第17話 開始の合図
「それでは、今日はお疲れ様でした!」
「いやちょっと待って、停電から目覚めたらファミレスにいるってどういう状況!?」
俺たちはあの後、寝ている神宮寺と風間を回収して、司と一緒に担いで近くのファミレスに来た。
店員には驚かれたが、その後営業スマイルで応対してくれた。
接客業って大変だよな、わかるよ。
いやあ、それにしても高校生のノリって偉大だね。
成人したら、こんな事できなくなるというか周りの目を気にしすぎてこんなバカなことできないしな。
若いっていいね!
――若いってだけで大目に見てもらえるとこあるよね。
ただし店に迷惑かけることは絶対しないように!
お兄さんとのお約束だぞ!
何?もう迷惑かけてるって?
細かいこと気にすんな!
席には司と俺が座り、反対側には、風間、神宮寺の2人を座らせた。
ちなみに妹ちゃんは友達に連れられ、お帰りになられました。
つまりこの場は男子会とありなりました。
「こんなとこで暴れないでよ、店の人に迷惑だよ?」
「理不尽じゃんか……」
「まぁまぁ、とりあえず何か食べようよ?風間君」
ちなみに風間君は神具ソハヤと契約していた時の記憶がない、なぜかって?
――だってあれ操られた状態だっただけだ。
サイコパス発言も操ってたやつの性格が反映された結果だし、さわやかスポーツイケメンがサイコパスに――というカオスな絵面になった。
操った奴は後で痛い目に合わせる。
お前のせいで計画が台無しになったからな!
普通の風間君だったら頼みを聞いてくれたかもしれないのに、あぁムカついてきた――絶対許さない覚えてろよ。
風間君は今は契約者じゃなくただの一般人になった。
気絶すれば契約を解除させる方法が使えるので解除させてもらった。
今は風間君の契約を司が引き継いだ。
なので神具ソハヤは今は司が契約者である。
今回の件でMPを大量に使いすぎたな……この後のシナリオまで持つかな……
そんなこと思っていた時、頭に道具と会話する時のノイズが走る。
――だが、いつものではないことを俺達だけは、よく知っている。
『『異界の者らよ、我ら汝らにとっての異界の住人なり、汝らが持つ不思議な道具、ツールズを通じて話しておる、汝らが持つツールズは異界の物なのだ、我らはそれの回収及びこちらへの返還を頼みたい、無論ただとは言わぬ、ツールズを多く集めた一人に何でも願いをかなえることができる権利をやろう、回収方法や返還方法は追って個人ごとに連絡する、ツールズと契約したホルダー諸君、健闘を祈るぞ』』
何重の声を合わせたかのような声が途端に鳴りやむ。
ここにきて初めて、この道具と契約者の通称出たな。
神具とか魔具とか、割り当てられた名前で読んでたから忘れてたよ。
この放送が流れたらスタートの合図だ。
仁義なき、ツールズの奪い合いが始まるわけだが……
――その前に……
「まずは俺たちの参加表明といきますか」
小声でそう呟き、俺はニヤリと笑った。
□□□
神と悪魔が住まう、異界の地、そこに顔を並べる身目麗しい6人の男女がいた。
きらびやかな大広間にて机を囲み、仲睦まじく会話をする。
――わけもなく、お互いにピリピリとした緊張感を持ちながら、目の前の大きな水晶を見ていた。
そこにはさきほどまで司たちの様子が映し出されていた。
神と魔王が映し出された瞬間、何かに阻まれるようにノイズだらけになって見えなくなる。
「どういうことですかアラン兄さん!なぜ初代神王と初代魔王があちらの世界に顕現したのですか!!」
メガネの美男子がアランという筋骨隆々の大男にを詰め寄り、問い詰める。
アランは心底めんどくさそうに顔をゆがませる。
「なんだ?俺様がやったといいたいのかウダル?――第3王子の分際で第1王子のこのアラン様に立てつこうってのか?あん!?」
「およしなよアラン、疑われるのは当然さ――だってこちらにある王家のツールズを使用しない限り、初代たちを復活なんてマネ、できっこないからさ――あなた方が疑われるのも無理ありませんわ」
派手な衣装を身にまとう女性が扇で口を覆いながら、けらけらと笑う、その女に男装の麗人が歩み寄る。
「それはわたし達も言えることだ、イデアお姉さま」
「あら?たしかに神の子孫のわたくしたち二人なら初代神を、アランやウダルならば初代魔王を復活させられますが――あなたとウダルが復活させたのでわなくて?エレン?」
「どの口がッ!!」
エレンと呼ばれた女性は手を強く握る。
――そう証拠がないのだ。
これではいくら問い詰めたところで何もすることができない。
その時だった、イデアの顔色が悪くなる。
「まさか、そんな……私の神が……」
「おいおい、どうした?顔色悪いぞイデア?」
今度はイデアをあおっているアランもそのすぐ後に顔色が悪くなる。
先ほどまで勝ち誇った笑みを浮かべていたのに、今は絶望の顔といったところだろう……
一体どうしたというのだろう?
「嘘だ……嘘に決まってる……魔王の力が……」
水晶のノイズが晴れる。
そこに映し出されていたのは神と魔王がホルダーたちに倒されている映像だった。
神を倒した少年は気絶し、魔王を倒した少年は友人と喜びあい、肩を組んでいる。
神殺しと勇者のまさに誕生である。
だが今はそんなことはどうでもいい
今は先ほどの発言の方が問題だ。
「やはりアラン兄さんとイデア姉さんが関わってたんじゃないですか!それに神を倒した彼は僕たち4人の推薦者の中にいませんでした!あれは神具、ならイデア姉さんが追加で不正に送り込んだんだろ!」
「うるさいわね!わたくしは知らない――知らないわよ!」
「あ、あの……けんかは……」
「そうですよ、けんかはよくな――」
「半端者は黙ってろよ!オリアナ!!カリナ!!」
金髪と銀髪の小柄な二人の少女はアランに怒鳴られ、恐縮する。
場の空気は最悪、一触即発してもおかしくない状況だ。
――その時だった。
『あぁっあぁ……マイクテストマイクテスト、聞こえてる?――どうも初めまして、さっそくで悪いんだが、一言言わせてくれ……よくも神やら魔王を送りつけやがったな!文句言いにきてやったぞごらぁぁ!!」
魔王を倒した少年の声がこの大広間の6人に、はっきりと聞こえた。
異界の地でここに声など届くはずもない彼の声が…
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