第37話 別荘内での……

別荘の中は思ったより広く、これが本家の屋敷と言ってもだれも疑わないであろう広さだ。


豪華な装飾が施されており、シャンデリアや高そうな美術品も置いてある。



「ふはは!!よく来たな!!!――ようこそ、妹の友人たちよ!!!」



螺旋階段の上から声がしてそちらを見上げると茨木さんと同じ金髪、勝気な性格がにじみ出ている顔だち、一目見ただけでも誰の兄だが分かるくらい似ている威風堂々のたたずまい、茨木さんの兄ですね分かります。


そう言えば、こいつもいるんだよな……

俺と司はそろって同じことを思っただろう。


今すぐ逃げ出したい、と……


彼の名は茨木歩、魔具グレイプニルの元ホルダーで茨木財閥の長男、しかも蓬莱学園の3年で生徒会長――そして……


茨木兄は俺と司を見ると舌なめずりした。



「うほ、いい男――片方はメカクレ男子、もう一方は地味系男子か……悪くないぞ!!!――今夜眠れない熱い夜を私と過ごさないか?」



俺と司は同時に尻を抑えた。

うわぁと佐藤さん以外の女性陣はドン引きしてる。

いや、妹ちゃんだけ殺意こもった視線向けてるな?



そう、あの人、男色なんだよ!!


ゲーム内でもこの人様々なセクハラを主人公にしまくるやつだからな?

主人公もようやく気付いたときには、かなり距離をとってた覚えがある。


顔がいいのなら、俺は必然的に外れて安全――と思ったが……

俺でも守備範囲ないかよ!?

やばいな茨木兄……


――おい、ちょっと待て司!?今どっからツールズ取り出したんだよ!?

神具グングニルを構えるな!!


死んじゃう!あの人死んじゃうから!?

気持ちはわかるが落ち着け!!


司以外のホルダーが全力で止めようとなだめる。

一瞬で司切れさせるの、もはや才能だろ、あの人……

司を止めている最中に螺旋階段の上からもう1人顔をのぞかせる。



「ダメっすよ坊ちゃん?妹様の友人に手出したら怒られるっすよ?」


「むむっ!それは困るな、仕方ない!!我慢しようではないか!!!」



茨木兄と飯塚さんはそれだけ言うと2階左に去っていった。

緑髪に小麦色の肌、身長やその他もろもろ全てがでかい茨木兄の専属メイドさん――神具ミュルニルの元ホルダー、飯塚芽衣、やはり茨木兄がいるってことはいるよな……


そういえばゲーム内ホルダー全員集合じゃね?


――いや、風間君と神宮寺君忘れてた……

今頃部活の合宿かな?


とりあえずこっちに来なくて正解だとは思うよ、ほんとに……

司も大分落ち着いたし、柴田さんにそろそろ質問しなきゃないけないことがある。



「そう言えば、荷物はどうするんだ?俺スマホ以外持ってきてないんだけど?着替えとか――」


「ご安心ください、この別宅に一通りの着替えなどは用意しておりますので、夏休みの宿題なども自宅からお部屋に運び込んでおります、です――もし、入り用の物がございましたら、僕か先ほどの飯塚に申し付けください、です。現在この別宅には私と飯塚しか従者がおりませんのでご容赦ください、です。」


「あの、帰るって選択肢は――」


「――次にお部屋の紹介なのですが……」



無視かよ!

まぁ、帰す気はないってことね?

俺にはサードがあるからいつでも戻れるし。

不自由があるわけでもないから、いいけどさ?


――ということはあの謎執事さんいないのか……

あの人一体何者だったんだろう。

歴戦の猛者感あったな、セバスチャンって呼びたい感じの人だった。

もう会わないことを切に願うよ……



「部屋は2階と1階がありまして、それぞれの部屋にナンバープレートに数字が描かれています、です。2階右奥は女性の寝室になっていまして、201号室がお嬢様のお部屋――202号室が日野様と203号室が氷上様、204号室が紬様、205号室が佐藤様、206号室が僕と飯塚の部屋となっております、です。――1階は右奥から101号室が坊ちゃまのお部屋、102号室が鈴木様、103号室が司様となっております、です。――2階左は食堂で、1階右は談話室と大浴場となっていますのでご自由にお使いください、です。皆様、お嬢様が飽きられるまでごゆるりとなさってください、です」



その説明をした後、各々に鍵が渡され、いったん解散した。

102号室は――っと俺は102と書かれた部屋を見つけ、扉を開ける。


部屋の中を確認するとキングサイズのベット、クローゼットは俺の部屋にあるクローゼットの何倍もある。


クローゼットの中には様々な着替えが入っていた。

その中には水着なんかもあり、全て俺のサイズピッタリの物ばかりだ。

どうして知っているのか深くは考えないことにした。


備え付けの机には運び込まれた勉強道具と宿題が置かれている。

引き出しの中には、スマホの充電器もあり、ほんとに至れり尽くせりだな。

――大体こんな感じだった。


確認が済んだ時、ピロンっとスマホから通知音が鳴り、メッセージを確認する。

【水着に着替えて裏手の海に集合ですわ!】と登録した覚えがない連絡先からメッセージが来たことに恐怖を覚える。


怖いわ!俺知らない連絡先のやつはブロックしてるはずなんだが!?


茨木財閥の力ほんと半端ないと思った。


一応司にスマホのメッセージでどうするか聞くが、もう抵抗する気も失せてるのか、あきらめたように――行くしかない……と元気がなさそうにしているしわしわな猫のスタンプが送られてくる。


俺も着替えて向かうか……

仕方なく憂鬱な気分で着替えを始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る