第15話 最初の難関

ついに来てしまった……

学校の課外授業の博物館見学……


博物館前には蓬莱高校一年が全員大集合だ。

――その一角に俺たちが集まってるって感じだな。


メンバーは神宮寺君、風間君、時乃兄妹、そして俺の計5人が集まった。

なんか昨日のこともあって、妹ちゃんの顔まともに見れない……

妹ちゃんも顔合わせずらいのでは……



「なんですか?チラチラと見ないでください気持ち悪い……」



ですよねぇ……


妹ちゃんの暴言も平常運転っぽいので、俺を意識するとかバカなこと考えたけど杞憂だったよ……緊張もどっかにいったみたいだ、ありがとね。



「それより大丈夫か?俺の顔見ると気持ち悪くなるんだろ?――平気か?」


「大丈夫……ではないです。今も視界に入れないようにしているので、近づいてこないでください」



妹ちゃんの左後ろに下がり視界から消えるようにする。

こうすれば話せるよな?



「そう言えば友達とかと回らなくてよかったのか?」


「友達とはこの後合流するのでお構いなく、時間になったらそちらに再び合流するので大丈夫です。あと背後に立たないでください気持ち悪い」


せっかく視界に入らないように配慮したのに!?

これ以上話しかけると妹ちゃんの機嫌をそこねそうというかもう不機嫌そうだが、ひどくならないうちに退散しよう。


妹ちゃんの視界に入らないように、司たち3人が壁になるような位置に移動する。


 

「おっ、鈴木君じゃん!やっほー!」


「今日は……よろしく……」


「よろしくな」



風間君は相変わらず元気がいいな、神宮寺は相変わらず眠そうだ。


活発なスポーツ系イケメンの風間と王子様系の神宮寺、そして髪を上げれば中性的イケメンな司……

この中だと顔面偏差値でどうしても俺が浮くんですが……

くそ、囲まれるなら美少女がよかった……



『俗物だな、守よ』


『いや、思考読むのやめてもらっていいですかねセカンドさん!?』


『うけるぅ』


『いやうけないから!?サードも笑ってんじゃねえ!』


『うるさい』


『あなたが始めたことですが!?』



理不尽な道具たちだよ全くもう……


はい、というわけで新たに会話仲間ができました。

ナンバーシリーズのセカンドさんです。

共有条件満たしたので、俺も使えるようになりました。


セカンドの時間遡行は、MP100消費するので俺はすでに使えませんが、その代わり司や妹ちゃんが時間遡行した時に記憶が引き継げるようになりました。


これでいちいち説明される手間がなくなるわけだが、いいことばかりではない……

それは同時に、妹ちゃんもサードが使えるということだ。



『サード、昨日もあの後散々確認したが、妹ちゃん異世界に飛ばしてないよな?もしくはお願いされるてないよな?』


『してなぃってばぁ、しつこぉい』


『一番重要なところだからな、なら大丈夫か』



それからは何事もなく博物館見学が進んだ。

博物館見学は午前中の予定で、午後は下校の予定となっている。


まあ昼を乗り越えることができれば、だがな……

お昼に差し掛かりそうになった時に、妹ちゃんと合流した。


友達には弁当を兄の物と間違えたから交換してくるという名目で来たらしい。

神具と魔具が見える位置で、それでいて離れている場所に移動する。


そして12時の鐘を告げた時、突如停電が起こった。

司は近くにいた神宮寺を、俺は妹ちゃんをかばう体制で待機する。


停電は一瞬だったが、それが戻ったとき、目の前には異様な光景が広がっていた。

禍々しい角を持ったこの世のものとは思えないあらゆる動物を混ぜたような化物、魔王である。


そしてその隣には神々しくはあるが見ただけで寒気を覚えるような羽を広げる人型の異形、邪神である。



「――おいおい……冗談だろ!?」



どっちか片方だと思っていたが両方顕現してるじゃねぁか!

これか!俺が対処できなかったイレギュラーってやつは!


だが、こちらには風間君が近くにいる。

風間君の手にはゲーム内で見たナイフ型の神具が握られていた。


よし予想通り、契約したなら能力の使い方も目の前の化物たちが見えてるはずだ。

あの異形は俺たち契約した奴らにしか見えてない、なら風間君には見えてるはずだし、目の前の異常何とかするために頼み込めば…



「風間君!目の前のやつに能力使って倒してよ!」


「え、いやなんだけど?」



 ………いやなんだけど?



「えっ、状況見えてる?目の前化物、なんとかしないと俺たち死にますけど!?――あれCGとかじゃないからね!?能力受け取ったばかりで混乱してるのわかるけど協力してくれない!?」


「いや能力あるのは分かってるし、いたって冷静だよ?けどオレでなくてよくない?人がたくさん殺される姿見れるなら、オレにとって素晴らしい出来事だけど?」



いつもの活発な雰囲気はなく、目がこちらを見ていない風間君

くそ!もう既に操られてるじゃねぇか!!

この時点ならまだ交渉できると思ってた俺がバカだったよ



「そういうこと言う口はこの口か?この口なのか!?――おい!操ってるやつも聞いてるんだろ?」


「ふがが」



俺は風間の口を押えながらアイアンクロウを決める。

さすがにあいつの根回しが早すぎた。


――すまない司、失敗かも……


魔王が一番最初にこちらに向かってくる。

邪神はその場を動かず、まだ俺たちを見つけられていないのか、こちらには向かってこない


魔王との距離はまだ離れているので、対処しなきゃ――でもどうやって?

その時、俺の手が不意に軽くなったのを感じた。

自分の手を見るとアイアンクロウしていたはずの風間はいなくなっていて、代わりに司がいた。



「あれ?風間君は!?」


「――あそこ」



司が指さした方を見ると、風間君が宙を舞って、邪神の方に突っ込んでくのを目撃することとなる。



「いやなんで!?」


「僕たちが投げ飛ばしました、反省も後悔もしていない!」


「うん……おもしろそう……だった、から……」



神宮寺と司がサムズアップする。

意外と乗りいいんですね神宮寺君!?


 

「お前ら後で覚えとけよぉぉぉ!!!」



恨み言を言いながら、邪神に向かって風間は特攻していく。

邪神も流石に近づいてくる者に気が付き、自分の羽根を弾丸のように大量に飛ばしてくる。



「こんちきしょうがやったらぁぁぁ!!!」



風間がナイフを4回振るうと、斬撃が振るった回数分発生する。

羽根を全て斬り伏せ、風間は邪神と目と鼻の先くらいの距離になったところで、邪神にナイフを突き立てた。



「あ゛あ゛あ゛!!!!」



けたたましい音とともに、邪神は姿を消した。

風間のナイフには神具の羽根の化石が刺さっており、それもすぐ光となって消えた。


だがお忘れではないだろうか?

彼は宙を舞った状態でいる。

そして目の前にはショーケース、もうどうなるかお分かりですね。


風間は頭からショーケースに突っ込んで倒れ、そのまま風間は声も上げず気絶した。

多分死んではない……はずだ、血は出てないし、大丈夫だろう。


――というか今の誰かに見られてないよな!?


周りを見たが人が一人もおらず奇跡的に目撃者ゼロである。

司がやると毎回目撃者ゼロだよな。


いや、今はそんなことどうでもいい!



「みんな走って逃げるぞ!」


「紬!――マキアも一緒に来て!」


「そうだね!」


「――うん……先生に怒られる前に……すたこら、さっさ……」



俺たち4人は魔王から逃げるようにダッシュで博物館を出ることになった。

 

 

 

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