは魔具グレイプニルで足止めを――司は後ろで神具グングニルを放っているが火力不足で若干しかダメージを与えられていないようだ。


俺が神具ソハヤを持って行ったからこんな事態に……

いや、今は落ち込んでる場合じゃない!――今することは!!



「司!!受け取れッ!!!」



――俺は神具ソハヤを司に投擲する。



「遅いよ!――けどタイミングばっちりだ!譲渡!!」



――司が片手で神具ソハヤを受け取ると、刀を軽く振るう。


斬撃が飛び、モンスター2体の首を両断する。

――さすが司だ、一撃かよ……


モンスターの死体は砂となって消える――

もうこの辺一帯に脅威はない。



『これで全て討伐完了です!皆様お疲れさまでした!』


「はぁ……疲れた――おにいほめて~」


「よしよし」



相変わらず仲いいな時乃兄妹……



「いつまでおぶさってるんだ!はやくおきろ!」


「ぐわッ!なにすんのよ!」



こっちもいつも通りか……氷上さんに日野さんは放り出された――

日野さんは怒りながら詰め寄る――多分日野さん、神具ミョルニル使ったな。

――あれ一撃が強いけど、その後神具の余波でしびれて動けなくなるんだよな、真っ先にそれを使うのすごいな……


氷上さんも色々文句言ってるけど、何だかんだ言って、動けなくなった日野さんをおぶってあげてて、お互いそこまで悪くは思ってないとは思うだよな。

――喧嘩するほどなんとやらだ……



「はいはい、百合百合してないでさっさと博物館にいくよ」


「「だれがこんな奴と百合よ」」



――やっぱ仲いいじゃねぇか……

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