第43話 談話室での戦闘

「ほんと最悪ね……」


「あはは!いつまでもつかな?」



私は鎖のツールズで角の生えたピンク髪をポニテにした女性を拘束している。

この拘束も私のMPが尽きればそれでこの角女は解き放たれてしまう。


詩織ちゃんはやつに空手の上段突きでヒットアンドアウェイを繰り返しながら、何度も攻撃してるが全く効果がない。

翠ちゃんも自分がツールズが使えないくなってる現状で物を投げて応戦している。


本当にどうしてこうなったのよ……


朝に詩織ちゃんと翠ちゃんの3人で食事までの間談話室で話をしてたらこいつがいきなり現れて、襲い掛かってきたんだ。


詩織ちゃんが最初に襲われて、角女が手で詩織ちゃんに風穴を開けた。

ツールズのおかげで傷も回復して命に別状なくて本当によかったと思う。


だけど、詩織ちゃんが別のツールズ使おうとしてそこで気づいたんだ――他のツールズが使えないことに、私と翠ちゃんも試したけど、使えるのはこの鎖のツールズと詩織ちゃんの不死鳥が彫られた腕輪型のツールズだけだった。


なんでこの2つしか使えないか分からない、多分角女から出てる赤い霧がツールズが使えない原因だ。

もしツールズの能力ならあいつから奪えば、他のツールズが使えると思うけど……

――霧があるせいで角女の姿がはっきり見えない。

これじゃどれがツールズか分からない。


しかも私の鎖のツールズが弱まったところから反撃してくる。

全体的に強くしたいけど、部分的に強くしないと角女の力が強すぎて抑えきれない。

一番怪しいのは角だけど、下手に近づく事もできない。


そして現在、拮抗状のままに両者にらみ合いの状態が続いている。

霧がだんだんと濃くなって、角女の姿もおぼろげになってくる。



「どうしたら……」


「あ!いたいた!!お~い」



談話室の入口から女の声が聞こえた。

振り返ると角女と同じ容姿をした女が立っている。

違いと言えば、髪をサイドテールにしていることと……

あのバカが全身血まみれで女の手で引きづられてきたことだ。


なんであっさりやられてるのよ……

鈴木をポイっと捨てて、私には興味を示さず、真っすぐと角女に向かっていく。


「ごめ~ん、遅れちゃって」


「遅い!さっさと来なさい!!」



霧が後ろから来た女の前だけ晴れ、角女の正面だけが開ける。

それをとことこと走っていく。

中に入ると再び霧に包まれる。


最悪ね、仲間も増えてますます状況は悪くなった……



「ねぇ?この首から下げてるのあたしほしい」


「はぁ?あげるわけないでしょ?あんたもツールズ持ってるんだからそれで我慢しなさい!――ちょっと触るんじゃないの!!」


「ふ~ん、これがツールズなんだ…………じゃあもらうね?――譲渡!」



後から来た女の声が響いた瞬間、外にまで広がっていた霧がぱっと晴れた。

角女は拘束されたままだが、後から来た女がさっきまでつけていなかったロザリオを首からかけている。

もしかしてあれが霧を発生させてたツールズ?



「なにしてんのよあんたッ!!」


「おっと!」



角女が鎖の隙間から蹴りを繰り出そうとしたが、後から来た女は瞬間移動のごとく私たちの側まで移動した。


何?――仲間割れ?



「あんた私の妹じゃないわねッ!!――まさか妹のツールズ使って……」


「そっか、この子妹なんだ?――なら俺を襲った責任も姉がしっかりとってもらわないとねぇ?」



男のような低い声に変わった瞬間、後から来た女の姿がぶれて見える。

姿が変化していき、小柄だった女の姿はだんだんと男のシルエットに……

その姿は……



「「「鈴木(君)!?」」」



姿が鈴木の姿に変わる。

私は後ろのボロボロになった鈴木だった者の方を見るとそこには倒れているのはさっきまで立っていた女の姿だった。

どうなってるの?



「お前!よくもあちきの妹を!!」


「気絶させただけだって――俺なんか血まみれだったんだからな?」



よく見るとパーカーが血に染まっている。

いつもボロボロねこいつ……

そんなことを考えている時不意打ちで鈴木が私の髪に手をポンと置いた。



「後は任せておけ」


「触んじゃないわよ変態!100ぺん死ね!!」


「怖ッ!?そこまで切れる!?」



鈴木の手をパシっとはじいた。

ほんと最悪!あとで鈴木にセクハラされたっておにいに訴えて……


瞬間、体のMPが回復していることに気づく。

――全快してる。


鈴木を見ると私に向かってサムズアップしてくる。



「MP譲渡しといたから、あとは3人とも後ろに下がってゆっくりしてて――こいつは俺が倒しとくから」


「なめてんじゃないわよッ!下等な人間風情がッ!!」



角女が鎖を引きちぎり、私たちに向かってくる。

私たち3人が言われた通り下がり、鈴木が前に出た。

鈴木の手に刀のツールズが現れ、両手で持ってスイングする。

――飛翔した斬撃は角女に飛んでいく。


角女はあっさりと体を捻ってその斬撃を避け、鈴木との距離をどんどんと詰めてくる。

――瞬きした次にはもう鈴木の目の前まで迫っていた。



「終わりだ人間ッ!!」


「――あぁ、お前のな?」



瞬間、さっき通り過ぎて行った斬撃が瞬間移動し、角女の手と足が切断する。

切られたところから血は出ていない、私はその現象にゾッとしたが詩織ちゃんと翠ちゃんは見たことあるのか、動揺はなかった。


手足を失い、動けなくなった角女はのたうち回り、あがく――だがダルマ状態ではどうすることもできない。

むしろその状態でまだ動けていることがおかしかった。



「あ゛ぁぁぁぁぁ!!」


「――叫んでるところ悪いけど、他に仲間いる?あんたで打ち止めだとうれしいんだけど?」



鈴木は刀のツールズを角女に向けながら淡々と質問する。

いつもの鈴木とは思えないほどその瞳は冷たく、まるで別人のように感じた……ほんとにあれが鈴木?

でも、口調もあいつそのものだし、気のせい……よね?


その時外からドカンという爆発音が響く、私たちは窓から顔を出して音のした方を確認する。


遠くの砂浜で誰かが戦っているようだ。

あれは……



「おにい!」



おにいと誰かが戦ってる、早く助けに行かないと!



「鈴木!助けに行くぞ!!」


「――司なら大丈夫なんじゃない?俺の親友がそんな簡単にやられるわけ……」


「鈴木君!そんなこと言ってないで行きますよ!!」



詩織ちゃんが鈴木の手を引っ張り、砂浜まで走りだす。

私と翠ちゃんも急いで追いかける。


無事でいてねおにい!!

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