第19話 宣戦布告の後



「ふ~、疲れた……カンペさんきゅな、司――嚙まずに言えて本当よかったよ」


「お疲れ――守」



場所はファミレスに戻り、男子4人はまだファミレスにいる。

風間君と神宮寺君は、俺たち二人の飲み物を代わりにとって来てくれている。


なので今は司とツールズの話を周りを気にすることなく話せる。



「それにしてもこの計画実行に移すまで時間がかかったな……2日前から話をしてたのに――」


「――僕にとってはもっと長く感じたけどね?」



そう、話は2日前にさかのぼる。


俺たちは家に帰る際、そもそもどうしてツールズがこちらに流れてきたのかの経緯を裏事情まで司に全て話していた。


そして俺は推しを助けたいと司に協力を求めていた。

――だが拒否され、一応案自体は出してもらっていたが、司はその作戦時代に協力する気はさらさらなかった。


そして出された案にはいくつか俺一人ではできない事が多すぎた。


まずナンバーシリーズのホルダーを二人用意する。

時乃兄妹は当時協力的ではないため、俺1人しかいない。


他のナンバーシリーズの行方は設定資料にも載っていなかったため、新たにホルダーを見繕うこともできない。


次に魔王と神のどちらかの討伐がされること、これが成されないことには、そもそも先に進めなかった。


――神宮寺君を見捨てて先に進む選択肢は俺には最初からなかった。

だけどまさか2体同時狩猟になるとは思わなかったよ……


モ・ハンかよ!


――だが苦労したかいあって、この計画が実行に移せるようになった。


それもこれも司と妹ちゃんの協力あってこそだ。

本当に助かったありがとう、今度何かお返しでも考えておくかな?

 


「それよりつかさっち大丈夫か?――他のツールズの影響を受けにくくなるナンバーシリーズを共有しているとはいえ、その神具から影響とかないか?――殺人衝動とか?」


「特に今のところ問題ないよ。共有でもナンバーシリーズは影響を受けにくいってのが分かったね」



ナンバーシリーズは出自が異なるため、神具と魔具の力がホルダーに効きにくい。

だからこそナンバーシリーズのホルダー、または共有した者は、異なる世界を視聴できるツールズでの見聞きができなくなり、異世界側に存在を知られることなく行動できる。


シナリオで主人公の存在が最後まで異世界に知られず行動できたのって、ナンバーシリーズのそういった力があってこそだな。


ちなみに司の指示で、魔王を倒したときにセカンドとサードに頼んで、一瞬だけ異世界にも見えるようにしてもらった。


これで話を聞く根拠には十分だろ、と司は言っていた。

 

その後、通信を繋げて第三陣営として宣戦布告する。

――というのが司の考えた作戦だ。

うまくいってほんとよかった。



「そう言えば、オリアナとカリナって子はどうして継承権なかったの?」


「あぁ、それは――2人が神族と魔族のハーフだからだよ。王族は神族なら神族と魔族なら魔族と結婚するんだけど、王族の中で神族の女性と魔族の男性が恋に落ちた――それがオリアナとカリナの両親なんだ」


「――ふ~ん、魔族と神族の交際はタブーだったわけだ。その間に子供が生まれて、殺すわけにもいかず生かすかわりに継承権がない――こんな感じなわけね?」



ウダルとエレンが守ってはいてくれてるんだけど、それだけでは足りなく王族だが下に見られることが多かった。

アランとイデアはオリアナとカリナを隠れていじめてたようだがな……

――ほんとあいつらはどうしようもない奴らだよ。



「お持たせ、はい!――司と鈴木の分!」


「おぉ、ありが――てなんじゃこりゃッ!?」



風間たちの持ってくれた二人分のドリンクだが――なんか色が毒々しい。


絵を描くための筆を洗うバケツの中身を思い出した。

今でもあれってあるのかな?


――おじさん最近の子たちのことよくわからないや……

いやそうじゃなくてだな!?



「色々混ぜたスペシャルドリンクだ!ドリンクバー全種類まぜてみました」


「イエーイ……」


「小学生かお前ら!?」



風間君と神宮寺君くんが悪ガキのような笑顔でサムズアップする。

優しいなと思ってた、俺の純粋な気持ちを返しやがれ!


司はスッとドリンクを俺の前に差し出す。



「守……僕を助けると思って飲んでくれるよね?」


「おま、このやろう!助けるって言葉使えば俺がやると思ってやがるな!!――その通りだよ!いいだろう!!やったらぁ!?」



コップを2つ手に取り、2つとも一気飲みする。





□□□


 



「あぁ…気持ち悪い」



家に帰ってうがいしても、あの味が取れた気がしない。

帰るまでの記憶が飛んでる気がする……


――やばいな、ドリンクバー全種の味ってあんななのか……

個性と個性がぶつかりすぎて互いの個性打ち消しあってた。


これも高校生のノリというのを軽んじた罰があたったな。

――あれは人類が飲むには早すぎた味だった。


あたりはもう暗くなり、夕飯もとらず、胃の気持ち悪さと格闘しながらベットで横になってるところにスマホから通知音が流れる。


スマホの画面を見ると妹ちゃんからのメッセージのようだ。



「えぇ~と、カリナさんとの連絡取れた。明日午後からウダルとエレンの推薦者に会うから午後は開けときなさい……か――会うのはいいが、味方になってくれるとは限らないしな――いくらシナリオでのヒロイン二人とはいえな……」



ウダルの推薦者の名前は、日野詩織――魔具フェニックスのホルダーでMPを消費して、死んでも生き返るまさに不死鳥の能力――死んだ分だけ身体強化があがるといった力もある。


6月3日の午後以降にこの町に訪れ、主人公と同じクラスに転校してくる赤髪ショートのボーイッシュ系美少女――そしてアルケミストツールズのメインヒロイン

 

そしてエレンの推薦者は、氷上翠――神具アイギスのホルダーで、10メートルが限界の結界を張ることができる。

結界内の人数と攻撃された力の強弱で、MP消費が変わり、攻撃された力を跳ね返すこともできる。


日野さんと同じタイミングで転校してきて、風間君と同じクラスに転校してくる。

青髪ロングのクールな美少女、同じくシナリオ上のヒロインだ。


二人とも性格はいいから頼めば聞いてくれるがもしれないが――最後にもめそうなんだよな……


みんな自分の願いをかなえるため、参加している。

ヒロイン達も例外ではない、それくらい彼女たちは叶えたい願いがあるのだろう。


その願いを放棄するとしたらよっぽどの事がない限り無理だ。

主人公と恋に落ちる、そんなような衝撃的なことがない限り。



「とりあえず俺は参加するから司も呼んどいてっと、送信」



わかったという不機嫌そうな猫のスタンプが送られてきた。

メッセージを確認して、スマホを閉じようとしたとき、新たに通知音がなった。


内容はこうだった。


【兄者、明日買い物に一緒に行ってほしいでござる】

――と中学生の実の妹、鈴木結からの買い物のお誘いだった。


俺はそれに【もちろんだ】と返信した。

 

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