第49話 能力転移
心の中でみんなに感謝をしていると司がパンッと手を叩き注目させ、皆が一斉に振り向く。
「さてと、守の謝罪も終わったわけだし――本題、入ろうか?」
「襲撃してきたあいつらについて、だな」
俺はあの魔族姉妹たちを見たことがない、設定資料集にも記述は一切載っていなかった。
しかも、フィフスどころか他の2人が持っていたツールズも見たことがない――あれは一体……
「守、あいつらから奪ったツールズ一旦机に出してくれるかな?僕もみんなにツールズ返すね」
俺は持っているロザリオ型のツールズと指輪型のツールズ、フィフスを一旦机に置き、司は借りたツールズの返却をする。
返却が終わるとくるりと向き直り、司は机の上にあるツールズを凝視する。
「これが今回あいつらが使っていたツールズ――オリアナ、このツールズたちに見覚えは?」
『無いですね……少なくともこちらにある資料に該当する物はないですね』
フィフスは分からないのは当然として、他の2つのツールズをオリアナ様が知らないとなるとあちら側のツールズじゃないのか?
基本的にツールズはあちらの世界にしかない、ナンバーシリーズっていう例外があるにはあるが……
「つまりフィフス以外と契約すると何かしら問題があるかもしれないってことだね――守はどう?今契約してるの君だけど……」
「特に異常はない……ナンバーシリーズのおかげか知らないけど操られてるとかそういった感じはしないな?」
不安も全部話せたし、前までのどす黒い感情は消えた。
むしろすがすがしい気分だ。
このまま契約を俺にしておくのもいいけど、今回みたいにバラバラに襲われた時に対処できなくなるのは非常にまずい――なんかいい手はないかな……
「今回みたいなこともあるし、戦力はばらけさせた方がいい、1人だけでも持ちこたえられるくらいに、そのためには――」
「――ツールズの能力は多いほうがいい、でしょぉ?主人公様?」
みんなが俺の方に注目する。
あれ?体が動かない。
視界も固定カメラで見るようなこの感覚……
またこのパターンか……いい加減にしてくれよサード。
「やっほぉ~、さっきぶりだね?」
「サードか、一体何の――」
「契約しなくてぇ能力だけほしいんでしょぉ?ワタシがそれ叶えてあげるぅ。――まぁ、迷惑かけてお詫びって、ことでぇ」
司の話をぶった切って、サードは話し続ける。
サードが俺の体で、妹ちゃんと氷上さんを指さす。
指を向けられたことでビクッと2人は怯える。
「能力の転移、承認してぇもらえるぅ?」
「――いいだろう。まず私から試せ、だが分かっているな?もしなんかあった時はその時は……」
「はい、能力転移完了っと」
サードは氷上さんの話を聞かず、能力転移でフォースに指輪型のツールズの能力を移した。
いや、話聞こうぜ?
見てみなよ、氷上さん格好つけようとしたのに固まっちゃんてるじゃん。
ちょっと頬が赤くなって、手がプルプル振るえてるよ?
「どうぉ?フォースちゃんにぃ追加してみたけどぉ?」
氷上さんは能力を使ったようで、姿がぶれる。
見た目が、日野さんの容姿に変わり、日野さんが2人並んでいるように見える。
ほんと、氷上さん、日野さん好きね?
化けた氷上さんが日野さんではしないようなバカにした嘲笑の表情になる。
うわぁ……こんな日野さんみたくねぇ……
「日野のバカ面に変えてみたが、どうだ?」
「誰がバカ面よッ!!」
日野さんが日野さんに掴みかかるという、もうこれ意味わかんないな……
妹ちゃんが間に入り、なんとか事なきを得た。
能力転移は成功した、妹ちゃんもそれを見て安心したのか、能力転移の承認をして、ロザリオ型のツールズの能力をセカンドに移した。
能力転移させた2つはいつものように収納する。
氷上さんと妹ちゃんはこれでいいだろう。
「あとぉは……」
サードがフィフスをテーブルから掴み、日野さんに差し出した。
日野さんは突然の事で、あわあわとしている。
「わ、私?」
「そだよぉ――この中でフィフスちゃん使いこなせるのぉあなただとぉ思うからぁ」
サードが俺の体でにこりと笑う。
日野さんは一瞬手を出すのためらったが、いきおいよく掴んだ。
「じょ、譲渡!」
俺の体からフィフスとの繋がりが断たれた。
これで日野さんはナンバーシリーズ、フィフスのホルダーになったわけだ。
嬉しいのか、日野さんは飛び跳ねて喜んでいる。
これで司以外が全員ナンバーシリーズのホルダー……あれ?
もしかしてサードそれ狙って?
「じゃあ、ワタシ終わったぁから帰るぅねぇ……」
「えっ、僕には?」
サードは俺の体であっかんべーと舌を出して俺と体を入れ替えた。
ようやく体動かせた……あの中いると窮屈なんだよ。
目の前には額に青筋を浮かべた司が……
「あいつ、全然反省してないッ!」
「サードの代わりに謝っておく、まじですまん司」
どうして司をそこまで嫌うかね?
嫉妬?よくわかんないが、なるべく仲良くしてほしいんだが……
『あいつにぃ謝るくらいならぁ死んだほうがましぃ!』
『――そこまでか』
俺はため息をつく、司が絡むとサードほんと俺の言うこと聞いてくれない。
他の事だと言ううことちゃんと聞いてくれるいい子なのに――
「それにしても、鈴木の姿でサードの口調やると割とキモイ」
辛らつだなぁ……
いや、それは俺も思ってた――思ってたけどさぁ?
「妹ちゃん……それ言わないでよ、俺も気にしてるか――」
「妹ちゃん言うな!――あと、おにいとバカはさっさと風呂に入ってくる!!さっきから海の匂いがキツイ!!!」
「「は、はい……」」
俺たちは妹ちゃんに促されるままに着替えを持って大浴場へと向かった。
2人とも海水と砂まみれだったしなぁ……
パッパッと服を脱いでシャワーを全身に浴びる。
……というかよく俺たちよく抱えてこれたな?
学生とはいえ男子高校生2人をあそこまで運ぶのは重労働だ。
あとでお礼言わないと……
大浴場で体を洗いながら、そんなことを考えていた。
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