第26話 いじめ

「ありがとうございました!またのご来店をお待ちしています!」


 転校生が来て、3日が過ぎた6月8日の放課後

 ――俺はコンビニでアルバイトを始めた。


 こっちの世界の俺の金を使いすぎてしまった分とこれから使う分を稼ぐために働いている。

 

前の世界でのバイト経験もあり、働き方は考えなくても動けるくらいにはてきぱき動けてる。



「きみ手際いいね!今度時給アップするよ!――その棚卸終わったら今日はもう上がっていいよ!」


「ありがとうございます!店長!」


 

順調にバイト先にも馴染めてる。

前の世界でのバイトの店長はひどかったが今の店長さんはいい人そうでよかった。


――いやバイトしてないで、ナナシの情報探さなくていいのか――と思うだろうが、今やれることないんだよな……


とある計画はあるのだが、そのための準備に時間がかかる。


オリアナ様たちの世界でもアランとイデアが捕まったせいで色々バタバタしてるみたいだし――勝者が複数人になったことで、王位継承争いの決着がつかず、二回戦があるかもしれないといわれたが――


まだまだ先のことになりそうだ……


司も佐藤さんと一緒に帰るからと最近放課後も会えていない――神宮寺君も風間君も部活らしいし、帰宅部の俺は放課後の時間がものすごく空いた。


だからその間、バイトでもしようということになったのだ。

焦ってもしょうがないってことだな……


――そんなことを言ってる間にお客様が来たようだ。



「いらっしゃいませ!」



あいさつだけして、棚の入れ替え作業を続ける。

どうやら蓬莱学園の学生集団のようだ。


女子3人組がキャッキャッと騒いでいるようだ。

まぁ見せに迷惑かけるほどの騒音じゃないし、注意はしなくていいかな?



「あの子たちほんとむかつく!転校してきて子達とか、あの時乃とかいう女も男子にちょっと人気だからって調子に乗って!――あの子たちのせいで振られたじゃない!!」


「まぁまぁ落ち着いて……」


「そうだよ!落ち着きなって」



――耳に入ってきた言葉で俺は手を止めた。


あいつらの話題か……しかも陽キャのボス的女子もあいつらに怒り心頭みたいだ――


この流れちょっとやばそうだな……


――何もなければそれでいいが……俺はこの流れを前の世界で見たことがある。


 片手を棚卸ししながら片手でスマホの録音ソフトを起動させ、胸ポケットに突っ込む。




「しかもあいつらの物を隠したり破いたりしてるのに、あいつらいつもと同じ態度してるのよ!まじむかつく!!――そうだ、あいつら直接痛い目合わせてあげればちょっとは反省するんじゃない?」


「さ、さすがにそれはまずいんじゃ……」


「そうだよ……」


「大丈夫よ!実行するのは私が呼んだ男たちだし、ばれたとしても茨木って子になすりつければいいのよ!――あの子がしたって私たちが口裏合わせればいいだけなんだから!あなたたちは茨木さんの取り巻きの注意をひいときなさい、明日の放課後決行するわよ」



 女子高生集団は何も買わず、そこから出て行ってしまう。

俺は胸ポケットの録音ソフトを終了させズボンのポッケに入れる。


――やはりいじめか、くだらない……手を強く握りしめる。


怒っているかって?――あぁ怒っているさ、気づかなかった俺自身にな!


友人がその被害にあっていて、気がつかなかった!

――俺は大馬鹿野郎だよ!!


俺は棚卸をさっさと片付け、服装をバイトの服から制服へ着替える。



「店長!定時になったので帰ります!」


「気を付けてね」



 ――コンビニから走って自宅に向かいながら電話をかける。



「司?ちょっと頼みあんだけど――」




□□□



「わたくしを助けて下さった方をお呼びするとのことできてみましたが――どうしてこんな人気のないところなのでしょう?――もしかして恥ずかしがり屋のかたなのかしら?」



わたくしはとある女子生徒があのお方を知っているとのことで、呼び出すため、学校の裏手にある体育倉庫に向かっているのですが……

――段々と人気がなくなって不気味ですわね……


体育倉庫前に着くとそこには女子3人組がいましたわ。


確か――同じクラスの……日野さん――だったかしら?

その方といつもよくいるお二人も一緒にいますわ



「あなた方――どうしてこの場所にいますの?」


「えっ!茨木さんが呼んだんじゃないの!?」


日野さんは心底驚いているように感じますわ……

――どういうことかしら?わたくしは一度も彼女らを読んだ覚えはないのですが……



「こういうことですよ、お嬢様ッ!!」



 ――わたくしは後ろから羽交い締めにされてしまいましたわ!

 後ろを見ると羽交い絞めをしているのは、わたくしに情報を与えてくださった女子生徒でしたわ。


 その背後から男子3人が出てきましたわ



「姐さん!この上玉――ほんとにやっちまっていいんですかい?」


「この子はダメよ?あっちの3人なら好きにしなさい、後悔するぐらいにね!!」



 男たちは下卑た視線で日野さんたちを見て、近づいていきますわ――



「や、やだ……来ないで!」


「へっへっ!こんな誰もいないところじゃ叫んでも無駄だぜ!」



 日野さんたちもジリジリと後ろに下がりますが、逃げ場がなく、壁に背中がついてしまっていますわ――背中が付いた瞬間、日野さんたちは恐怖で動かなくなってしまいますわ。


――男たちに囲まれれば、女性は恐怖で動けなくなりますわ……無理もありません、日野さんなんて顔が引きつっていますわ……



「おやめなさい!こんな事してタダで済むと思っていますの!?」


「あなたにはこれから起こることの主犯になってもらうわ、もちろん私たちは口裏揃えてあなたがやったといいます!あなたも共犯よ!!」



――はめられたしまいましたわ……

わたくしにはもう見てることしかできませんの!


わたくしは何とか拘束を解こうとしますが、びくともしません!


あぁ……あの方なら――あの方だったら、こんな状況でも助けに来てくださるはず!


――男子が日野さんたちにゆっくりと手を伸ばす


もうダメなんですの!


――誰か……誰でもいいから……


日野さんたちを……助けてあげてください!!



「俺の友達に――何してんだッ!!!」



物陰から走ってタックルして来たその人物によって――男たちは吹っ飛ばされる。


その人物は見覚えはある……たしか同じクラスの――誰でしたっけ?


現れたのはモブのような、平均的な顔だちをした茶髪の印象が薄い男子でしたわ……

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