第11話 友達として…
僕と妹は警察署から自宅へ帰る際も一言もしゃべらなかった。
――妹は泣きつかれ、目の下が赤くはれている。
博物館で妹は血だらけで発見されたらしい。
――もちろん妹自身の血ではなく、爆発のような形で肉塊となった守の血だった。
当然妹が疑われていたが、爆発物などは検出されず、殺人方法などが特定されなかったため、妹は被害者として扱われた。
――わかるわけないよ、だって異世界の技術だ、現代科学じゃ分かりっこない。
僕たちは軽い事情聴取だけされて、家に帰ってきた。
友人の死はさすがにこたえる。
俺も何度もループしてる時にあいつを殺しているが――
その時はゲームの雑魚キャラで魔法を試し打ちする感覚だった。
だが中身が守だと分かった以上さすがに殺せる自信はなかった。
だからこそやり直したい、そう思って力を使おうとするが、何故かできない。
セカンドに話しかけても、応答なし。
――サードに関しては……
『お前のせいだ…お前のせいだ…お前のせいだ…』
壊れた人形のように同じ言葉を繰り返している。
――話しかけても、この言葉しか返してくれない。
繰り返し聞いているせいで、もう環境音として聞き流している。
家に入ると、妹は走って自分の部屋に向かい、手に何かを持って戻ってきた。
妹が手に持っているのは、ボイスレコーダーのようだ。
「おにい…これ…おにいの友達から…渡してって…」
急いで妹からボイスレコーダーを受け取り、再生する。
[よう司、この音声聞いてるってことは妹ちゃんから、受け取ることができたんだな?――それか妹ちゃんが聞いてるかのどっちかだと思うが、まぁそんなことはどうでもいい]
ボイスレコーダーの中には今はもう死んでいる守の声だった
[妹ちゃんには先に俺たちが転生者だってことは話して、この録音を渡すつもりだ。前世の記憶があるが、今まで暮らしてきた記憶もある、そういう話をしたからその前提で話を聞いてくれ]
妹の方に視線を向けるとコクリとうなずいた。
なるほど、前世の記憶として話を進めたんだな。
――なら僕もそれに合わせて話せ、そういうことだな。
[まず、司、今お前セカンドの能力使えないだろ?――それは妹ちゃんに俺から頼んで止めてもらってるはずだ、セカンドの契約者はお前じゃなく妹ちゃんだ。――だから使えないようにしてもらう。契約者が本当にお前だったとしても、契約の共有する方法を妹ちゃんに教えて、お前が戻るのを何が何でも阻止するようにお願いすることにした――]
ボイスレコーダーを一端止めて妹を見た。
「契約者は私だった……だからおにいを戻さないために……協力した」
「なんでッ!!」
「だって!そうしないと、おにいが大変な目に合うんでしょ!――あの人言ってた!司は苦しんでる、だから俺が代わりをするよって!!――代わりっておにいが死ぬことだったんでしょ!私をあの化物からかばって死ぬなんて……私そんなの絶対にいやだから!!」
妹は部屋に走っていってしまう。
構わずボイスレコーダーを再生する。
[――あまり妹ちゃんを責めるなよ?司のためを思ってやってる本当は優しい子なはずなんだからさ――]
アドバイスが遅いよ守……
――代わりってなんだよ、博物館で何があったっていうのさ。
僕がどうなるはずだったんだよ、教えてくれよ守……
―――もうこの言葉も届かない
[さて、司?もうゲーム感覚ではいられないだろ?――コンテニューを封じられたのなら、1度きりの命を生きるしかない。お前の周りにいる人達は考え、悩みながら生きてる―――ゲームキャラじゃない。――少なくともお前のために嫌われると分かっててもお前のために動いてくれている妹ちゃんがゲームキャラだって思うのか?大切な家族が側にいることを忘れるな。――いいか?見知らぬ誰かを助けろなんて、もう言わないし俺に言う資格もない、だけど家族や友人だけは絶対に助けろ、助けなかった事を後悔しても遅いんだからな]
もう…後悔してるよ…
目からぽろぽろと涙がこぼれてくる。
[最後に、もし俺が死んだときはこの後の録音も聞け――死んでないときはこのボイスレコーダーの音声を削除しろ]
しばらく再生し続けるとため息が聞こえてきた
[これ聞いてるってことは俺は死んだんだな、最初に言っとくぞ?俺を助けに戻ろうなんてバカな真似だけはするなよ?――少なくとも神と魔王はこちらにこれないようにしてから死んでるはずだからな、その前提で話すぞ?お前はせっかく手に入れた平穏な生活を無駄にするのか?――道具の回収とかあるかもしれないが、それでも俺だけの命で神や魔王を相手どらなくて済むんだぞ?――この世界の俺には、地獄で懺悔しながら謝ることにするよ。だから犠牲を無駄にするな、俺が命かけてようやく助けたのに……司の言葉をほんとにすることができたのに――それを……無駄にするな。こっちの世界でくらい幸せになれバカ……]
録音音声から鼻をすする音やぽたぽたと何かが滴る音が聞こえた。
きっと涙が零れ落ちた音だろう。
[じゃあな親友……]
録音データはこれで終わってる、確かにこれで俺も無理にシナリオに関わらなくても済む。
――関わるとしても、お前が託してくれたサードがある。
シナリオも順調に進み、身内だけを助けて、彼女なんかもできたりして、元の世界よりかは幸せな生活が送れるんだろう。
だけど……
「死んで助けられても嬉しくもなんともないんだよッ!!」
足から力が抜け床に膝が付く。
あぁそうだったよ!守はいつもそうだったッ!!
人を助けたいと言って後先考えずに突っ込んでいく。
あいつが怒るときはいつも誰かのため!
――自分が一番助けてほしいくせに他の人を先に優先する!
人が助かるためなら自分の命すら捨てる奴――
それが鈴木守という男だったのを忘れていた!
あの頃からちっとも変わらない!
子供の頃からずっとそうだったッ!!
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