第4話  予期せぬ会合

 目を覚ますと警備のおじさんのドアップで目が覚めた……


 ――できれば美少女がよかったなあと思ったが、口には出さなかった。


 警備のおじさんが巡回中に倒れてる俺を発見したらしい。

 つまり契約する一部始終は見られてないということだ。


 俺の手には契約したサードが握られている。


「ねぇおじさん、俺の手どんなふうに見える?」


 ――俺は手で握っているサードを警備のおじさんに向けるが首をかしげる。


「君の手がどうかしたのかい?倒れた時に手でも擦りむいた?」

「いやぁ…倒れてたし手でも擦りむいたかなぁ?――と思ったんですけど勘違いでした、すみません――もう大丈夫なので帰りますね」


 ―――俺はそう言って、手の中にあったサードを自分のポケットに入れた。


 そう、サードは見えていない、契約した道具は――道具と契約した契約者にしか見えないのである。


 何でも契約すると次元がずれるため認識されなくなると設定資料にもそんな風に書かれていた――記憶からも認識されなくなるためそこにあった証拠するなくなるとかいうご都合主義な設定のため有難く使わせてもらう。

 ―――まぁこの設定なかったら、シナリオ上で、2人くらい窃盗で捕まるしね、仕方ないよね。


 警備のおじさんと別れ、蓬莱博物館を後にしようとした時、ある人物の姿が目の端に止まる……サードがもともと置かれているショーケースの前にたたずむ黒髪の少年

 ――主人公だ。


 だが様子が変だ――いつも伸ばしていた前髪をワックスか何かであげており、中性的なルックスがあらわとなっている。


 ――ただその瞳はどこか濁っているような気がした、まるで何もかもに絶望しているような……そんな目をしている。


 時乃が俺の存在に気づき近づいてきた。


「やぁ、同じクラスの鈴木君だよね?こんなところで会うなんて奇遇だね」


 声音は優しいが目が一切笑ってなかった。怖かった、親友の姿であるがためにより不気味に感じた。

――な、なんか答えないと!


「そう…だね…、お…俺…は…て…展示…を…みに…きたん…だ…」


 やばいコミュ障がたたって、声がどもる、コミュ障特有の同級生にはしゃべれなくなる現象が再び。


 ――やばい……大学の時と同じ二の鉄ふみそう。


 親友と同じ姿だから話せるだろうと思ったけど、雰囲気も違うせいか妙に緊張でどもる。


「奇遇だね、僕も展示見に来たんだけど、なにかおすすめあるかい?」


 ――俺がどもっているのも全く気にしないで時乃は質問してくる。


 くそコミュ力たっけーなおい…友達でもない奴にそこまで踏み込んで質問できるかよ普通?――陽キャか…これが陽キャのなのか?そこの所は親友と変わらねぇな


「えっ…と、そこに…ある…化石…とか…角…とか…おすすめ…だよ?」


 サードの隣にあった羽根の化石や禍々しい角を、指さしながら途切れ途切れで答える――やばいなこの体に思考が引っ張られてる気がする…


 しっかりしろ!


 俺も昔のコミュ障は脱却したはずなんだ!


 取引先との何気ない会話だってできるようになっただろうが――大丈夫お前は精神は30歳だ、いいか30歳だ!


 会話をなんとか続けようと言葉を発しようとした時だった――


「――他にもある?例えばさ……君がポケットの中に入れてる宝玉とかさぁ?」


――その言葉で俺は一気に緊張や恐怖がどこが飛んで行った。

間違いない、こいつは知っている――俺が契約したこと、そしてそれが認識できてるってことは……


「お前…もう契約してるのか?」


「その口ぶりだと、君も契約したんだね、ここにある道具と」


 ショーケースをコンコンと叩きながら、時乃は不敵に笑った。

 ――契約していることは明らかだ…だけどそうすると疑問が出てくる。


 だってこの時点で主人公が行動を起こせるはずないのだ――いくら主人公の契約してる道具の力であったとしても、無理なはずだ。

――なら可能性として何がある?


「ここだと話しづらそうだし、近くの公園で話さない?」


「そう…だな…」


 俺のいぶかしげな視線に気が付いたのか外に出るよう促された。


 ――疑問の解消は後回しにしよう、今は奴についていくしかない。


 俺たちは蓬莱博物館を後にし、公園へと足を進ませる、その道中で作戦会議と行こうか?――そうと決まれば…


『サード、聞こえるか?』

『ばっちり聞こえてるしぃ、状況も把握してるよぉ、でもあのしゃべりかかたぁ、マジ受けたぁ』

『――よし、意思疎通も問題なく出来てるな…じゃねぇよ笑ってんじゃねぇよ!』


 ――そう、サードと一緒に作戦会議だ。


 契約した道具とはテレパスのように口に出さなくても会話が可能になる――確かMPも使わないって設定資料にも載ってたはずだ。


 まぁ中には無口だったり、話しかてほしくない奴もいるみたいだけどな……


 ――そういえばサードとは普通に話せてるな?顔が見えてないからか?


『でぇ?どうするのぉ?バトルぅ?』


『いやしないからな!?好戦的かよ!』


 うちのサードちゃん好戦的な件について…ってラノベできそうだったよ……


 ――いや戦って勝ったとしても、普通に警察にお世話になることになるだろうが!

 ここ異世界じゃねぇんだよ!!


 でも逆に言えば俺が殺されることはないってことでもあるんだけどな。

 ――よっぽど相手の頭がいかれてなければ、だがな…


 あのエンドを迎えた主人公ならやりかねないが……


『戦いはしないけど、話し合いで終わらなそうな雰囲気なんだよなぁ…だからいざとなったらお前の力使って逃げるってことは頭に入れといてくれ』

『おけおけぇ~だけどぉ~ワタシのぉ、頭ってぇどこだろうぅ』

『あげあしとらんでよろしい!』



 さてそんなことを話してるうちに到着したようだ。


 ――ここからが正念場だな…鬼が出るか蛇が出るか……

 

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