第3話 出ました!悪意三種の神器!

 蓬莱博物館――ここ蓬莱市に伝わる伝承や出土品などを展示する博物館で、見学料は大人1000円子供500円、地元にある学生証があれば無料で入ることができる。

 地元の数少ない名所の1つだ。

 だが平日にくるお客は少なく閑古鳥が鳴いている。

 そのせいか所々さびているため、古い洋館のような外装になっている……


 ――というのが表向きというか普通に知られてる蓬莱博物館の情報なんだが、 設定資料だとここに神具しんぐ魔具まぐが一つずつ、そしてナンバーシリーズがあり計三つ置かれている。


 俺の目当てはナンバーシリーズ、これなら本来の力を発揮させることができなくても十分力になる。


 そこの読者諸君!

 お前また意味不明な単語増やすんじゃねえよ。

 説明しやがれ!――という念をひしひしと感じたので説明するぜッ!!


 簡単に言うと神具しんぐ魔具まぐ、ナンバーシリーズは契約すると精神力つまりMPを消費して、超常の力を使う道具のことである。


 ――まぁ簡単に言っちゃえば、超能力者になれる。


 神具しんぐは異世界の神が作りし道具、魔具まぐは異世界の魔王が作り、ナンバーシリーズはこちらの世界で作られた不思議な道具たちのことをさすらしい。


 制作者が違うだけで、MP消費で発動するっていうところは変わらないみたいだ。

 よい子のみんなは分かったかな? 

 以上説明コーナーでした!


 ――と誰に解説するわけでもなく、再確認のため教育番組風に紹介してみた。


 さてそれじゃ契約済ませてさっさと帰りますか……

 俺は博物館の中をぐるっと全体を回る。


 骨やら、壺など歴史順などではなく発掘した時期順のようなので、統一性などほとんどなくショウーケースの中に雑に並べられていた。


 その中に目当ての物を見つける。


「――ていうよりお目当て以外も2つ並んでるし……」


 思わずため息をつきたくなった。

 設定資料集であるのは知ってたけど普通この3つ並べるか?


 ショウケースの中には右から禍々しい角の見た目をした魔具まぐ、羽根の化石の見た目をした神具しんぐ、そして宝玉の形をしたナンバーシリーズ――以上3点セットとなっております。


「いや悪意たっかいな、おい…」


 だってこの三つどれも主人公達を苦しめることになる道具なのだから。

 悪意三種の神器!!ってロゴをつけたくなるね。


 そのうち一つと契約する俺ってある意味悪役かな?

 気にしたら負けだと思ったのでさっさと済ませよう。


 閑古鳥が鳴く人気のなさとは言え、人目が気になるので一応あたりに人がいないことを確認し、俺は〈ナンバーシリーズ〉に手をかざす。


「俺と契約してくれ!!〈サード〉!!!」


 言い終わるタイミングで俺の意識は薄れ、プツリと切れた。



 □□□



 気が付くと白い部屋、その中心に俺は座っている。

 ここまでは計画通りというよりシナリオ通りかな?

 なら次に来るのは


『汝、我を求め、何を成す』


 どこからともなく中性的な声のアナウンスが響き渡る……


 サードは質問の答えに満足いけば誰とでも契約してくれるという何ともチョロ…初心者向きなやつなのである。


 えっと、確かシナリオで契約者だったあの子の回答は確か……


「誰も俺を知らない世界に行きたい」


 はっはっは!完璧!これで契約もかん――


『それは汝の答えではなかろう』


 ――うんダメだったぽい、人の回答丸パクリしたのがだめだったかぁ……


 いやどうすんだよッ!!この後何も考えてないだけどぉ!?


 どうしよう、どうしよう、どうしよう……


 そんな返答されるなんて聞いてないよぉぉぉ!

 と、とりあえず答えなくちゃ!


「えっとじゃあ世界平和?」

『汝の力では無理だな』

「じゃあ世界征服!」

『なお無理であろう』

「彼女が欲しい」

『――我に求めることか?それは?』

「ぐぬぬぬ…」


 思いつかん、というか俺じゃ無理ってさらっとディスられたんだけど……辛口か?


 ――サードちゃん以外と辛らつなのね。


『汝、我を求め、何を成す、答えが出ぬようならば、汝との契約は無しだ』


 まずいまずいまずい!?

 サードが満足のいく回答しないとほんとに無駄骨になっちまう!


 何かないのか何かないのか何かないのかッ!?

 この世界で俺が成したいこと!!

 アルケミストツールズの世界で俺が一番やりたいことは!!


 ――とある少女の姿が頭がよぎった……

 金髪をたなびかせる俺のゲームでの推しの…あの少女の姿が……


 そうだ――助けるならあの子もだよな?

 どうせ願うなら……


「――に……い――――」

『よく聞き取れんぞ』

「俺の推しに会いに行きたいっつったんだよッ!!!」


 あぁもうこの際やけくそだ!

 結局ゴリ押しするしかねぇ!!


 たとえこれで契約できなくても最後に爪痕くらいは残してやるよ!

 次誰かと契約したくなくなるくらい、哀れな人間って思われるように!!


 あの子にこのサードと次に契約させないためにも!

 俺がピエロになってやる!!


「俺の会いたい人は異世界にいんだよ!!――だからお前と契約したいっつったっんだ!文句あっかッ!?――会ってやらなきゃいけないことがあんだよッ!!」

『…………』


 これにはさすがのサードも沈黙した。

 ――いや分かってたけど…分かってたけどさぁ……


 無視はやめよ!?無視はさぁッ!?


 心に、心に来るからさッ!?


 やっぱごり押しじゃダメか……

 俺自身何言ってるか分かってねぇし……


 でも何か話さなきゃ、そう思って口をもう一度開こうとした時だった。


『あはははははは!!!!!』


 ――沈黙したサードからの返答はなんと大爆笑でした。

 何を言ってるのかわからねぇと思うが、俺も分からん。


 まじでどういうこと?


『ワタシの使用用途がぁ会いに行きたいからってぇ、あはははは!』


 いやあのサードさん?キャラ崩れてません?

 我とか言ってたのワタシになってるし、さっきの威厳どこ置いてきたの?


『何千年とぉ人間のぉ契約者とぉ契約してきたけどぉ君みたいなのはぁ初めてだよぉ!面白いねきみぃ?いいよぉ、ワタシとぉ契約させてぇあげるぅ』


 ――俺はサードと繋がったような言葉に表せない不思議な感覚を得た。

 それと同時に意識が薄れる……


 まぶたを開けていられず、そのまま意識が遠のいていく…………

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