第39話 チートサイコバーサーカー
アマンダさんが、兵士の上半身を破裂させたと、ステラちゃんから報告を受け、携帯電話を使用し、アリエスさんに連絡をする。
「もしもし、アリエスさん?」
『もしもし、アリエスです。予定の時間より早い連絡ですね。』
「予定が変わったんだ。交渉決裂。アリエスさん、全軍を率いて、クレイモラン領を灰にしろ。虫一匹残さず燃やし尽くせ。」
『はっ!イレーナ、サリーを至急そちらへ。ゲート設置後、全軍を率い、我らの王、ナイン様が望む結果にしてみせます。』
「セレナとフレアも至急こちらに。あとは頼んだぞ、アリエス。」
『はっ!』
乱暴に通話を切り、頭を搔く。
やってくれたな、クレイモラン伯爵。いつもなら慎重に事を運ぶが、今回は、圧倒的な暴力で殺し尽くしてやる。
「エマ、ニコル、ステラ、ロジェ、聞こえたな。一旦エタンセルに帰還し、アリエスの指示に従い、この街を灰にしろ。ただし、ソフィアとジュシカの獲物に手を出すな。」
「かしこまりました、ナイン様。王命に従い、アリエスの指揮下に入り、クレイモラン領を灰にいたします。ふふっ。」
名前を呼ばれた4名が傅き、エマさんが代表し、応答する。応答後、ポータブルゲートでエタンセルに帰還。4名とも、ロジェさんの真似をしていた事に、頬が緩んだ。あのカッコいい消え方。俺もやりたい...いやいや、今はどうでもいい。
旅を同行していたメンバーと入れ替わり転移してきた、フレアさん、セレナ、イレーナさん、サリーちゃんが、俺の前に来て傅く。
「時間が勿体ない。楽にしてくれ。至急、支柱型のゲートの設置を頼む。フレアさんとセレナは、俺と一緒に行動。アマンダさんが狼煙をあげると思うから、それを進撃の開始の合図とする。」
支柱を2本の木に括りつけると、木と木の間がゲートになる。本当は、クレイモラン領の中に設置する予定だったんだけど...人間不信になるよ、まったく。
「そんで、私たちは、王様をどこまで運べばいい?」
獰猛な笑みを浮かべながら、セレナが問う。
「今回の大将首である、ホープ・フォン・クレイモラン伯爵のところまで運んで欲しい。」
大剣を何度か振り、首を傾げるセレナ。
いつものアレか...
「身体が軽いのか?」
「あー、そうみたいだ。血が滾って、自信がある奴をぶち殺したい。うん、重りを追加しておくか。」
防具を一切しない、超攻撃型の戦闘スタイルであるセレナは、膨大な魔力を身体に秘めている。身体強化を得意とし、接近戦に持ち込み、圧倒的な力で敵を葬っていく。敵の攻撃は、全て回避をするから防具が要らないチートバーサーカー。
戦闘に関するセレナの紹介をするのであれば、長い時間を要さないといけない。
「城壁を破壊しない程度に力をセーブしてくれ。頼むから。」
「うん?城壁以外は、ぶっ壊していいんだな?」
「我々に被害を出さないのであれば、いくらでも壊して結構。弁償しなくてもいい。最高だろ?」
ニヤッと笑い、重りを追加していく。セレナが装着する重りは、魔道具である。ざっくり説明すると、体内に秘めている魔力を吸い取り、吸い取った分だけ重くなるという代物。他にも効果があるが、省略させてもらう。
「フレアさん、いつも通り頼むよ。」
「ふふっ。任せなさい。ちゃんとエスコートしてあげるから、私に身を預けて。」
フレアさんにお姫様抱っこをされ、空中に風の足場を作りステップするかのように華麗に駆け上がっていく。重力調整をしているおかげで、苦しくない。キメラとの戦いではよく、お姫様抱っこされて移動している。
「どう?私の身体は?」
「とても、心地良いよ。この下の城壁に着地して欲しい。」
「ふふっ。幸せ...私だけの特権ね。」
ニヤニヤしながらも、空気抵抗なく、ふわりと、城壁の上に着地してくれた。ちなみに、セレナは、ジャンプ1回で城壁の上に着地する。チートサイコバーサーカーだな。
「たまには、私に運ばせろよー。フレア、変われよー。」
「ぇ?ごめん、フレアさんがいいんだ、俺は。」
「ふふっ、フラれたわね、セレナ。ざまぁ...」
ここで喧嘩はやめてくれ、っと仲裁に入ろうとしたところで携帯着信がなる。今から戦闘が始まるって言うのに、呑気に電話に出るセレナ。
「あとで、マナーモードのやり方を教えなきゃ。」
「もしもーし、私はセレナだ。これは、珍しい...アマンダ。こっちは、もう戦闘態勢に入っている。いつでも仕掛けられるから狼煙を上げな。うん?あぁ、もちろん。愛する王様の手を叩いたんだろ?こんな街いらないなぁ?そうだろ、アマンダ?サポート頼むぜっ。」
アマンダさんとマブダチだと聞いたことがある。性格似てるからなぁ、ふたりは。腹黒いところとか...
セレナが通話を終え、城門を見た瞬間、3つの爆発が起き、赤い煙が上空に登っている。
「さぁ、始めよう。俺たちの本来の戦い方で。怨敵を駆逐するぞッ!!」
俺は、助走をつけ、城壁の上から飛び降りる。
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